剣幸 インタビュー『 剣幸 kohibumi concert in MUSICASA』8月上演

昨年、芸能生活50周年を迎え、ますます活動の場を広げている剣幸さん。退団後は数多くのミュージカル、ストレートプレイ、コンサートなど精力的に活動。今年、51年目、自身のライフワークである『剣幸 kohibumi concert in MUSICASA』、8月16日に代々木上原ムジカーザで開催。今までの活動を振り返って、また、今回のコンサートのことや自身の思いなど、たっぷりと語っていただいた。

ーーこれまでの活動を振り返って。

剣:掘り返すのはもう非常に難しいぐらいの歳になってしまいましたが(笑)、去年、芸能生活50年…年数は全然気にはしてないんですけども、改めて、50年続くなんて自分自身が思っていなかったので、それがびっくりなことですね。50周年記念のディナーショーやお芝居もさせていただきました…ずっと見続けてくださった方がこれだけいらっしゃることが50年続いた一番の要因。私が続けてきたことよりも皆さんが見続けてくださったからだと思って、もう感謝しかないなと思ってます。宝塚に入ったときは本当に劣等生だったし、何もできなかった。人生ってわからないんだなって。いろいろなターニングポイントがあったときに、どっちをとるか…でもそれは全てそのときにいてくださった方々、宝塚入るときに応援してくださった方々もいるし、一緒に頑張ってくれた同期がいたり。そのときそのときが全てターニングポイントだなと思っています。それがひとつずつ重なってここに来てるんだなと。振り返ったときに本当にありがとうございましたって言わなきゃいけない人がたくさんいらっしゃる!
だから50年は一つの区切り、いろいろ考えさせられたし、新たにまた『1年生』として今までやったこともないことや違う感覚で1日1日を過ごしていけたらいいなと。仕事はいつまでできるかわからないし。特に舞台は、この先どうなっていくかは自分次第だし、それを考えていたらできないので、できるところまで突っ走る、そのためには、体調を整える。体力をつけるというよりは維持することを考えてやっていくしかないかなっていう感じですね。ターニングポイントと考えたら、宝塚時代もたくさんありすぎて。新人公演で主役をいただけたのはすごいことだったし、トップにさせていただいたことも、ものすごい大事件!辞めてからもいろんな作品に参加するたびに出会うキャストの皆さん、スタッフの皆さん、演出家の先生も、この方々に出会ってなかったら、俳優の仕事を続けていなかったかもしれない。ターニングポイントの繰り返しだと思います。

ーー劇団の中での出会い、辞めても本当にいろんな方達に出会えますね。作品もOG合同のショー、ミュージカルから朗読劇から、2.5次元舞台とか。

剣:全部面白いです。いろんなジャンルの方々とご一緒にできることはもちろん、演出家の方々もそうです。また、宝塚にいたら絶対できなかったことをたくさんさせていただいています。あえて「そこに首突っ込むの?」と言われるようなことでも…チャレンジャーのつもりでいろんなことを身につけたいと思います。いろんな世界を見られる機会。体験できるなら、なるべくたくさんのことを見て身につけて…この作品に私を呼んでくださるんだ〜!という驚きもあったので、それはありがたいことだなと思ってます。

ーー共演の方々は剣さんからみたらかなり若い方も。

剣:20歳ぐらいの方でしたら、完璧に”孫”ですね(笑)。歳を重ねて何もできなくなるのではなく、歳を重ねたからこそできることを探していきながら。でもこんなに若い人たちと一緒に同じ舞台に立てるんだっていう喜びもあるし、彼らや彼女たちから得ることもたくさんある。自分が若いときに「そうやってたな」っていうのを思い起こさせてくれる存在でもあるし、みんなで一つの物を作る楽しさ、いろんな考えの人が集まって、様々な生き方をしていて、演劇、芝居に対する考えや思いをそれぞれ持ってる人たちと一緒に作っていく、その”道中”が楽しい。物作りをしているときの会話、また、役にその人となりが出る。火花を散らしながら、最終的に演出家が一つの形に整えて作品に仕上げていく工程がやっぱりたまらない!たまらなく楽しいわけです。だからやってるんだろうなとは思うんです。何もないところから一つの形になるもの、元々物を作ることがすごい好きなんです。だから工業高校に行っていたのかもしれない。形のないものを形にする面白さ、お料理、プラモデル、何かを作って最後の完成形に持っていく感動…多分私がこの仕事をやっている理由は、そこが一番大きいのかな…作りだす喜び、みんなで作って完成したとき、出来上がったときの喜び。あとはいろんな人に会える。いろんな人の考え方とか生きざま、話し合いながら垣間見れる面白さ。

ーー何もないところから…。

剣:誰か1人欠けてもできないし、スタッフさんたちも一緒になって、大人数で一つの作品を作っている。これは創造する芸術なんだろうなって思いながら…古典だったり、新作だったり、種類もたくさんあるし、アプローチの仕方もみんな違う。それでも最後一つの形になって。そして一番大事なことは、やっぱり見てくださるお客様に「観てよかった」「感動した」「面白かった」って言っていただけること。うん。そうなるためにみんなで面白く作るんですね。

ーー8月のコンサートですが、回を重ねていらっしゃいますが、位置付けはライフワーク、今回のコンサート、何か”隠し球”は?

剣:はい、私、自分で言ってるんですけど(笑)、大いなるマンネリです!手紙をモチーフにしたコンサートなので、基本的には、いろんな手紙を探してきて、実際にあった手紙を朗読します。(手紙に関しては)いろんな本が出てるんです。戦争当時のものもあるし、「母へ」とか「父へ」とか「ありがとう」の手紙の本とかたくさんあって、そういうところから選んで、手紙の内容からイメージされる歌と合わせて、お届けします。手紙が10通、曲も10曲、それと頭と真ん中と最後のフィナーレっていう感じで12、13曲を歌います、ただそれだけことなんです。最近はなんでもAI。音楽、曲、歌詞もAIが考える時代、だからこそ直筆で書いた手紙が大事。紙で…鉛筆やペンしか手に入らなかった時代もあるだろうし、また、感謝の言葉を伝えるのに、どの便箋で、どのペンで書こうかって思う…それは大事なこと。こんなに便利な世の中になっても、忘れてはいけないものは絶対にある。早いこと、簡単にできることが良いとされている世の中に逆行します、私は!どこかで制限があってもいいんじゃないかと。便利なことだけがいいというわけではないと思うんです。「不便なこと」の大事さ、今の子供達は不便なことも何もないでしょう。例えば、頑張って何かする、図書館に行って何かを探す…不便ですが、そのプロセスが大事だったことは絶対にある、私は天邪鬼(あまのじゃく)なので(笑)。手紙の大事さを知っていただくために始めたものなんです。いつも歌っている歌が、手紙とコラボレーションさせたときに、全然違う歌に聞こえる、手紙に付随させた曲にすると、こんな歌い方もできるんだなとか、こんな感情でこの歌を歌っていいんだなっていう一つの作品ができるわけです。「この手紙とこの曲」、その組み合わせを続けていくことの大事さ、大切さ。毎回、新しいものを探してくるんですけど、もう20回ぐらいになるでしょうか、本を探すのが本当に大変で(笑)。でも探したら、結構いろいろなものがあるので、今回も新しいところから、と思っています。ちょっとネタバレかもしれませんが、今年は昭和100年、今、若い子たちの間で昭和の歌が流行ってて、見直されている、そういう歌と手紙をコラボさせるのもありかな?と…今、思案中です。

ーー昭和の歌と言っても、たくさんありますし、幅が広いですからね。1960年代と1980年代では全然違う、どんな曲か、どのあたりの時代かはお楽しみに、ということですね。

剣:本当に長い時代なので、たくさんありますし、世代、世相もあると思うので、その時に何があったかという出来事も考え合わせて、探した手紙に合う昭和の歌があればいいなと思って今、絶賛(笑)探し中です。

ーー手紙というのはめちゃくちゃアナログ。

剣:アナログです!実はこの素早い世の中にちょっと嫌悪感を感じています。便利ではありますが、同時に無くしているものが多いなって思います。でも、ついていかないと今は仕事もできない。だから「ここまではやるけど、ここから先はやらない」っていうことを一応、私の中では決めているつもりです。時代に逆行していますし、不便だけど、こんないいことあるよっていうことをコンサートでいつも喋っています。皆さんもそれはわかっていらっしゃるのですが、どうしても便利な方へ行っちゃう、そこもわかるんですけどね。そうでないと今の世の中についていけないかもしれませんが、生きていけないところまでいってはいけないと思う、全部AIが作ったら誰もいらなくなっちゃう。

ーーみんな失業しちゃう…。

剣:何もなくなる、それでいいの?と…だから逆行すべきことが絶対にあると思っています。例えば、昔のレコードがすごく希少になってたり、心の中ではそういうのを大事にしようってみんな思いつつ、どこかで折り合いをつけて今の世の中を生きていかなきゃいけないんだなとは思います。それぞれの線引きがあっていいと思いますが、その「下の方で線を引いている人」に向かって「ついていけないのかよ!?」っていうのは絶対に間違いだと思いますし、あえてそうしている、周りの人もそこはわからなきゃいけないし、それだけがいいことではないって思います。そう思いつつ、この『恋文コンサート』はずっとやっていくべきと、1年に1回は、続けてやっています。

ーーかつては例えば、何か書くにしても、ペン一つとってもメーカーなどにこだわって、それが壊れるとまた同じメーカーのものを買い続ける人がいましたね。

剣:例えば、この人に手紙を書く時に何色のペンにしようか、そのために便箋探しに行ったりとか。後に残るものですし、その人が大事にとっておけるもの。だからこそ、それこそ戦争当時、1ヶ月ぐらいかかって戦地から届いたものは、当時受け取った方々にとってはすごく大事で、トランクにしまっておいて、後に、そういうのが出てきて本になる。それにより、我々の知らない戦争当時のことを知ることができる、それは、絶対に目を背けてはいけないことで、伝えていかなければいけないことだと思っていますので、そういう時代のものは必ず入れるようにしています。

ーー昨年50周年で、今年は51年目。

剣:1年生のつもりで(笑)。

ーーあまり先のお話ではなく、55周年に向けてジャンル問わず、やってみたいことは?お仕事とは関係ないことでも。

剣:自分がやったことがないジャンル、やったことのないことはもう何にでも首突っ込んでいこうとは思ってるんです。あとは、今やってることを元気でしっかりやって体力もちゃんとあって、が目標です。ミュージカルやって、お芝居やって、コンサートやって…、今、やってるいろんなことをそのままずっと続けていけたらいいなと。

ーーお仕事ではないですが、旅行とか…。

剣:旅行は大好きなので、何か見るのも楽しいし、全く行ったことのないところ、異文化、食べたことのないものを食べるとか、絶景を見るとか…体力のある限り、足が動く限りいきたいなと。

ーー最後に読者に向けてメッセージを。

剣:最後まで読んでくださってありがとうございます(笑)。本当に世の中に反発するようなことばかりいいましたけれど、自分が一番大事にしていることを大切に、みんなで明るくいきましょう!!

ーーありがとうございました、公演を楽しみにしています。

概要
『剣幸 kohibumi concert in MUSICASA』
日程・会場:
東京:2025年8月16日 14:00/17:30 代々木上原ムジカーザ
大阪:8月31日 13:00/16:00 逸翁美術館マグノリアホール
出演:剣幸

WEB:https://www.miyuki-tsurugi.jp/index.html

取材:高浩美