ロッシーニ『ウィリアム・テル』原語上演国内初 新国立劇場初上演

ロッシーニ最後のオペラにして最大傑作『ウィリアム・テル』(ギヨーム・テル)を新国立劇場初上演。
日本国内での原語(フランス語)・舞台上演は今回が初めて。幻の大作が待望の上演。
『ウィリアム・テル』は伝説の英雄ウィリアム・テル(ギヨーム・テル)をめぐるシラーの戯曲を原作に、ハプスブルク家の圧政下にあった14世紀スイス・アルプス地方の民衆の自由を求める闘いを描く歴史劇。農民たちの苦悩と決起、そして秘められた恋の物語で、上演時間が5時間に及ぶ壮麗なグランド・オペラ(グラントペラ)です。「『ウィリアム・テル』序曲」として老若男女におなじみの序曲、そして弓の名手ウィリアム・テルが息子の頭に載せたりんごを見事に射抜くエピソードはあまりにも有名。オペラ上演史に輝く記念碑的公演はオペラファン、クラシックファン必見。
大野和士芸術監督自らの指揮のもと、ウィリアム・テル役にこの役を得意とするバリトン歌手ゲジム・ミシュケタ、青年アルノルド役に超人的な声で魅了するテノール、ルネ・バルベラ、恋人である皇女マティルドにスター・ソプラノのオルガ・ペレチャッコとベルカントの名手が贅沢に。国内からも妻屋秀和、須藤慎吾、村上敏明、成田博之、そして安井陽子、齊藤純子とオペラ界トップ歌手が勢揃いし、大河ロマンにふさわしい、華やかでダイナミックな舞台を。演出は美しい舞台に定評あるヤニス・コッコス。ロッシーニ最大の傑作『ウィリアム・テル』。ベルカント・オペラの旗手としてヒット作を連発したロッシーニが、フランス風の美しい旋律を追求し、ロマン主義的なグランド・オペラの扉を開いた画期的作品。
舞台となるのは、スイス連邦建国の起源とされる“リュトリの誓い”(1291 年、スイス三原州――ウーリ、シュヴィーツ、ウンターヴァルデンの三州――が相互援助を誓った)の後のウーリ州。ハプスブルク家の圧政に喘ぐスイス・アルプスの民衆の闘いを描き、スイス側の青年アルノルドと支配者側のハプスブルクの皇女マティルドの身分違いの愛をもう一つの軸に、アルプス地方の豊かな自然美が瑞々しい音楽で描かれます。愛国者たちの苦悩と連帯、支配者との衝突と自由の勝利が劇的に語られ、幕切れでは清らかなハープに導かれて自由を謳う崇高な大合唱が響き、血で血を洗う争いの物語が浄化。
上演困難な大作『ウィリアム・テル』の原語(フランス語)での舞台上演は日本では初めて。近年欧米の主要劇場でもフランス語版での重要な上演が続く中、オペラファンとしては絶対に見逃せない上演。

タイトルロールのウィリアム・テルには、2022年『椿姫』で中村恵理と共演し、滋味あふれる表現で感動を呼んだ実力派、ゲジム・ミシュケタが登場。ヴェルディやロッシーニを得意とするバリトン歌手のミシュケタは、イタリア各地でウィリアム・テル役を歌っており、この役に精通したスペシャリスト。青年アルノルドは、破格のロッシーニ・テノール、ルネ・バルベラ。バルベラは2020 年『セビリアの理髪師』、21 年『チェネレントラ』とロッシーニ作品で続けて新国立劇場に出演、超人的な声とテクニックを溌溂と披露し、『チェネレントラ』では連日アリアがアンコールされるほどのショーストッパーぶりを発揮。
アルノルドと恋仲となる皇女マティルド役は、今日のオペラ界屈指のスター、オルガ・ペレチャッコ。新国立劇場へはベルカントの新ウィリアム・テル伝説ウィリアム・テルはスイス建国伝説の英雄。13~14 世紀のウーリ州に住んでいた猟師で、弓の名手。当時強い自治権を持っていたウーリ州の支配を強めるためハスブルク家が派遣した総督がヘルマン・ゲスラー(ジェスレル)で、両者とも架空の人物とみられている。
伝説では、1307年11月18日、総督府のあるアルトドルフで、ウィリアム・テルはゲスラーが掲げた神聖ローマ帝国の象徴の帽子への表敬を拒んだため捕らえられ、群衆の前で「弓の名手ならば息子の頭に載せたりんごを射抜いてみせよ。できなければ死刑」と理不尽な刑を課される。テルは見事に射抜くが、その時矢を2本手にしていたことを見咎められ、「2本目でゲスラーを射るつもりだった」と言ったために投獄される。しかしルツェルン湖を護送される際、舵取りのため縄を解かれた機に岩場に脱出、追ってきたゲスラーを2本目の矢で討ち暗殺を成し遂げた。
この伝説はスイスで建国の象徴として語り継がれるだけなく、世界中で童話や劇の形で親しまれてきた。1804年にはフリードリヒ・フォン・シラーの戯曲が発表され、ロッシーニはシラーの戯曲をもとに 1829 年にオペラを発表した。ロッシーニのオペラはフランス語で書かれ、フランス語表記でギヨーム・テル Guillaume Tellとなっている。
りんごのエピソードはオペラでもハイライトシーンの一つ。息子に矢を向けることをためらうウィリアム・テル(ギヨームテル)は屈辱に耐えジェスレルに命乞いをするが、「お父さんの腕を信じる」と誇り高く身をさらす息子ジェミの姿に逡巡を振り払い、名アリア「じっと動くな」を歌って見事にりんごを射抜き、群衆の歓喜を呼ぶ、劇的なシーンとなる。
総督として強権を振るうジェスレル役には、日本を代表するバス歌手妻屋秀和、総督ジェスレルの命で頭に載せたりんごを父が射抜くエピソードが有名なウィリアム・テルの息子ジェミにソプラノの安井陽子、テルの妻エドヴィージュにはフランス音楽のスペシャリスト齊藤純子が出演。須藤慎吾、成田博之、村上敏明らオペラ界トップ歌手が贅沢にも脇を固め、大河ロマンのような大作歴史劇をダイナミックに織り成す。
指揮は新国立劇場オペラ芸術監督・大野和士。

演出  ヤニス・コッコス より
ロッシーニの『ウィリアム・テル』が今回日本で初めてフランス語版で上演されるということは、大変重要です。この作品は一般的にはあまり上演されてきませんでした。大変な大作で、非常に力のある歌手を必要とします。音楽的にも大変複雑で興味深い作品です。『ウィリアム・テル』は19世紀における、近代性への扉を開く作品なのです。全く新しい音楽的要素の数々をもたらした作品のひとつで、ヴェルディその他多くのオペラ作曲家がこの作品から様々な要素を汲み取り、『ウィリアム・テル』の独創性は長く息づくことになりました。ベルリオーズのような作曲家にも大変重視され、ベルリオーズは『ウィリアム・テル』に関し、注目に値する論考を残しました。この二人の作曲家にはある意味似通うところがあります。『ウィリアム・テル』
の広大さの中に、ベルリオーズの『トロイアの人々』の広大さと共通する何かがあるように思われます。『ウィリアム・テル』はロッシーニが40才にも満たない頃に書かれ、最後のオペラとなりました。追究を推し進め、音楽創作においてこれ以上進めないと感じたロッシーニは、この作品を最後に突然作曲をやめたのでした。
また、音楽的に卓抜した作品であると同時に、現代に通じるテーマが見えるという点でもこの作品は重要です。他国の支配下におかれた国が描かれる点です。ここでは、中世時代のオーストリアが、暴力的な支配をスイスに課しています。そして民衆、特に農民の反乱が起き、人々は暴君を亡き者にします。こうした事柄は、残念なことに永遠に存在するものです。今回の上演では、時代を特定せず、権力問題や、暴力的で不公正な権力に対する反乱という、恒常的に存在する問題のある世界に取り込んで描き出したいと思います。私が作品創りで常に心がけている点でもあるのですが、歴史的・文化的な記憶が、現代の私たちの感性とないまぜになるようにしたい。そして、物語を尊重しつつも、時には裏切ることで、作品に忠実でありながら、こういうことが見えるようにできる、芸術的手段をみつけていければと思います。
指揮の大野和士さんとは既に何度もご一緒したこともあり、私にとって大変大切な音楽家です。またご一緒できるのを心から楽しみにしています。胸躍るようなところもありながら、時に夢想的なこの作品の二面性を、本当に感じさせてくれる音楽家だと思います。
そして前回『夜鳴きうぐいす/イオランタ』で、大変特別な形で協働して以来、私のとても大切なパートナーとなった新国立劇場のスタッフの皆さんと再会するのも楽しみです。作品創りを、現場ではなく、ビデオなどの手段を用いて遠隔で行ったのです。あの演出を通して、ある意味、私たちのつながりはより強固なものになったと思います。直接一緒に仕事をすることの渇望を実感し、それを超えて、最善の形で実現できました。
皆様とまたお会いできることを楽しみにしています。

ウィリアム・テル伝説について
ウィリアム・テルはスイス建国伝説の英雄。13~14 世紀のウーリ州に住んでいた猟師で、弓の名手。当時強い自治権を持っていたウーリ州の支配を強めるためハスブルク家が派遣した総督がヘルマン・ゲスラー(ジェスレル)で、両者とも架空の人物とみられている。
伝説では、1307 年 11 月 18 日、総督府のあるアルトドルフで、ウィリアム・テルはゲスラーが掲げた神聖ローマ帝国の象徴の帽子への表敬を拒んだため捕らえられ、群衆の前で「弓の名手ならば息子の頭に載せたりんごを射抜いてみせよ。できなければ死刑」と理不尽な刑を課される。テルは見事に射抜くが、その時矢を2本手にしていたことを見咎められ、「2本目でゲスラーを射るつもりだった」と言ったために投獄される。しかしルツェルン湖を護送される際、舵取りのため縄を解かれた機に岩場に脱出、追ってきたゲスラーを2本目の矢で討ち暗殺を成し遂げた。
この伝説はスイスで建国の象徴として語り継がれるだけなく、世界中で童話や劇の形で親しまれてきた。1804 年にはフリードリヒ・フォン・シラーの戯曲が発表され、ロッシーニはシラーの戯曲をもとに 1829 年にオペラを発表した。ロッシーニのオペラはフランス語で書かれ、フランス語表記でギヨーム・テル Guillaume Tell となっている。
りんごのエピソードはオペラでもハイライトシーンの一つ。息子に矢を向けることをためらうウィリアム・テル(ギヨーム・テル)は屈辱に耐えジェスレルに命乞いをするが、「お父さんの腕を信じる」と誇り高く身をさらす息子ジェミの姿に逡巡を振り払い、名アリア「じっと動くな」を歌って見事にりんごを射抜き、群衆の歓喜を呼ぶ、劇的なシーンとなる。

概要

情報WEB:https://www.nntt.jac.go.jp/ticket/set-ticket/2425_season_opera/lineup.html