チームラボのデジタルアート演出 没入型のオペラ『トゥーランドット』光と色彩の総合芸術、アートで斬新、新しいオペラの形

ジュネーヴで「真の総合芸術」と評された舞台が2月23日、東京で開幕。
チームラボが初めてセノグラフィー(空間演出)を手がけるオペラ『トゥーランドット』新制作の公演が、2月23日から26日まで東京文化会館大ホールにて上演される。

本公演は2022年6月にジュネーヴのジュネーヴ大劇場でワールドプレミエを迎え、「真の総合芸術」、「壮大な視覚体験」などと評され、驚きと賞賛のなか終幕。
演出は、イングリッシュ・ナショナル・オペラ前支配人のダニエル・クレーマー。
チームラボは、クレーマーと共に、彼の『トゥーランドット』解釈とチームラボのアートを融合させるセノグラフィーを構想。構想期間は5年にわたり、コンセプト、新解釈、隠喩、象徴、そして各シーンの視覚的表現をどのように実現するかについてプランニングを重ね、模索。これまでのオペラの概念を超越する没入的なオペラ空間を創出。
チームラボによる立体的な光の彫刻空間とデジタルアートは、ときに熱狂を煽り、ときに繊細な潜在意識をも描き出し、キャストはその空間に没入し、一体に。舞台と観客は境界なく連続し、観客もキャストとともにオペラ空間に没入。
物語の舞台は近未来的なデイストピアのゲームショー。トゥーランドットに求婚する男たちはクイズに参加して負けると「花」をもぎ取られる、という設定。元のオペラもトゥーランドットも謎が解けないと相手が誰であろうと首を切る冷酷な姫。そこに放浪中のカラフがやってきて美しいトゥーランドット姫に恋をし、無謀にも姫の謎に挑戦、そして見事に謎を解いてみせる。頑なな姫はカラフの求婚を拒み、カラフは逆に姫に謎を出す…。

ゴールドに輝く中央にトゥーランドット姫。眩いばかりの光が幻想的。
中央の人物が立体的に浮かび上がる

とにかくチームラボの光のアート、21世紀を実感させる。アートなだけでなく、キャラクターの心などをこれで表現する、斬新かつ前衛的な演出。光の芸術、ガラスやアクリルなどの反射、ありとあらゆる方法を駆使して近未来的な世界を舞台上に創出。コンテンポラリーダンス的コロスの動きが秀逸。2幕は、かの有名なアリア「誰も寝てはならぬ」、荒川静香のイナバウアーで広く知られた楽曲だ。リューの死の場面も視覚的な効果も相まって感動シーン。衣装は、これも近未来的、メイク、特にピン、ポン、パン、ちょっとクラウン的な感じもあり、インパクト大、トゥーランドット姫がラスト、黒い衣装を脱ぐシーンは象徴的だ。
有名すぎるくらいの『トゥーランドット』、演出もさることながら、歌唱、演奏も圧巻。ドラマチックな演奏、指揮はディエゴ・マテウス。演出はダニエル・クレーマー、チームラボとクレーマー、構想期間は5年。ダニエル・クレーマーは「このオペラは巨大だ」と言う。世界的に見ても挑戦的でアート、設定も新しい。今年の最高傑作になることは間違いない。

現代アートな衣装に注目。
没入感を感じる瞬間。
クライマックスの有名なシーン。カラフは自分の名を名乗り…。背景が刻々と変化、色彩が鮮やかかつ華やか。

物語
王朝時代の古代中国・北京。冷酷な心と美貌の持ち主で皇帝の娘であるトゥーランドット姫は、求婚者に結婚の条件として3つの謎をかけるが、これまでは誰一人謎を解くことが出来ず、首を切られてきた。今回ペルシアの王子が月の出とともに処刑されると、群衆の中を広場に引き立てられてくる。その群衆に紛れて、国を追われ放浪中のダッタン国の王子カラフが、その父であり元ダッタン国王ティムールとその女召使いリューに再会する。処刑の様子を見ようと宮殿に現れたトゥーランドット姫を見たカラフは、その美しさに見惚れて求婚を決意し、ティムールとリュー、そしてピン・パン・ポンの3大臣に止められるのも聞かず、トゥーランドットの名を叫びながら銅鑼を叩いて姫の謎に挑戦する。
トゥーランドット姫はその昔に敵に捕らえられ非業の最期を遂げた姫の復讐を果たすため、謎が解けぬ者は命を落とすことになると言い、カラフにも出題してゆくが、カラフは全て解いてみせる。それでもなお求婚を拒む姫に対し、カラフは逆に謎を出す。明朝までに私の名を解き明かせ、それができれば命を捧げると。
求婚者の名を今夜のうちに解き明かすよう姫の命が下る。カラフは夜明けには自分が勝利するだろう〈誰も寝てはならぬ〉と歌う。
3大臣はあの手この手で名前を聞き出そうとするが、カラフは拒絶する。そこへティムールとリューが、求婚者と話をしているのを見たとして連行されてくる。リューはティムールを庇い兵士の拷問を受けるが、口を割ることはなく、〈姫君の氷のような心もやがて溶ける〉と歌い、兵士の剣を奪い取って自殺してしまう。リューの献身的な行動を目の当たりにしたトゥーランドット姫の心はやがて…

概要
日程 会場:2023年2月23日 (木・祝) 〜26日 (日) 東京文化会館
指揮:ディエゴ・マテウス
演出:ダニエル・クレーマー
セノグラフィー、デジタル&ライトアート:チームラボ
ステージデザイン:チームラボアーキテクツ
衣裳デザイン:中野希美江
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
キャスト:
トゥーランドット姫:田崎尚美 土屋優子
皇帝アルトゥム:牧川修一 川上洋司
ティムール:ジョン ハオ 河野鉄平
王子カラフ:樋口達哉 城 宏憲
リュー:竹多倫子 谷原めぐみ
大臣ピン:小林啓倫 大川 博
大臣パン:児玉和弘 大川信之
大臣ポン:新海康仁 市川浩平
役人:増原英也 井上雅人
合唱:二期会合唱団
主催:東京二期会オペラ劇場、 日本演奏連盟

チームラボ公式サイト:https://www.teamlab.art/jp/e/turandot_tokyo/

オペラ『トゥーランドット』東京文化会館 (C) teamLab, Courtesy Daniel Kramer, Tokyo Nikikai Opera Foundation