新国立劇場バレエ&ダンス 2025/2026 ラインアップ発表会レポ

新国立劇場バレエ&ダンスの2025/2026のラインアップ発表会が行われた。登壇したのは芸術監督の吉田都。
ダンサーたちがこれまでとは違った自分を見つけて、個性を解き放てるようになることを2025/2026シーズンでの目標とするとのこと。
新制作は3作品。年末年始上演の『くるみ割り人形』今回は2022年に『マクベス』を振り付けたウィル・タケットが振付を担うとのこと。新たな冬の定番として心躍る作品に。二つ目はトリプル・ビル「バレエ・コフレ」で上演するハンス・ファン・マーネンの「ファイヴ・タンゴ」で、この作品は吉田監督が就任1年目に予定していたのだが、叶わず、今回満を持しての上演となる。ピアソラのタンゴとバレエの融合、まさに”大人のバレエ”となる。3つ目はダブル・ヒルで世界初演の宝満直也の新作、元々は新国立劇場バレエ団のダンサー、今は振付家として活躍、10年ぶりの上演となるジェシカ・ラング『暗やみから解き放たれて』と同時上演となる。

シーズン開幕を飾るのはレパートリー作品の「シンデレラ」、2022年にも新国立劇場バレエ団で上演。「来シーズンでは、新しいメンバーにも是非、アシュトンの作品を経験してもらいたい」と語る。

「シンデレラ」photo by Hidemi Seto

そして12月には日本初演、伊藤郁女の「ロボット、私の永遠の愛」。「『ロボット、私の永遠の愛』は彼女の自伝的作品。私も生で拝見するのは今回が初めて」と吉田芸術監督自身もかなり楽しみな様子。

年末年始はウィル・タケットの振付で新制作の「くるみ割り人形」。「ウィルさんには『家族みんなで楽しめるような、明るく楽しいカラフルな作品にしてください』とお願いしています。彼も『楽しい夢のような作品にしたい』と…」とのこと。「くるみ割り人形」はこの時期の定番演目であるが、質疑応答の際に新制作の意義を問われて「リフレッシュしたい」とのこと。また、「純粋なお菓子の国として構成」とのことで、「これまでカットしていたチャイコフスキーの曲を入れると聞いてます」だそう。

2026年の年明け、2月は「『バレエ・コフレ2026』A Million Kisses to my Skin / ファイヴ・タンゴ〈新制作〉/ 「テーマとヴァリエーション」。デヴィッド・ドウソン振付の「A Million Kisses to my Skin」、ハンス・ファン・マーネン振付の「ファイヴ・タンゴ」、そしてジョージ・バランシン振付の「テーマとヴァリエーション」。「ファイヴ・タンゴ」は新制作、「A Million Kisses to my Skin」はデヴィッド・ドウソンが来日し、直接指導するとのこと。「ファイヴ・タンゴ」のハンス・ファン・マーネンは高齢(93歳)故に来日は叶わず、「日本はちょっと遠いな」とのこと(笑)。

「「A Million Kisses to my Skin」
「テーマとヴァリエーション」Theme and Variations, Choreography by George Balanchine, © The George Balanchine Trust.
撮影:鹿摩隆司
「テーマとヴァリエーション」Theme and Variations, Choreography by George Balanchine, © The George Balanchine Trust.
撮影:鹿摩隆司

2026年3月は前回公演がコロナ禍のために期間半ばで中止になった「マノン」、今回は特別に衣装・セットをロイヤル・バレエ団から一式借りるとのこと。実は痛みのことを考えて貸し出しは難しいとされているが、貴重なもの、ここも見どころとなる。

「マノン」photo by Hidemi Seto
「マノン』photo by Hidemi Seto

3月上演の「フレンズ・オブ・フォーサイス」は、ウィリアム・フォーサイスが新進気鋭のアーティストと協働するショーケース作品で、日本初演となる。この演目について吉田は「違うジャンルのダンサーたちが、異なる身体を通じてお互いを受け入れ、いかに進化させていけるかという、実験的なショーケースになりそうです」と期待を寄せた。

「フレンズ・オブ・フォーサイス」(c)Bernadette Fink

3月末には「フレンズ・オブ・フォーサイス」。ウィリアム・フォーサイスが新進気鋭のアーティストと協働し、ダンス文化の多様性と奥深さを称える作品。フォークダンス、ヒップホップ、バレエなどの異なるスタイルを通じて、ダンスの類似点や相違点を探求し、進化の可能性を表現。「実験的なショーケースになりそう」と吉田監督。

4月は牧阿佐美演出・改訂振付の「ライモンダ」。この作品「実はロンドンに持って行きたかった」とコメント。プティパの最後の傑作とされる古典バレエ、新国立劇場では2004年に初演。牧阿佐美の振付と演出、ルイザ・スピナテッリの衣裳・装置が高く評価され、朝日舞台芸術賞を受賞している。グラズノフの音楽に合わせたヒロインのライモンダのヴァリエーションや夢の場の群舞、民族舞踊など煌めく踊りの数々は必見、バレエの美しさが堪能できる演目。

「ライモンダ」photo by Kiyonori Hasegawa

6月は「白鳥の湖」が上演されるが、その前の5月6日、ゴールデンウィークにエデュケーショナル・プログラム「白鳥の湖」が開催される。このエデュケーショナル・プログラムは昨年、初めて試みた企画。子供だけでなく、バレエに触れたことのない大人にも向けた参加型プログラム。1日だけの実施なので貴重な機会となる。

「白鳥の湖」photo by Takashi Shikama
「白鳥の湖」photo by Takashi Shikama

7月は新国立劇場バレエ団出身の宝満直也振付による「ストリング・サーガ(仮題)」、ジェシカ・ラング振付「暗やみから解き放たれて」。
「ストリング・サーガ(仮題)」、音楽は久石譲。世界中で活躍が目覚ましいジェシカ・ラングによる「暗やみから解き放たれて」は現代的なセンスが光る作品、こちらは2014年に新国立劇場にて世界初演の演目。

「暗やみから解き放たれて」photo byTakashi Shikama
「暗やみから解き放たれて」photo by Takashi Shikama

7月、学校の夏休み期間、こどものためのバレエ劇場 2024「人魚姫~ある少女の物語~」が上演。演出・振付は貝川鐵夫、2022年まで新国立劇場バレエ団でダンサーとして活躍、2024年に世界初演の作品、好評につき、再び”登板”。人魚姫の切ないラブストーリーが展開、親子で夏休みの思い出作りにもってこいの演目。人魚姫の王子への片想い、よく知られている物語、上演時間は、休憩を入れて二時間弱程度と子供にも観やすい上演時間となっている。

シーズンの公演数はバレエが6演目、ダンスが3演目とコロナ禍前の水準に戻る。海外からのゲストも増えているそう。「もっと新しいことにチャレンジできると思います」と吉田監督。
『ダンサーたちがこれまでとは違った自分を見つけて、個性を解き放てるようになること』がこのシーズンの目標ということだが、「ここで成長して次につなげることをとても楽しみにしています」とコメント。舞台芸術のレベルアップが楽しみな2025/2026シーズンとなるであろう。

概要
新国立劇場 2025 / 2026シーズン バレエ&ダンスラインアップ

新国立劇場バレエ団「シンデレラ」
2025年10月17日(金)~26日(日)
東京都 新国立劇場 オペラパレス
※北海道公演あり。

振付:フレデリック・アシュトン
監修・演出:ウェンディ・エリス・サムス、マリン・ソワーズ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
指揮:マルク・ルロワ=カラタユード、冨田実里
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

伊藤郁女「ロボット、私の永遠の愛」
2025年12月5日(金)~7日(日)
新国立劇場 小劇場

演出・振付・テキスト:伊藤郁女
音楽:ジョアン・カンボン
出演:伊藤郁女

新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形〈新制作〉」
2025年12月19日(金)~2026年1月4日(日)
東京都 新国立劇場 オペラパレス

振付:ウィル・タケット(レフ・イワーノフ原振付による)
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
指揮:マーティン・イェーツ、冨田実里
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

新国立劇場バレエ団「『バレエ・コフレ2026』A Million Kisses to my Skin / ファイヴ・タンゴ〈新制作〉/ テーマとヴァリエーション」
2026年2月6日(金)~8日(日)
東京都 新国立劇場 オペラパレス

指揮:冨田実里
管弦楽:東京交響楽団

「A Million Kisses to my Skin」
振付:デヴィッド・ドウソン
音楽:ヨハン・ゼバスティアン・バッハ

「ファイヴ・タンゴ」
振付:ハンス・ファン・マーネン
音楽:アストル・ピアソラ

「テーマとヴァリエーション」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

新国立劇場バレエ団「マノン」
2026年3月19日(木)~22日(日)
東京都 新国立劇場 オペラパレス

振付:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ
指揮:マーティン・イェーツ
管弦楽:東京交響楽団

「フレンズ・オブ・フォーサイス〈日本初演〉」
2026年3月25日(水)~29日(日)
新国立劇場 小劇場

企画:ウィリアム・フォーサイス、ラフ・“ラバーレッグズ”・ヤシット
振付:ウィリアム・フォーサイス、ラフ・“ラバーレッグズ”・ヤシット、レックス・イシモト、ライリー・ワッツ、ブリゲル・ジョカ、JAコレクティブ(エイダン・カーベリー、ジョーダン・ジョンソン)
出演:ラフ・“ラバーレッグズ”・ヤシット、レックス・イシモト、ライリー・ワッツ、ブリゲル・ジョカ、エイダン・カーベリー、ジョーダン・ジョンソン

新国立劇場バレエ団「ライモンダ」
2026年4月25日(土)~5月3日(日・祝)
東京都 新国立劇場 オペラパレス

振付:マリウス・プティパ
演出・改訂振付:牧阿佐美
音楽:アレクサンドル・スピナテッリ
指揮:冨田実里
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

こどものためのバレエ劇場2026 エデュケーショナル・プログラム「白鳥の湖」
2026年5月6日(水・祝)
東京都 新国立劇場 オペラパレス

プロダクション原案:マリオン・テイト

新国立劇場バレエ団「白鳥の湖」
2026年6月5日(金)~14日(日)
東京都 新国立劇場 オペラパレス

振付:マリウス・プティパ、レフ・イワーノフ、ピーター・ライト
演出:ピーター・ライト、ガリーナ・サムソワ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
指揮:冨田実里 ほか
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

新国立劇場バレエ団 ダブル・ビル「ストリング・サーガ(仮題)〈新国立劇場バレエ団委嘱作品・世界初演〉/ 暗やみから解き放たれて」
2026年7月3日(金)~5日(日)
東京都 新国立劇場 中劇場

「ストリング・サーガ(仮題)」
振付:宝満直也
音楽:久石譲

「暗やみから解き放たれて」
振付:ジェシカ・ラング
音楽:オーラヴル・アルナルズ、ニルス・フラーム、ジョン・メトカーフ

こどものためのバレエ劇場 2024「人魚姫~ある少女の物語~」
2026年7月23日(木)~27日(月)
東京都 新国立劇場 オペラパレス

演出・振付:貝川鐵夫
音楽:C.ドビュッシー、J.マスネ ほか

公式サイト:https://www.nntt.jac.go.jp