廣瀬智紀×川栄李奈 W主演 舞台「カレフォン」前を向いて! 「私、生きるから!」「大丈夫だよ」

2018年10月、鈴木おさむ作・演出による舞台「カレフォン」。鈴木おさむ書下ろしとなる本作は、現在、講談社とpixiv社によるアプリ漫画サービス“Palcy”でも5月より連載している(鈴木おさむ原作/丹沢ユウ漫画)。切なく泣けるラブファンタジー、廣瀬智紀が藤原駿役、川栄李奈が結城茜役として、W主演で挑む。その他、会社の社長の息子である桐生陸役を戸塚純貴が、茜の同僚・花田裕美役を柳美稀が、そして、嫌みな上司・玉木健一役を山崎樹範が演ずる。

舞台セットはパステルカラー、時間になり、大塚愛の曲が流れる。この物語のヒロイン・結城茜(川栄李奈)のモノローグ、「前を向いて歩かないと!」、彼女は恋人である藤原駿(廣瀬智紀)と悲しい別れがあった、不治の病で亡くなっていたのだった。夢の中でしか会えない彼。気持ちを切り替えて新しい会社に。その電話持って会社を探していたら、オフィスの前で一人の青年とぶつかる。彼女はそこのクレーム課で働くことに。上司は玉木健一(山崎樹範)、先輩は花田裕美(柳美稀)、挨拶をするや否や上司から嫌味を・・・・・・「頑張るのは当たり前」と。


舞台上の時間は過去にさかのぼる。駿は野球の才能があり、甲子園を目指していたが、一歩及ばずで甲子園にいくことは叶わなかった。
そして舞台は再び“現在”に、玉木の新人いびりが始まる・・・・・・「世の中、理不尽!」と高らかに玉木は言う。

舞台の時間軸は行きつ戻りつ、というスタイルで進行する。甲子園の夢に届かなかった駿は高校を出て居酒屋でバイトを始める。その相前後して茜もその居酒屋のバイトとしてやってくる。出会いから接近、様々なエピソード、クリスマスになり、飾り付けをする2人、プレゼント交換、プレゼントといっても大層なものではない。駿は肩もみ券を茜は自分で描いた“ポジ太郎”を渡す(この絵がかわいい!必見!)。そんな折、店長から草野球の試合に出るように頼まれ、久しぶりに野球をする駿、そして茜に自分の気持ちを伝えるが、ささやかだが、最高の幸せの瞬間。ところが、それは駿の病であっけなく終わりを告げる。
茜は泣く、号泣する。泣いても駿は帰ってこないのだ。そんな折、クレーム課に会社の御曹司・桐生陸(戸塚純貴)がやってくるが、なんと初出社の日にぶつかった相手だった。

皆、どこにでもいそうな人物でエピソードもありそうな出来事、例えば嫌味上司に仕事テキトー、ものごとを斜めに見る同僚、『派遣だから』ということで冷遇、ハラスメント、居酒屋でのバイト同士の出会い、仕事がうまくいかない、誰しもがどこかで出会う可能性のあること、共感しつつ、物語に感情移入できる設定が心憎い。時折、舞台後方にツイッターの画面、そこでつぶやかれる言葉もシニカルでクスリと笑える。

そんな“どん詰まり”な茜の携帯電話になんと死別した駿からの電話!そして茜を励まし続ける。そこから茜は少しづつであるが、変わろうと努力を始める。そして周囲もまた・・・・・・・。

どこにでもいそうなヒロイン・茜を川栄李奈がリアリティーを持って演じ、廣瀬智紀の駿は不器用ながらも優しさに溢れており、死んでからはどこか寂しそうな面持ちでありながら、ありったけの愛を茜に捧げる。御曹司の陸はちょっとコミカル、超前向き、戸塚純貴がエネルギッシュに、そしてこれが初舞台という柳美稀はスルメ女・花田裕美をほどよい嫌味さを漂わせて好演。そして!ベテランの山崎樹範は感じの悪い上司・玉木健一だけではなく、高校野球部の顧問に居酒屋の店長に、もうなんでもあり!しかも舞台上で着替えての大熱演!これが超絶におかしく、客席から笑いが頻繁に起こる。そして、時々、映し出されるコミックの絵、これが出演者にどことなく似ており、うまくシンクロ。

泣いて、泣いて、笑って、笑って、最後には胸キュン、そしてちょっと自分を振り返ったり。基本はラブ・ファンタジーであるが、それだけではない。“人生の応援歌”的な要素もあり、元気になれる言葉が随所に。「俺はここにいる」「ありがとう」、そして「私、生きるから!」「大丈夫だよ」、壮大な物語ではないが、この作品には深い思いやりと愛と光が詰まっている。

そして!本作のBlu-ray / DVDが来年2019年2月27日に発売決定!

なお、ゲネプロ前に簡単な会見が執り行われた。登壇したのはキャスト全員と鈴木おさむ。まずはフォトセッションで、電話がKEYなので、電話ポーズで!

廣瀬智紀は「みっちりと稽古してきたので、どれだけ『カレフォン』の世界を届けられるかワクワクとドキドキでいっぱい」とコメント。川栄李奈は「これしか人数がいない(5人)ので、和気藹々しながら稽古をしてきました。そんな空気が伝わればいいかなと」と語る。戸塚純貴は「原作ものなので、ファンの方々にも楽しんでいただける作品になっていると思います。5人だからできることを」とコメントしたが、そこで廣瀬智紀が「いつもの元気がない!」と突っ込み(笑)。柳美稀は「初舞台なので思考回路が停止するぐらいに緊張しています」と挨拶。山崎樹範は今年でこれが5本目の舞台だそうで「温度差があります」とコメントし、そこで川栄李奈から突っ込み、「先輩!」(笑)。鈴木おさむは「女性が観に来て絶対に泣けるラブ・ストーリー、(前日の)リハで女性スタッフが爆泣きしている!」と観客を号泣させること必至!を強調。そしてヒロインの川栄李奈に関して「川栄さんの心の中に“おじさん”が住んでいるということがわかりました(笑)。それを捨てて、恋愛を思いっ切りやっていただけたら大成功するんじゃないかなと」コメント。本人からは「今回の舞台は男性が女性っぽくて、女2人が男っぽいからバランスがいい(笑)」と発言。

そして、このストーリーを考えた発端について鈴木おさむは「携帯もスマホも昔のは捨ててない、ガラケーも捨ててないです。これを物語にできないかな?っていうところが発想です」とコメント。記者から昔の携帯で奥様ともめてないですか?という質問が出たが「ないです、もめてたら物語にしないです」と笑わせた。そして大塚愛の楽曲については「聴いただけで泣いちゃう」と涙腺崩壊の太鼓判。廣瀬智紀は「ラブ・ファンタジーですが、それ以前に人間ドラマでキャラクターがリアルです。感情移入していただいて一歩、前に進めるようになればいいかなと思います」と語る。キャスト同士でご飯も食べに行った様子、終始、和やか、最後に廣瀬智紀が「存分に泣いて!笑って!遊びに来てください!」と締めて会見は終了した。

<あらすじ>
茜は、派遣OLとして働くが、職場では上司に嫌味ばかり 言われたり、うまくいかない。「生きていても楽しくない」 そんなことを思ったある日、クローゼットにしまってあった 古いスマホが、突然鳴り出す。使っていないはずの電話から 聞こえたのは、2年前に病気で亡くなった恋人、駿の声だった。駿を忘れようと必死だった茜の前にスマホとなって現れたのだった。彼のおかげで少しずつ前を向いて生きようとする茜の一生懸命な姿に社長の息子で次期社長の陸から好意を抱かれる。生きる実感のなかった茜と彼女を取り巻く人々が一歩ずつ動き出す・・・・・・。

《特別コメント》 舞台『カレフォン』作・演出 鈴木おさむ

【 概要】
タイトル:舞台「カレフォン」
出演: 廣瀬智紀 川栄李奈 / 戸塚純貴 柳 美稀 山崎樹範
作・演出:鈴木おさむ
音楽:大塚 愛
公演日程・会場:
2018年10月4日(木)~21日(日)
東京・オルタナティブシアター
10月27日(土)13:00/18:00開演・28日(日)12:00/17:00開演
大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
10月31日(水)19:00開演
広島・はつかいち文化ホールさくらぴあ
11月3日(土祝)18:00開演
埼玉・ウェスタ川越 大ホール
11月6日(火)19:00開演
仙台・電力ホール
11月11日(日)18:00開演
北海道・七飯町文化センター パイオニアホール
11月13日(火) 19:00開演
北海道・わくわくホリデーホール(札幌市民ホール)

公式サイト:http://www.krph.jp

取材・文:Hiromi Koh