2013年より「月刊コミックバンチ」「コミックバンチ Kai」(新潮社)にて連載中の歴史漫画「応天の門」。気鋭の作家・灰原薬が手掛ける本作は、平安時代を舞台に、学問の天才と称される菅原道真と、都で随一の色男である在原業平がタッグを組み、京の都で起こる怪奇事件を次々と解決していく様を描く歴史クライムサスペンス。その舞台版が開幕した。
冒頭、この物語のメインキャラクターである在原業平(高橋克典)が登場、彼は色男、逢瀬を終えた帰路、夜更け。そして屋根の上にいる人物、菅原道真(佐藤流司)、彼は少年で文章生。この二人の出会い、それからオープニング。主要な人物たちが登場。そして、この時代の平安京の説明、そこは紀長谷雄(中村莟玉)が担う。明るく親しみのあるキャラクターで平安時代の京都を説明、平安京の”模型”が登場、これがわかりやすいので、日本史のお勉強にも役立つ。
そして事件、その疑いが紀長谷雄に。身に覚えがない、激しく狼狽。そこへ菅原道真と在原業平、再びあいまみえる。原作にあるセリフ「私は菅原是善の三男、道真と申す」
ストーリーは原作通りに進行する。原作を予め読んでおけば、展開もわかるが、舞台ならではの見せどころ、明治座の舞台機構を使ってのアクティヴな舞台転換、テンポよくシーンが進んでいく。業平は道真と共に事件を解決、紀長谷雄の疑いも晴れ、業平と道真は、以降も都で起こる怪奇事件を解き明かしていく、というのがこの物語の大体の流れ。
登場するキャラクターの魅力、菅原道真は文章生、すこぶる頭がいいが、人と馴れ合うことを嫌っており、屋敷に篭りがち、いわゆる”引きこもり”的なキャラクター、滅多に笑わない。対する在原業平はモテモテのイケメン、人当たりも良いが、かつて駆け落ち未遂をした藤原高子が忘れられない、根は純粋な人物。
そして華やかな昭姫(花總まり)、美しいだけでなく、色っぽさを持ち合わせている、都の遊技場を束ねる女主人。そのほか藤原北家を率いる朝廷の実力者、藤原良房(青山良彦)、自身と藤原氏の権勢を強めることを第一に考え、良房の養子・基経(本田礼生)、冷徹な人物、その冷たい眼差し。
藤原家に代わり実権を掌握したい伴善男(西岡德馬)・中庸(白石隼也)、伴善男、原作もそうだが、かなり顔が怖い!息子の中庸は穏やかそうな表情、道真を懇意に思う。道真の学友・紀長谷雄は道真と違って落第ばかり、その上、トラブルメーカーで道真を何かと頼ろうとする憎めないお得キャラ。菅原家に仕える女房・白梅(高崎かなみ)は見た目が可愛らしい。小藤(坂本澪香)、親嗣の下女、冒頭、彼女がいなくなったことで騒ぎが起きる。
また、源融(篠井英介)、耽美趣味、ちなみに篠井英介はもう一つ役を演じているので!篠井英介らしい2役。
怪事件、鬼なのか、妖なのか、平安時代なので迷信や言い伝えなど無数にあるが、菅原道真は一切信じない、いわばリアリスト。理不尽な貴族社会が嫌いな、真っ直ぐな人物、そして案外面倒見もよく、しょうもない紀長谷雄のために昭姫と双六勝負したり(この時代の双六はかなり高度なゲーム)。ちなみに文章生とは古代・中世の日本の大学寮にて紀伝道を専攻した学生。成績優秀者には給料が支払われたそう。そんな平安ミニ知識を覚えておくと物語は俄然面白くなるので!また、この時代の権力抗争もちょっと頭に入れておきたいところ。また、2幕では花總まりが歌う、歌う(ミュージカルではありません、念の為)!幕開きから聴きどころ、そしてかなりドロドロした権力争いのシーンが展開するので。しかし、そのドロドロシーンの前に客席を巻き込んだ楽しいシーンも(クラップOK)。ちなみにタイトルにもなっている応天門、大内裏の内側にあった門、朝廷内での政務・重要な儀式を行う場、866年に応天門の変で放火、その後もたびたび失われたが、1177年に焼失して以来、再建されていないそう。
ゲネプロ終了後に簡単な会見が行われた。登壇したのは佐藤流司 高橋克典 中村莟玉 高崎かなみ 本田礼生 白石隼也 坂本澪香
青山良彦 篠井英介 西岡德馬 花總まり。
佐藤流司「1ヶ月強の稽古後、初日を迎えられるので非常に私自身興奮しております。素晴らしい作品を届けられるよう頑張って参ります」
高橋克典「原作ファンの方もそうでない方も楽しんでいただけることをやっております。頑張ります」
中村莟玉「私は普段は歌舞伎俳優として活動しておりますが、初めて1ヶ月間の歌舞伎以外の舞台に立たせていただきます。千秋楽まで怪我に気をつけながら努めたいと思います」
高崎かなみ「1ヶ月ちょっとお稽古をやり、皆さんが無事怪我なく病気なく今日初日を迎えられたことがすごく嬉しいです。千秋楽まで駆け抜けて頑張っていきたいと思います」
本田礼生「素敵な原作、過去に実在した人物を演じさせていただくということで、しっかり演劇として板の上で生き抜いていきたいと思っております」
白石隼也「今回のお芝居(期間)はとても長く、我々はとても複雑なことをやっています。最後まで気を抜かずみんなで駆け抜けたいなと思っております」
坂本澪香「共演者の方々にたくさん助けて今やっとここに立たせていただいている状況です。稽古の中でいただいたこと全て公演にぶつけていきたいと思いますので、ぜひ見ていただけたらと思います」
青山良彦「最年長、健康で皆さんの足を引っ張らないように楽しい舞台を勤めたいと思っております」
篠井英介「10年ぶりの明治座さん、とても嬉しく思っております。源融は一説によると源氏物語の光源氏のモデルとも言われているらしいので、いかにこのイメージを覆し、全く違う人物像にするかを…千秋楽までみなさんと手を携えて、楽しく無事に努めたいなと願っております」
西岡德馬「怖い顔しておりますけども、原作はもっと怖い顔してるんですよ。なるべく近づけようと思ってこんな顔になっております。伴善男は応天門の変の犯人とされているんですけども、どんな悪役でやるんでしょうか、それが楽しみ…相当悪いかもしれません」
花總まり「緊張しつつ、千秋楽まで気をつけて頑張りたいと思っておりますよろしくお願いいたします」
見どころについては「某NHKも大人気でございますから」と高橋克典。また佐藤流司は「すごいいろいろ機構があって、花道も」もちろん花道もフルに使うので!「わくわく気分で見ていただいて」と花總まり。高橋克典は「今までの明治座の大ファンのお客様と少し若いお客様が見ていただける作品ではないかなと思います」とコメント。初日前、グッズを買い求めるお客様の列が。
また、衣装について「姿、形の美しさ、風流」と佐藤流司。「素敵で立派な衣装、生地もたくさん使って」と高橋克典。また、西岡徳馬から「1人では着られない」とコメント。青山良彦も「大変です、早く衣装に慣れないと」と語る。「時代を感じて」と高橋克典。雅な衣装、そこも見どころ。花總まりは自身の役どころについて「正義感が強くてちょっと粋で、ちょっと色っぽくてという役。
同じ女性として憧れる部分もたくさんあるので自分の共通点というよりは、この役を今も楽しんでやりたいなと思っております」とコメント。篠井英介は「皆さんを見拝見してるわくわく…自分の出番もとちりそうなくらい見惚れてしまうので」と語った。
最後に佐藤流司から公演PR。
「千秋楽が22日まで、結構濃厚な作品となっておりまして、公演時間も3時間ぐらいあります。余すところなく全力で座組一同、駆け抜けていきたいと思いますので、最後まで怪我なく素晴らしい作品を皆さんにお届けできればと思っておりますので、最後まで応援をどうぞよろしくお願い申し上げます」
<製作発表会レポ記事>
物語
げに恐ろしきは 人間か物の怪か───
門によって護られ、門によって隔絶された都市、平安京。
満月の夜、京の守護につく在原業平(高橋克典)は逢瀬を終えた帰路の途中、屋敷の屋根の上に怪しげな人影を見る。鋭い目つきで業平を見つめる少年は、若き文章生である菅原道真(佐藤流司)であった。
ある日、業平の親戚で道真の級友でもある紀長谷雄(中村莟玉)に、行方知れずの小藤(坂本澪香)という女官を誘拐した嫌疑がかけられたことで、真相解明のため2人はタッグを組むことに。遊技場の女主人である昭姫(花總まり)、菅原家に仕える女房・白梅(高崎かなみ)の力を借りて事件を解決した道真は、業平から頼りにされ、源融(篠井英介)が催す宴席に招かれるなど、不本意ながらも宮廷での出来事に関わっていく。
宮中では、幼い帝に代わり政を牛耳ろうと目論む藤原良房(青山良彦)・基経(本田礼生)、藤原家に代わり実権を掌握しようと策謀する伴善男(西岡德馬)・中庸(白石隼也)など、一族の権力争いが渦巻いていた。
様々な思惑がうごめく中、次々と起こる怪事件に道真も巻き込まれることに……。
概要
日程・会場:2024年12月4日(水)~12月22日(日) 明治座
原作:灰原 薬 『応天の門』(新潮社「コミックバンチ Kai」連載)
脚本:桑原裕子
演出:青木 豪
出演
佐藤流司 高橋克典/中村莟玉 高崎かなみ 本田礼生 白石隼也 坂本澪香/
青山良彦/八十田勇一 若狭勝也/篠井英介/西岡德馬/花總まり(特別出演)
明治座公式サイト:https://www.meijiza.co.jp
Ⓒ灰原薬/新潮社