《インタビュー》舞台「コジコジ」 脚本・演出:なるせゆうせい

さくらももこの傑作漫画「コジコジ」がまさかの舞台化を果たす。脚本・演出は「ギャグマンガ日和」の舞台化でファンをあっと言わせたなるせゆうせいが手がける。舞台化しようと思った経緯や作品について、見どころなどを語っていただいた。

「次に話題になりそうなものはなんだろうなって思ったら、『コジコジ』がひらめいてきた(笑)」

――舞台化の経緯をお願いいたします。
なるせ:「コジコジ」は知っていました。僕はもともと、お笑いとかコメディ的なものが好きで、「コジコジ」も「ギャグマンガ日和」も読んでいましたね。ただ、これらの舞台化についてですが、基本的には自分にしか出来ないことをやりたいなと。「ギャグマンガ日和」をやらせていただいた時は、意外と反響も大きくて「受け入れてもらえるもんだな」と思いました。そして次に話題になりそうなものはなんだろうなって思ったら、「コジコジ」がひらめいてきた(笑)
――(笑)。
なるせ:原作者のさくらさんがお亡くなりになったっていうのもありまして、さくらももこさんにちなんだ場所ということで渋谷(※)、シブゲキ!ですが、このタイミングでこれをやる、ご縁というのでしょうか、しかも「これは誰もやらないだろうな」と、ちょっとやってみたいなってずっと思っていたところから・・・・ですかね。
――うっすら、「ギャグマンガ日和」の流れじゃないだろうかとは思っていました(笑)。
なるせ:(笑)。そうですね!でてくるメンバーが確かに!もう!すでに着ぐるみとかね(笑)。これはやれそうだなという手応えも感じました。

「随所にハッとする瞬間を入れたいなと思っています」

――世界観とかキャラクターについて。アニメを改めて拝見しまして、作品の根源的な部分はやはり「コジコジはコジコジだよ」っていうことですね。
なるせ:哲学的ですよね。「コジコジ」の世界観ってふざけているように見えて意外とハッとさせられる瞬間がすごくあるから、ただのコメディにはならないだろうなとは思っています。舞台化にあたって、2時間やる以上は、ただ笑えるだけじゃなく、そういう意味合いでちょっと深みがある方向に持っていきたいですね。「コジコジ」の世界観、笑いの中にすごく哲学的な要素が入っていますが、「ムーミン」も哲学的な内容が含まれていますが・・・・・・「ムーミン」も「コジコジ」も意外とハッとさせられる、その方が伝わることってたくさんある、笑いの中にそういうのがすうっと入っている、だから入っていきやすい、そういうところは踏襲したいです。随所にハッとする瞬間を入れたいなと思っています。
――「ムーミン」も独特の世界観でそこにしかいない住人がいる。
なるせ:そこが面白い。ああいう世界観ってなかなか描けない。個人的には「ちびまる子ちゃん」より「コジコジ」の方が、それが色濃く出ているなと。カラフルだし(笑)。絵的に面白いし(笑)。
――「コジコジ」は色使いも可愛らしいし、キャラクターの見た目も個性的ですね。
なるせ:「コジコジ」は舞台化した時に絵的に映えるんですよね。「コジコジ」の面白さって誰かに変に依存している関係性。例えば、やかん君はペロちゃんがすごく好きなんだけど、好きだから、つい沸騰しちゃって(笑)、お茶を飲みたいのがカメ吉君、彼はお茶が大好きで、やかん君が沸騰すると湯飲み持ってやってくる(笑)連結しているっていうんでしょうか、いろんな変な関係性で成り立っている。その世界がすごく面白いし、変に依存している、これもすごく哲学的だなと思います。この世界観が面白い、こういう関係性は舞台化するとより面白くなる。「ちびまるこちゃん」よりも色濃く出る感じはしますね。キャラクターも全員出すわけではなく、そういう関係性が結構色濃く出るメンバーをチョイスしました。
――この不思議な関係性は舞台で観た時きっと、よりはっきり見えてくるような気がしますね。
なるせ:そう。なんか面白いですよね。はっきり言って役に立たないけど、それでも生きている。これがまた哲学的な要素がすごくあって面白いですね。

「『役に立たなくても生きているんだよ』みたいな歌、例えば、みんなでアホな顔をして歌うとそれはそれで面白くなる(笑)」
――「コジコジ」のファンってかなりいますね。
なるせ:「ちびまるこちゃん」よりコアなファン・・・・・・舞台化するのに少しだけ、ファンに対しての怖さってあります。「ギャグマンガ日和」はある程度、認められましたが、「コジコジ」のファンは多分、舞台を見たことがない方が多い気がするので、その方々に認められるような、作品にしたいですね。
また「コジコジ」はそれぞれの話が完結しているので、そのまま単発でやるとただの短編集になっちゃうので、それはちょっともったいない・・・・・・一つの軸を作った上で、そこにキャラクターを盛り込んでいくように作ってやってみたい。あとは音楽を入れたいですね。アニメの中でもよくわかんない歌を歌っていますが、これもまた舞台と相性が合いそうだなと思っています。ミュージカルではないのですが、あのゆるい歌が随所にちりばめていると世界観も出やすいし、哲学的な部分もすっと入っていきやすいような気がします。「役に立たなくても生きているんだよ」みたいな歌、例えば、みんなでアホな顔をして歌うとそれはそれで面白くなる(笑)。
――(笑)。歌が入ると、舞台にした時にわかりやすいのと、あといわゆるエンタメ性ですね、見せ場的になる。
なるせ:そうですね。そういうところは出したいですね。かっこいいものは決して出ないんですけど、ゆるさを前面に押し出し、そのゆるい中のじわじわっと浸透していくみたいな、ゆる〜い空気感の中での、その染み込んでいくものを作りたいなと。ゆるいですよ、今回は(笑)。
――オリジナルストーリー?でしょうか。
なるせ:オリジナルなストーリーは入れていますね、オリジナルキャラクターもね、出そうかな?とは思っています。そこを入れつつ、のストーリーになると思います。

「映像も考えたんですけど、なんか昭和な匂いの残るもの、そういう手法の方が面白いんじゃないかと、作品にあっているんじゃないかなと」

――あと、コジコジは飛ぶじゃないですか。飛ぶ?(笑)
なるせ:(笑)。これはね・・・・飛ばしたいですよね。飛ばす算段はつけています、はははは。
――どう飛ばすかはお楽しみですね。
なるせ:ゆる〜〜く飛ばそうかなと思っています。
――飛ばし方はね、お楽しみね。
なるせ:そうそう(笑)。
――最近はいろんな飛ばし方があるじゃないですか。昔は、本気でフライングさせていた。最近は映像を使って、それで飛んでいるように見せるっていうのもありましたね。
なるせ:自分は動いていない(笑)
――そう(笑)。今はいろんな飛ばし方がある、
なるせ:この作品に関しては、アナログな方が面白いと思うんですよね。
――それは絶対にそうだと思います。
なるせ:映像も考えたんですけど、なんか昭和な匂いの残るもの、そういう手法の方が面白いんじゃないかと、作品にあっているんじゃないかなと。映像は使わない、飛ばすにしても、いわゆるアナログな方が相性がいいという感じはしますね。
――ハイテクは似合わないですよ。
なるせ:映像をバーーって出されてもなんかちょっと違うなって思っちゃいますね。そうじゃない方が、演出全般においてはアナログな手法の方が面白いなっていう感じはしますね。
――世界観がね。
なるせ:そうね。うん。

「ゆるい哲学的なものをみんなで全力で作りたいな。ぜひ、怖いもの見たさで!」

――最後に締め。
なるせ:締まらないからな(笑)。
――締めのご飯じゃないですよ(笑)。
なるせ:(笑)。多分、「どんな風になるのかな?」っていういろんな怖いもの見たさな気がするんですよね。想像がつかないから「どんなもんだろう」と・・・・・特にファンの方はそう思われていらっしゃる方々はいると思うんです。とりあえず、怖いもの見たさで見に来てもらいたいなと(笑)。
――(笑)。「ギャグマンガ日和」もそうでしたね。
なるせ:そうでした(笑)。多分、言葉では説明しづらいですね。初めての試みですし、ちょっとチケット代はしますが、損はさせないように!ゆるい哲学的なものをみんなで全力で作りたいな。ぜひ、怖いもの見たさで!
――ゆるい世界観を真面目にね。
なるせ:そうそう(笑)。真剣に!作ります!
――ありがとうございます!

(※)「COJI-COJI(コジコジ)」のアニメでオープニング曲を歌ったバンド「ホフディラン」は「渋谷系」アーティスト。コジコジのエンディング曲を担当したカジヒデキも「渋谷系」アーティスト。

<”そこはメルヘンの国”>
そこの住人たちは、泳げない魚と飛べない鳥の合体した半魚鳥の次郎くん、有名人のサインばかり集める太陽の王様ゲラン、
謎のブルガリア人ジョニーくん、天使らしからなる容姿で悪者に恋心を抱く天使・吾作、なぜかメルヘンの国にいる悪者ブヒブヒ、などなど、一癖も二癖もある変なキャラクターばかりだった。
そんな面々の中でも特に異彩を放つのは、年齢も性別も不明なコジコジという謎の宇宙生命体だった。
自由気ままでありながら、ときどき哲学的な発言で真理をついたり、かと思えばとんちんかんな言動で級友たちを呆れさせたりと・・。
コジコジと、コジコジをとりまくメルヘンの国のナンセンスファンタジー。

【公演概要】
舞台「コジコジ」
日程・場所:2019年8月21日(水)~25日(日)CBGKシブゲキ!!
原作:さくらももこ
脚本・演出:なるせゆうせい
出演:向井葉月(乃木坂46)、輝山立、宮崎理奈、大神拓哉、あまりかなり、市川刺身、中村ヒロユキ、服部ひろとし、青地洋、いーま ほか
公式HP:https://stage-of-cojicoji.com/
撮影:金丸雅代
取材・文:Hiromi Koh