三島由紀夫の人生と作品がバレエに モーリス・ベジャール振付『M』9月上演

戦後日本を代表する作家、三島由紀夫の人生とその作品が、20 世紀バレエ界の巨匠モーリス・ベジャールの演出振付によってバレエになった。ベジャールは 1986 年東京バレエ団のために歌舞伎の仮名手本忠臣蔵をバレエ化した「ザ・カブキ」を創り、バレエの世界を超えて世間の耳目を集めた。続いて 1993 年には三島由紀夫という破天荒なテーマに挑み、東京バレエ団のために『M』を創った。『M』は Mishima の頭文字であるとともに、海(Mer)、変容(Métamorphose)、死(Mort)、神秘(Mystère)、神話(Mythologie)といった三島の人生の表象でもある。ベジャールの傑作の一つ『バレエ・フォー・ライフ』は、いずれも 45 歳で夭折した QUEEN のフレディ・マーキュリーとベジャールの愛弟子ジョルジュ・ドンに捧げられているが、『M』はベジャールよりも 2 歳年上で、同じく 45 歳で自裁した三島に献じられている。
本作には「潮騒」や「金閣寺」、「鏡子の家」「鹿鳴館」、「午後の曳航」の三島の代表作のイメージが次々に現れるから、三島文学のファンも必見だ。
本作は日本国内のみならず、海外でもパリ・オペラ座やミラノ・スカラ座、ベルリン・ドイツ・オペラなどヨーロッパの名立たる劇場で上演され喝采を浴びてきた。このような独創的な作品が創れるのは、ベジャールをおいて他にいない。三島由紀夫生誕100年は昭和100年でもある。
そして、ベジャールも 2027 年の生誕 100 年に向けて世界各地で再評価の動きが盛んだ。
『M』の初演を観た文芸評論家の故奥野健男は、「ぼくはホール全体に三島由紀夫の魂がいきいきと蘇るのを、この目で、この耳で確かめた」と評した。生誕 100 年を機に 5 年ぶりに再演する今回の『M』によって、現代の観客にも三島の魂にふれてもらいたい。昭和の熱気を感じてほしい。三島はベジャールの『M』に乗って還ってくる。

<過去公演より>

撮影:Kiyonori Hasegawa

概要
日程
2025年9月20日(土) 14:00、9月21日(日) 14:00、9月23日(火祝) 13:00

主な配役
Ⅰ—イチ:柄本 弾 Ⅱ—ニ:宮川 新大 Ⅲ—サン:生方 隆之介 Ⅳ—シ(死):池本 祥真
聖セバスチャン:樋口 祐輝/大塚 卓 女:上野 水香/伝田 陽美 海上の月:金子 仁美/長谷川 琴音
ヴァイオレット:伝田 陽美/榊 優美枝 オレンジ:沖 香菜子/三雲 友里加 ローズ:政本 絵美/二瓶 加奈子

会場:東京文化会館 (上野)
ピアノ:菊池 洋子
※上演時間 約1時間40分(休憩なし)
※音楽はピアノの生演奏、および特別録音による音源を使用します。

公式サイト:https://www.nbs.or.jp