イタリア役 長江崚行 ミュージカル「ヘタリア~The glorious world~」インタビュー

“ヘタミュ” 新シリーズ第3弾公演、ミュージカル「ヘタリア~The glorious world~」が3都市、8月9日から9月8日にかけて、京都、大阪、東京を巡演する。『ヘタリア』は、日丸屋秀和による国民性コメディ漫画。イタリアは本作の主人公。このイタリア役を初演から演じている長江崚行さんのインタビューが実現した。

ーー初舞台化からイタリア役でずっと出演なさっていますが、この作品に初めて出演したときの感想をお願いいたします。

長江:僕が高校2年生のときに初めて出演させていただきましたので、9年ほど前(2015年初演・ミュージカル「ヘタリア~Singin’ in the World~」)になるんですけど、当時は、漫画やアニメを原作にした作品の舞台に出演する経験も多くなく、周りはもうベテランさんで舞台に慣れてる方々がたくさんいる中で主演に抜擢していただいてすごく緊張しました。自分の知らないことばかりですごく新鮮だった印象があります。でも、9年続けてこれたのも、あの初演がきっかけだと思いますし、当時、みなさんとこんなに仲良くなれるとは思わなかったので、僕にとってはすごく忘れられない公演でした。

ーー長江さんが感じるこの作品の特徴とか面白さはどこにあると思いますか?

長江:歴史的要素をコメディにして表現しているのがこの作品の特色、アイデンティティになるところだなと思っています。僕たちが演じているそれぞれのキャラクターが口げんかをしたりとか仲良くなったりしている、歴史を振り返ったときに、そこに必ず元ネタとなる出来事がある、ここは争っていた、こことここが組んでいたとか、歴史を紐解いて振り返ったときにそこにモチーフとなるものが存在していますが、舞台単体で見たときにはすごく楽しくてほっこりできるハートフルなコメディの側面もあれば、史実を知ってる人は『あの出来事の話をしてるんだ』っていうがわかるので、すごく多角的に作品を楽しめる、この作品だからこそできるアプローチなのかなとは思います。なので、より多くの人が多くの視点で楽しめるっていうのは、この作品がたくさんの方に愛していただけた一つの要因なのかなとも思っています。

ーー『ヘタリア』で描かれてる内容は基本的に学校で習うはずのもの。結構シリアスな関係性もありますが、『ヘタリア』ではそういうところもユーモアに表現されて、歴史苦手な人にもハードルが低くなってる感じがしますが、そういったところはどう思いますか?

長江:本当にそうだと思います。もしも興味がなかったら、どんなものでも覚えてられなかったりとか、すごい断片的にしか記憶されてないものだと思うんです。この作品を通して、自分の学生時代に習ったことを思い出せたりとか、あとはおっしゃっていただいたように、少しブラックなこともコメディに変換することによって、それを正当化してるわけではなくて、こんなことがあったんだなって知るきっかけになってたら、この作品をやる価値があるんだと。これまでの歴史って、美しくない部分も抱えて、今があると思うんですよね。そういった事実があったっていうことを知るのはとても大事だと思います、1人の人間としてもそうですし。この作品、こういうコメディ作品を入り口として世界に興味を持つことができるのは、僕はとても素晴らしいことだと思いますし、これをきっかけに、今の20代30代や10代の子たちもすごく劇場に足を運んでくれるようになりましたし、単純に作品を楽しんでくれたらそれだけでハッピーなんですけど、一つのきっかけとして、こういうことあったんだなって思ってくれる場となれば、もう言うことがないですね。

©日丸屋秀和/集英社・ミュージカル「ヘタリアFW」製作委員会

ーー私も『ミュージカル「ヘタリア」』初演を観た時、こういうふうに学校で教えてくれれば歴史嫌いになる人が減るのにと思いました。

長江:やっぱり面白いって思ってもらえることが一番大事だと思うので、学校の授業も舞台も何もかも、面白いと思ったからこそもっと知りたいしもっとそのことについて考えたいって思ってくれるだろうから。叶うかどうかわかりませんけど、何か学校公演とかできたら超楽しそうだなと思います。他の舞台作品がやってないことができそうだなと思うので、そういったことも含めていろんなチャレンジができたらいいなと思います。

ーー長江さんは長らくイタリアを演じてますけど、イタリアというキャラクターのかわいいところとか、面白いところとか、それからいい意味で残念なところとかあれば。

長江:イタリアは、ピュアで、目の前のことにすごく純粋に反応していけること、改めて毎回毎回入るときに、早めにイタリアを考え直したりはするんですけど、彼は何か目の前で問題が起きたとき…普通は”こういうことが起きてるからこうなんだろうな”っていうふうに自分の経験をもとに問題の改善点を見つける、でも、その中でも、”もうこれ多分どうにもならないな”っていう、もうどれだけ手を施すも問題の解決には至らないっていう瞬間、”もうこれ、これもうどうしようもないな”っていうのがあると思うんです。それってある種、大人になるっていうか、妥協することだと思うんですけど、イタリアくんはそこを妥協しないし、何とかなる、何とかできるだろうってピュアに思ってるし、イタリアくんのいろんな思考回路で何かをみんなが幸せになる方法、この問題を解決する方法を探しそうとする姿勢、”いや、無理だって”っていう中でも”いや、何とかなると思うんだよね”って言えるそのピュアさと純粋さまっすぐさが、周りのキャラクターたちに”仕方ねーな、手伝ってやるか”と思わせる…憎まれない愛される一因なんだろうなと思っています。そういった意味で、彼がこの作品の主人公である理由がそこに存在するなと…そこが僕にとってイタリアの魅力だなと思いました。原作にもありますけど、すごいヘタレな子なので、そこがいい意味で残念なところなんだろうなと思いますけど。自分の弱さを隠すことなく、人にまっすぐに”助けてくれ”って言える純真さっていうのが彼の本質的な部分なんだろうなって。その中で、僕の兄弟であるロマーノは、やっぱり肉親だから、ちょっとみんなと会話するときよりも、少し口が悪くなったりとか、ちょっと言いづらいこともあったりとか、お兄ちゃんだから、言えること、言えないことみたいな、ロマーノは他のキャラとちょっと違うんだなっていう…肉親だからっていう部分あるなって今回思って、そこは楽しく作れたらいいなと。9年やってても、新しい魅力っていうのがどんどん出てくるので。イタリアだけじゃなくて他のキャラクターも素晴らしいし、そこは作品の奥行きだなとは思います。

©日丸屋秀和/集英社・ミュージカル「ヘタリアFW」製作委員会

ーーヘタリアにはたくさんのキャラクターが出てきますけれども、共演の方々についてほとんどの方が長江さんよりお年上で、キャリアも十分の方々ですが、うまいキャスティングだなと思ったりもします。

長江:確かに(笑)。キャラクターと本当にシンクロしてる人たちがたくさん多いので、キャスティングのノウハウを知りたいぐらいですね、どうやって選んでるんだろうって。長い方は、それこそ初演から9年ほど一緒にいるので、先輩ですけど、家族のような感じもするし、僕は後輩ですが。すごく近い距離感で接していても大丈夫、”タメ口でいいよ”みたいな、”何言われても気にしないよこの関係性なんだし”みたいな…こんなに近い距離感になれたんだな、こんなに甘えられるんだな。だからこそちゃんと、家族としても先輩としても敬う部分を持って接しないと…何か不思議な関係性ですね。この関係性が、9年いるからというよりも『ヘタミュ』だから。新しいキャストが入ってくるときも、この僕らの輪の中に入ってくるって、ちょっとプレッシャーだと思うんですよ。でも一緒にいた年数とかではなく、『ヘタミュ』参加したらもう家族だよね!みたいな感覚があるから。こっちとしても、”よろしくね!”ぐらいのノリで。もう新キャストのことは既に知ってるみたいな感じになるので、それがすごい不思議ですね。前回から磯野亨が入ってきましたけど、なんか亨ちゃんの性格もあるんでしょうけど、なんか全然初めましての感じもなかったし、わくわく一緒に楽しめたし、何かそういった空気作りがもう自然と完成しているのが、『ヘタミュ』のすごいところですし、僕らもちろんスタッフさんも含めて、この座組でこの空気感を作り上げられたのは、ちょっと他にはない、この面白い共演者たちだからこそできたことは改めて感じています。

ーー最後になりますが、いつも観に来てくださる方と、世界史苦手でまだ見てない方もいらっしゃると思います。見どころも含めての締めをお願いいたします。

長江:改めてここまで読んでくださってありがとうございます。今作は、初演のときと同じ人数なんですねメインキャストが。9人から始まってそこから人が増えたり、今回はこのチームでやろうっていう、いろいろ繰り返してきた中で改めて初演の人数に戻って、初演から出てた人が今回はお休みだったり、初演にはいなかったメンバーが今回入ってたりとかはありますが、同じ人数だけど、全く違う『ヘタミュ』が観れる気がします。そこはすごく楽しみにしていただきたいですし、今回はたくさんの方にお会いできるチャンスがあるのは改めて、すごく楽しみな部分です。ずっと応援してくれてる方も、まだ『ヘタミュ』見たことない方も、これだけ多角的に楽しめるので、きっと、今読んでくれてるあなたの一番面白いと思える感性に刺さる瞬間がこの作品にはあると思います。ぜひ期待して!遊びに来ていただけたらなと思います。劇場でお待ちしております!

ーーありがとうございます。公演を楽しみにしております。

STORY
世界の頂点について語り合う、とある日のイタリアとロマーノ。
その議論は白熱し、ついには喧嘩が始まってしまう。
そこに突然現れたのがプロイセン。
しかし、彼は喧嘩を止めるどころか、 むしろ喧嘩し続けることでお互いを高め合うこともあると語る。
そうすることで共に世界の頂点に近づいた、あの2人のようにと・・・。

概要
公演タイトル:ミュージカル「ヘタリア~The glorious world~」
会期会場:
京都:2024年8月9日(金)〜12日(月祝) 京都劇場
大阪:2024年8月17日(土)〜19日(月) 森ノ宮ピロティホール
東京:2024年8月24日(土)~9月8日(日) 日本青年館ホール
原作:「ヘタリア World★Stars」日丸屋秀和(集英社「少年ジャンプ+」連載)
演出:吉谷晃太朗
脚本:なるせゆうせい
音楽:宮里豊
振付:MAMORU
音楽監督:田中葵 歌唱指導・音楽助手:水野里香
舞台衣装デザイン:新朋子(COMO Inc.) 衣装製作:COMO Inc. ヘアメイク:西村裕司(earch) カメラマン:金山フヒト(Xallarap) 宣伝美術:羽尾万里子(Mujina:art)
キャスト
イタリア役:長江崚行、ドイツ役:上田悠介
アメリカ役:磯貝龍乎、イギリス役:廣瀬大介、フランス役:寿里、ロシア役:山沖勇輝、 プロイセン役:高本学、ロマーノ役:樋口裕太、オランダ役:磯野亨 仲田祥司、町田尚規、伊東征哉、松崎友洸、安久真修、丸山武蔵、船橋拓幹、大嶌幸太
TICKET
料金 10,900 円(フラッグ付き/全席指定 ・税込)
※公演グッズ「フラッグ」が付属します
※詳細は公式WEB参照
企画制作・プロデュース:4cu(FrontierWorksInc.)
制作:株式会社FAB
主催:ミュージカル「ヘタリア GLW」製作委員会

公式サイト:https://musical-hetalia.com/

ミュージカル「ヘタリア~The glorious world~」のライブ配信実施が決定しました!!
京都・大阪・東京の各千秋楽公演を含む全6公演をU-NEXTでライブ配信!
さらに、6公演すべて視聴可能な「6公演通しチケット」の販売も決定しました。

京都公演、東京公演は前作でも好評のマルチアングル配信となり「スイッチング映像」と「全景映像」をお客様自身で切り替えながら楽しめます。

さらに各配信チケットには、出演キャストからのメッセージやメイキング等が視聴できる特典映像も付属し、お楽しみ要素も満載。
“ヘタミュ”の世界を、配信でもたっぷりお届けいたします。

©日丸屋秀和/集英社・ミュージカル「ヘタリア GLW」製作委員会

取材:高浩美