能登半島地震豪雨被災地での上映会で「頑張る力が湧く」「笑顔に」。ヤングケアラー、保護猫の映画「猫と私と、もう 1人のネコ」。

社会問題となっているヤングケアラーや保護猫活動の実態が描かれた映画「猫と私と、もう1人のネコ」が24年11月23日、能登半島地震の被災地石川県能登町の仮設住宅集会所で上映され、鑑賞した約40人の住民からは「頑張る力が湧く」「笑顔になれた」などの反響があった。同日には能登町役場、24日には被災時に一時避難所として使われた同町立小木中学校と柳田小学校の体育館でも上映会があり、4か所合計130人以上が鑑賞した。

同作は、ヤングケアラー問題に取り組む集いや広く福祉の問題を考える会合など様々な場で上映会が相次いでおり、全国に感動の輪を広げている。

能登町の仮設住宅集会所で行われた上映会に集まったのは、子どもたち含め約40人。上映会で舞台挨拶を行なった祝大輔監督によれば、「久しぶりに綺麗な涙流した」との感想もあったという。祝監督は「豪雨の爪痕も残るなか、開催を迷ったのですが、上映して良かったです」と話している。

能登町の仮設住宅集会所で行われた上映会

吉名莉瑠が演じる女子高生の主人公が、家族間のすれ違いや、一青窈(ひととよう)演じる母の介護と進学への悩みを抱え、心身共に追い詰められていく。そんな中で、野良猫を救うことをきっかけに家族や学校以外の社会と関わっていく。

小木中学校で行われた上映会

仮設住宅集会所での鑑賞後に行われたアンケート調査で、日常が突然崩れる事態が、「誰にも、ありえる話だと思う」とのコメントも書かれていた。また、ある女性は、「私も母がケガをして寝ていて、自分が家事をしたこともあります」と書いていた。また、自分が実際に飼っている猫のことや、震災で行方不明になった猫をソーシャルメディアを使って探している人がいる、といったエピソードを書いた人もいた。

本来大人が担うようなケアの責任を引き受け、家事や家族の世話、感情面のサポートなどを日常的に行っている未成年者が、一般的にヤングケアラーと呼ばれている。子どもが家事を手伝ったり、家族の世話をすることはごく普通のことだが、問題なのは、子どもができる範囲を超えて、心身に大きな負担がかかっていることだ。

小木中学校での上映会の後、猫のポーズをする住民たち

本来ならあったはずの勉強に励む時間、部活に打ち込む時間、将来に思いを巡らせる時間とひき換えに家事や家族の世話をしている。問題をどう伝えたらよいか、誰に伝えたらよいのかを悩む子どもたちもたくさんいる。そうした問題について、「ひとりぼっちの世界は作ってはならない」と訴え、「理解し合える人間関係を作り、助け合うつながりが大切」と書いた参加者もいた。また、「自分ひとりじゃなかなか前向きになる事はむずかしい」が、「まわりの人たちといろんな話をして、すこしづつ気持ちを変え」て、「ピンチをチャンスに変えられたらよい」という声もあった。

能登半島では、地震に続き、豪雨災害もあった。小木中学校での上映会では、「今日まで惨事が続き、泣いてる暇がなかった」が、映画を見て「思いっきり涙を流し、泣けた。ありがとう」という趣旨の感想もあったという。

地震の被災地で、様々な問題に直面している人々が、映画「猫と私と、もう1人のネコ」を鑑賞したのがきっかけで、問題解決の糸口をつかんだり、笑顔になったり、元気づけられたりしている様子が、アンケート結果などからうかがえた。

映画 予告編

上映予定
●2/22(土) 13:30〜 福岡市男女共同参画推進センター・アミカス ホール ※監督×脚本家 阿久根知昭トークショー 主催:福岡市人権啓発センターココロン映画会
●3/8(土)〜14(金) 萩ツインシネマ ※3/8(土) 9(日)舞台挨拶
●3/14(金) 13:00〜 上映&トークセッション@兵庫県看護協会ハーモニーホール 主催:兵庫県福祉部地域福祉課
●3/26(水)13:30〜 予定 主催:中野区 地域包括支援センター[アラジン]
●8/17(日)12:00〜 上映&トークショー 小田原市 三の丸ホール 小ホール


監督:祝大輔
出演:吉名莉瑠, 一青窈, 津田寛治, 市川右若, 市川新八, 大國千緒奈, 坪内陽子, 福田サン, 白川雄也, 塩田みう, 松浦弘歩, 樋口千颯 ほか

映画「猫と私と、もう1人のネコ」ポスター (C)2024「猫と私と、もう1人のネコ」製作委員会

作品公式WEB:https://neko.nyanta.jp/

©2024 「猫と私と、もう1人のネコ」製作委員会.