台湾の国宝級看板絵師の「仕事」を追ったドキュメンタリー「顔さんの仕事 」 初日舞台挨拶 三留まゆみ 柏豪 今関あきよし監督

台湾の映画館「全美戯院」の前に飾る絵看板を50年以上にわたって描き続ける 看板絵師 顔振発(イェン・ヂェンファ)さんに密着した貴重なドキュメンタリー映画「顔さんの仕事 」が、8月31日に新宿K’s cinemaで初日を迎えた。

※追記 :新宿K’s cinemaでの上映、好評につき9月13日までの続映が決定した。

映画看板以外にも「Gucci」の巨大アートウォールやロックバンド「コールドプレイ」の宣伝壁画など、 多岐にわたる制作を行ってきた顔(イェン)さんが生み出す奇跡の仕事、 そして生涯にわたる制作の影響で、右目の視力を失いつつもなお描き続ける創作の源泉を、インタビュアーとして観客をナビゲートするのはイラストレイターで、今関監督とは8mm映画時代からの盟友でもある三留まゆみ。そして通訳として、台湾の俳優・柏豪も参加。今関あきよし監督作品。

8月31日、上映初日を迎えた新宿 k`s cinemaでトークイベントが行われた。登壇は、インタビュアーとして取材したイラストライター 三留まゆみ、通訳を務めた台湾の俳優・柏豪、 今関あきよし監督。 なお、k`s cinemaでは連日上映後にトーク開催。

初日 トークイベントより

MC:ドキュメンタリーを今関監督が撮るのは、珍しいと思う方も多いと思いますが__

今関:僕は劇映画が多いんですけどドキュメンタリーは、黒澤明さんの「Dreams -夢-」のメイキングや、大林宣彦監督と一緒にロシアで撮ったドキュメンタリーなどありまして、僕の中ではドキュメンタリーってそんなに違和感なく撮影してます。「恋恋豆花」という台湾で有名なスィーツと同名の映画をモトーラ世理奈さん主演で撮ってまして、その時には家さんのことは知っていました。すぐにドキュメンタリーを撮ろうという感じではなくて何度か舞台となるこの映画館〈全美戯院〉に行っていて、会うときにお話できないと困るので、本当は俳優なのに申し訳ないが、通訳として(柏)豪くんに台北から台南まで来てもらって、一緒に行ってに描いているところを見に行ったりはしていました。僕はい前に台南に観光しに行った時に、初めて顔さんぽ会話したのが、今関監督と一緒に行った2020年の1月でした。まだ映画撮るって決めてなかったから、ご挨拶ぐらいでしたね。絵を描いているとところを、ちょっと見させていただいたのが最初の出会い。MC:通常のドキュメンタリーとは違う、三留さんの旅行番組みたいな雰囲気のこのスタイルでいく経緯は__?

今関:僕の昔からのファンの方たちは三留まゆみちゃんと僕のことは、分かると思うんですけど、三留まゆみちゃんがまだ17歳の頃に僕は最初に出会っていて、僕はまだ学生時代に8ミリ映画を撮ってる時の最初のヒロインなんですね。その後にまゆみちゃんは映画評論家とか映画に関するイラストを書くようになって、久々にヒロインとして、やってみてくれないか、同じ映画の絵を書く人として見てほしいし、会ってほしい人だったので、顔さんの描くものに関しても、もうある程度わかるだろうと、急に声を掛けてしまった訳です。 三留:本当にびっくりびっくり、もう何十年ぶりの今関映画で、どんなものができるのかなと思って、でも最初に試写で作品見たら、顔さんよりも私が写ってるじゃんみたいな感じで、だから今日来られた方は映画看板師の顔さんの映画を見に来たら、何か知らない女が写ってる、、、たくさん (笑)

今関:いやあ、だって顔さん寡黙で、すごい集中力。朝の8時半か9時ぐらいから、12時1時ぐらいまで、全く休憩なく水分も取らず、あの熱い台南の中で、僕らがお茶とか水とか持ってっても「ありがとう置いてってね。」と、僕らはねもうね暑いんで1日12リットルぐらい水飲んでたよね。

三留;でも昼間しかね、日が差し込まない時間帯だけしか描かない、、、

今関:そう映画を観ると分かる通り、看板を描くのは(映画館のある商店街の)アーケードの中、、、映画館の向かいで描いている。午前中いっぱいはそのアーケードで日が当たらないんですけど、午後からは日が差して来て非常に暑くでなる、、、

三留:そう、お昼までがお仕事。顔さんはゼロから(一つ前野上映作品の)「スパイダーマン」を描いていた看板に、(次回作の)「スラムダンク」(の看板)を描いていく、最初のアタリを付けるところから、全部を私たちに見せてくれました。

今関:豪くんもあぁやって(看板を)描くのを見るのは初めてだと思うんで、びっくりしたよね。

柏:最初びっくりしましたね。顔さんは、本当に最初から看板を描いていくプロセスを全部を見せてくれてましたので、本当に大切な経験でした。

今関:僕らも別に「スラムダンク」が書いてるところを狙って行った訳でなくて、偶然「スラムダンク」だったんですけど、最初から最後まで描いている間は、ずっと居ようと、こういうキュメンタリーだと、描いていてるのちょっと撮って、間があいて、また行って撮るっ感じだけど、ずっとベタでいて撮影していましたね。 三留:本当にもう、次から次へと驚きの連続で、看板画というのは、私たちの世代の子どもの頃は、町中に映画看板がありましたよね。新宿駅にも東口に幾つもの看板が掲げてあったり、映画館にもそれぞれ看板があったし、、、でも、気がついたら映画がシネコンで上映される様になって、看板がかかる映画館がなくなってしまった。台湾もそんな状況なんですって。でも、その看板をゼロから最後まで描くのを見ることが出来てもう本当に、一日中ここに居たい、そんな気持ちでした。ありとあらゆるものを顔さんは全部見せてくれたんですね。

今関:圧倒的でしたね。僕も昭和世代なので、ギリギリ映画看板の世界も見てますけど、ぜひ若い方も見てほしいし、また、昔を知ってる方には、こうやって描いてたんだってというのを感じてもらえればと思ったりもしました。 MC:三留さんが看板のお手伝いをするシーンが、、、

三留:顔さんは、たくさんはない色の研究をして、色を混ぜて、ありとあらゆる色を作る。そんなに種類のない筆で、ありとあらゆる線を引く、色を塗る。で、いきなり筆を持たされて、描けと言われても、もうおそるおそる、、、こんな感じで、、、と描いていると、顔さんが後ろから「いや、もっと大胆に!」「いや違う!それは違う! この色を混ぜるんだ!!」みたいな感じで、優しく指導して下さって 笑。でも、出来上がった時に、ほんの小さなスペースなんだけれども、ここを塗ったんですみたいな、、、

今関:腕の筋肉の一部をね。

三留:今回見てくださってわかったと思うんですけれども、(看板の)1枚のパネルがものすごく大きい。それを6枚組た合わせて1枚の(看板)画になる。でも、ありとあらゆる角度で筆が運べちゃう。私なんか、小さな絵でも、ぐるぐる回しながら描くんですが、顔さんは、迷いもなく、変幻自在ですね。 

プレミア上映の看板の前で
自分の映画の看板を描く顔さん

今関:この映画、去年撮影して今年完成したんですけど、舞台となったこの映画館で、この映画を上映してくれたんですよ。この映画のパンフレットの表紙にある絵は、顔さんが描いた「家さんの看板」なんです。顔さんが自分を映画という史上初のことをやってます。もっといい顔にするかなと思ったんですが、意外とリアルに普通に書いてて淡々と書いてて、この下の日本語の文字も全部顔さんによるものです。その台南での上演の時も、お客さんのいっぱいっぱいの中で、顔さんの隣でまゆみちゃんは一緒に見たんだよね。

三留:この 6月の終わりに台南の〈全美戯院〉でプレミア上映をすることができました。そして顔さんと並んで、私は映画を観れました。顔さんは、ありとあらゆるシーンで本当笑ったり、ちょっと照れたり、本当に素敵な反応してくれて、映画を見てるよりも、もしかしたら顔さんの横顔を見てたんじゃないかなって(笑)。

今関:台南で、お客さんが一番笑ったシーンは、一番気に入っ絵は何ですか?の質問に答えた時だね。

プレミア上映の様子

三留:顔さんは全く迷うことなく「全部」いやぁ、これが顔さんですよね本当にね。私達はずっと顔さんと一緒にいることができて、その仕事を見ることができて、そして本当に素晴らしい形で、プレミア上映を満員の映画館で一緒に観ることができました。

今関:プレミア上映は、地元の顔さんのファンの方もいるので、おじいちゃんから子供まで年齢層がすごく幅広く、いっぱい集まってくれたのもあってね、非常に暖かい空気感の中で上映ができました。豪くんは台湾の人として顔さんの仕事ぶり見て、感じたこととか感動したことは?

柏:この数年で、〈全美戯院〉と顔さんは有名になってきています。実際に顔さんの作業を見ることは午前中しか仕事しないので、なかなか見れないですね。そして僕にとって一番感動したのは、顔さんが看板絵師になってからずっと映画の看板を描いてきていて、やっとこの映画で、自分の映画の看板を描くことができて、それはとても嬉しいと感じました。 今関:これだけ映画の看板を18歳から映画看板を描いてきて、今まで映画祭で賞を取ったことがないんですね。それが、今年初めて賞を取ったんだよね。

杉山(MC):台北電影賞で、特別貢献賞を今年、顔さんが受賞されました。

三留:そのときに受賞のニュースで聞いた顔さんが、「これで自分も映画の制作の仲間、一員であるってことを確認しました」って、、、

今関:やっとね、映画スタッフの仲間入りしたような気持ちだっておっしゃってて、すごくジーンときましたね。

三留:映画の中で顔さんが、映画の最盛期には月に100枚200枚の看板画を書いていて、でもそのほとんどは残らない。でもそういうものだよってね、顔さんが言うんですよ。看板は場所も取るし、看板のパネルも安いものじゃないから、だから、顔さんの仕事場にはいくつものパネルが重ねてあるんですけど、この看板の下に一体どれだけの映画があるんだろうと思いました。 

なお、同じ今関監督による映画「しまねこ」が同劇場にて9月7日より上映となる。

概要
企画 / 制作 / 監督:今関あきよし
出演:顔振発 三留まゆみ  柏豪
撮影:三本木久城 録音・音楽:種子田博邦 制作:太田則子 / 杉山亮一 編集:鈴木理 編集助手:三宅優里奈 台湾地図挿絵・題字:ヤマサキタツヤ 協力:全美戯院 / 日本台灣新聞社 / 台湾師範大学 / Chingwen Hsueh / 国立音楽大学/ 山本周史
配給:MAP|配給協力:ミカタ・エンタテインメント
製作:映画「顔さんの仕事」製作委員会
2024/日本/カラー/64分/16:9

©︎映画「顔さんの仕事」製作委員会

公開情報
東京:新宿 K’scinema 8/31(土)-9/6(金)
   ※追記 :新宿K’s cinemaでの上映、好評につき9月13日までの続映が決定
栃木:小山シネマロブレ 11/1(金)-
栃木:宇都宮ヒカリ座 12/13(金)-
愛知:シネマスコーレ 近日公開
長野:長野ロキシー 近日公開
大阪:シアターセブン 近日公開
和歌山:シネマ203 近日公開
秋田:御成座 近日公開
公式HP :https://mikata-ent.com/movie/1858

公式X: https://x.com/imazekifilm2024