ミュージカル『ブラック・ジャック』上演中 生と死、生きること、存在することの意義。

ミュージカル『ブラック・ジャック』が好評上演中だ。18日より新潟、名古屋、浜松、札幌、兵庫にて上演。
原作は『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)において1973年11月19日号から1978年9月18日号まで連載したのち、1979年1月15日号から1983年10月14日号まで不定期連載、全242話。無免許ではあるものの、唯一無二の神業ともいえる手術テクニックにより世界中に名を知られる天才外科医ブラック・ジャック(間 黒男)を主人公に、「医療と生命」をテーマにそれぞれ据えた医療漫画。


今回のミュージカル版はベースはブラック・ジャック (OVA)、『拒食、ふたりの黒い医者(原作:ふたりの黒い医者、あるスターの死)』。これを元に舞台版の物語を構築。出だしは市井の人々が行き交うシーン、ブラック・ジャックの噂話をしている、基本、あまりいい噂ではない。高額な金を取る、ここの部分で作品をよく知らない観客でも基本設定がわかる仕組み。

それからブラック・ジャックの宿敵とも言える人物、キリコが登場する。身なりが少し見窄らしい男がキリコに金が入った袋を渡して走り去る。この男、身内の安楽死をキリコに頼んだのだった。ここでブラック・ジャックとキリコの考え方や立ち位置がわかる。キリコは安楽死の必要性と正しさを信念とする医師。軍医時代に、戦場で満足に治療が受けられず、瀕死の重傷に苦しむ兵士たちを安楽死させて感謝された経験から、「完治の見込みのない患者を下手に生存させ苦しませ続けるよりも、安らかに息を引き取らせた方が良い」という信念を持つようになった。つまり、どんなことがあっても命を救うべきと考えるブラック・ジャックとは真逆の考え方。だが、実はこの思想は表裏一体、そんなことも示唆する2人のシーン。女優・真理子、初主演映画の撮影、ところがこの撮影中に倒れてしまう。拒食症を伴う奇病、原因は不明、ブラック・ジャックもわからない。絶望した真理子、キリコに出会う。

彼の主張、安楽死も一つの治療のあり方という。ブラック・ジャックと常に行動を共にするピノコ、B・Jのオクタン(奥さん)として家事をこなし、治療の助手を務める。真理子にちょっと嫉妬したりする様子は可愛らしく、共感も。


舞台セットはシンプル、登場人物を際立たせる演出、特にブラック・ジャックとキリコの対比、ブラック・ジャックは坂本昌行、キリコは味方良介という実力派、ピノコはミュージカル初挑戦の矢吹奈子、見た目がピノコっぽい。女優の真理子には空ゆうひ、屈折した雰囲気を醸し出し、真理子の苦悩を体現、彼女の叔父・白川に今井清隆、坂本昌行との二重唱は圧巻。
重くなりがちな物語、重厚になりすぎず、時折笑いも起こるシーンもあり、緩急つけた演出、栗山民也、脚本は鈴木聡という布陣。


『ブラック・ジャック』、手塚の没後を含めてリメイクや派生・オマージュ作品が生み出され続けているが、つまり、”最強コンテンツ”ということ。公演は東京は13日まで、その後は新潟などを回る。大千穐楽は8月9日。

[あらすじ]
天才外科医で、世界中で死の危機にさらされた重症の患者をいつも奇跡的に助けるが、法外な治療費で、闇医者、守銭奴、と悪い評判もある黒男=ブラック・ジャック。
今まさに新進気鋭のスターとなろうとしている真理子という女優が、初主演映画の撮影中に倒れる。彼女は食べ物をいっさい受け付けない奇病に冒され、やせ細り、命までも風前の灯火。そんな彼女のために、叔父で医師でもある白川がブラック・ジャックに依頼をする。しかし、彼でも原因がわからないと知り絶望した彼女は、安楽死も医療のひとつのあり方だと主張するドクター・キリコに出会う。一方、真理子をなんとか直そうと没頭しているブラック・ジャックに助手のピノコはやきもちを焼きながらも優しく寄り添う。そんなある日、ブラック・ジャックは真理子の昔の話を聞き――

<参考URL:アニメ!アニメ! 「ブラック・ジャック」オペラ化 宮川彬良インタビュー(2015年)>

https://animeanime.jp/article/2015/09/09/24840.html

概要
ミュージカル『ブラック・ジャック』
日程・会場:
東京
2025年6月28日(土)~7月13日(日) IMM THEATER(東京)
原作:手塚治虫
演出:栗山民也
脚本:鈴木聡
音楽:笠松泰洋
主演:坂本昌行
出演:矢吹奈子 味方良介/福本伸一 家塚敦子 岡崎大樹 村田実紗/大空ゆうひ/今井清隆

全国公演
[新潟公演]
日程:2025年7月18日(金)
会場:新潟テルサ 大ホール (新潟県新潟市中央区鐘木185-18)
[名古屋公演]
日程:2025年7月21日(月・祝)
会場:COMTEC PORTBASE (愛知県名古屋市港区金川町3-5)
[浜松公演]
日程:2025年7月23日(水)
会場:アクトシティ浜松 大ホール (静岡県浜松市中央区板屋町111-1)
[札幌公演]
日程:2025年7月26日(土)
会場:カナモトホール[札幌市民ホール] 大ホール (北海道札幌市中央区北1条西1丁目)
[兵庫公演]
日程:2025年7月31日(木)~8月2日(土)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール (兵庫県西宮市高松町2-22)

公式サイト:https://musical-bj.com

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手塚治虫の「塚」は旧字体。