映画「また逢いましょう」 西田宣善監督 インタビュー ⟪介護施設を舞台に人間模様を通じて生と死の関係を深く そして温かく描く⟫

映画「また逢いましょう」が、7月18日より京都・アップリンク京都、大阪・シネヌーヴォ、7月19日より東京新宿・ K‘s cinemaで上映が始まり、全国スクリーンへ上映の広がりを見せている。

「また逢いましょう」は、介護施設ハレルヤを舞台に人間模様を通じて生と死の関係を深く、そして温かく描いた映画作品。
原案は、京都でデイケア施設「ナイスデイ」を運営する伊藤芳宏の著書「生の希望 死の輝き 人間の在り方をひも解く」(幻冬舎刊)。利用者のライフストーリーの聞き取りを治癒に活かすその独自の取り組みで、介護業界を越えた大きな反響を呼んでいる。監督は、京都と東京を拠点に映画のプロデュースを続け、2019年に京都の路面電車”嵐電“沿線を舞台にした映画『嵐電』では、高い評価を受けた西田宣善の初の劇場映画監督作品。脚本は、『夜明けまでバス停で』でキネマ旬報脚本賞、『「桐島です」』が上映中の梶原阿貴。

主人公の漫画家・夏川優希を演じるのは主演作『STRANGERS』『初級演技レッスン』などの映画や舞台で注目度上昇中の大西礼芳。優希の父で、頸髄損傷で生活の自由を奪われた絶望と闘う宏司を演じるのは伊藤洋三郎。施設で明るく奮闘するベテラン職員・洋子役は中島ひろ子。利用者と職員どちらも仲間として信頼の目で見つめる所長役は田山涼成。そのほかカトウシンスケ、筒井真理子、田中要次、梅沢昌代などが出演。

予告編

映画「また逢いましょう」の西田宣善監督にお話を伺うことができた。この映画のプロデュース、そして監督も担って完成させた。企画の始まりや完成までの道のりなどを語っていただいた。

――この映画の企画は、どこから生まれたのですか?――

西田監督:京都市右京区太秦の近く常盤でデイサービスを経営されている伊藤芳宏先生から、自分の活動について映像にしてほしいという要望をいただきました。伊藤先生は「生の希望 死の輝き 人間の在り方を紐解く」(幻冬舎)という本を出されていて、それを参考にしてほしいということでした。最初はyoutube上げる短編を何本か作るという企画でしたが、私は長編の劇場映画にした方がむしろ多くの人に見てもらえると主張して、それを通させていただき、プロデューサーとして企画を始めました。

梶原(阿貴)さんとお会いする機会があり、主演が大西礼芳さんであることに興味を持たれて、伊藤先生の著書を読んで感銘を受けられたので脚本を書いてもらいました。3週間ほどで初稿が届きました。それが、とても面白かったです。

映画の納期も撮影のスケジュールも決まってましたが、監督が決まらないままでいっそ自分で監督することを思い立ち、梶原さんも受け入れてくれて、撮影の準備となりました。ただ、新人監督だからと梶原さんが心配してくれて監督補教え子の鈴木(農史)さんを用意してくれたり、キャスティングもスタッフィングも梶原さんと一緒に進めていきました

――映画の撮影や出演の方について伺いたいのですが……――

西田監督:大西礼芳さんは、企画プロデュースした「嵐電」にヒロイン役で出演されていまして、彼女の演技に大変感銘を受けました。主演は彼女でと最初から考えていて、脚本進めている内に梶原さんが彼女の特性を取り入れて、膨らんでいきました。

――施設で大西さんがピアノを弾きながら♪みんなしぬ♪と歌い、また、大西さんと中島さんが一緒に唄いますよねーー

西田監督:♪みんなしぬ♪ってね、梶原さんが作詞もしていて、大西さんがピアノも弾いて、漫画も描いて、彼女はいろんなことができる。漫画家の設定は大西さんが漫画家志望でもあったことから、梶原さんが当て書きしました。俳優が漫画家役で実際に漫画を描くなんて普通ないですよね。漫画家が協力したり美術スタッフが描きますそれを全て大西さん自身が描きました。漫画も演出部と美術と大西さんで、どんな漫画にするか打ち合わせをして、また、譜読みしてピアノを演奏し、哲学者ハイデガーも事前に本を読むなど、大西さんには準備に時間を掛けてもらいました。

中島ひろ子さんとても明るくて、それは通りでもあるのですが、現場でのムードメーカーでした。カトウシンスケさん、田中要次さん、筒井真理子さんなどは、今までのプロデュース作などで知っている役者さんで、彼らを中心にキャスティングしてきました。 施設の所長役にキャスティングした田山(涼成)さんのニコニコした、優しい感じというのは良かったですね。こうしたインディペンデント映画への出演は珍しく、面白いキャスティングだったかもしれません。

――ロケーションは京都でーー

西田監督:はじめは東京後半は京都で、合わせて10日です。介護施設ハレルヤの撮影は、東京の杉並ある施設をお借りしました。その施設にはグランドピアノある100名収容の大きなホールがあって、そこでロケーションができました。新人監督ですから、撮影の進め方には難しいところがありました。例えばホールの撮影で、スペースが広いので役者さんをどの位置で芝居をしてもらうかが難物で、撮影前日に演出部細かく打ち合わせして望みました。撮影監督の藍河兼一さん前からプロデュース作品や監督した短編など仕事をしていコミュニケーションが取りやすく、うまく進められました。京都は右京区、実家の回りでの撮影す。見知った風景ばかりを撮りたい訳ではいのですが、それを撮るのには肯定的なです。「嵐電」もそう好きで撮っている感じです。右京区愛があるんですね。

――撮影が終わって、編集や仕上げについてーー

西田監督:仕上げはすべて京都でやりました。編集を藤田(和延)さん、整音に荒木(祥貴)さん、音響効果を杉中(万里)さんにお願いして、スタジオで作業ができてとても良かったです。彼らは『科捜研の女』やテレビ時代劇を中心仕事をされています。

京都で撮影しても、仕上げは東京でという映画が実は多いのですが、今回はMAまで京都で行いました。ただ、音楽の鈴木(浩行)さんは東京におられるので、音楽の録音は東京でした。1曲を除いて全て生演奏です。鈴木さんは現代音楽を中心に活躍されていて、映画音楽も諏訪敦彦監督の「M/OTHER」など手がけられています。監督した短編作品の音楽もとても良かったんです。のプロデュー作品レギューラーでお願いしています美術の竹内(公一)、竹内(悦子)のご夫妻もよくプロデュース作品でご一緒しています。撮影監督の藍河さん含めて、常連スタッフで現場をそろえたのは、信頼できる方々にまず入ってもらいたかったからです

――介護の仕事や施設が物語の舞台ですねーー

西田監督:宣伝のため、介護士のインフルエンサーの方々に観てもらったです皆さんすご共感してくれたんです。それがびっくりするほどで。ある方は、介護する人される人、ケアマネージャー、時給が安いという問題など、いろんな要素が入ってる映画だからすごいっていうわけ。

伊藤先生の奥さんからは、しも世話のことを映画に必ず入れほしいと望で、梶原さんに脚本の中に入れてもらいました。監修に医療や介護、理学療法などのスペシャリスト入ってもらえたので、その成果も映画の見どころの一つだと思います。

上映劇場
札幌:サツゲキ 2025年8月1日(金)〜7日(木)
東京: K‘s cinema  7月19日(土)〜 ※初日舞台挨拶
神奈川:横浜シネマリン  8月30日(土)〜 ※初日舞台挨拶
神奈川:あつぎのえいがかんkiki  9月5日(金)〜
栃木:宇都宮ヒカリ座  9月26日(金)〜
長野:長野千石劇場  7月19日(土)〜
愛知:ナゴヤキネマ・ノイ  8月23日(土)〜
京都:アップリンク京都  7月18日(金)〜 ※初日舞台挨拶
大阪:シネヌーヴォ  7月18日(金)〜 ※初日舞台挨拶
神戸:神戸映画資料館  7月25日(金)〜 ※初日舞台挨拶
山口:シネマポスト  8月16日(土)〜
大分:別府ブルーバード劇場  8月23日(土)〜

概要
出演
大西礼芳 中島ひろ子 カトウシンスケ
伊藤洋三郎/加茂美穂子 田川恵美子 神村美月 梅沢昌代
田中要次 田山涼成 筒井真理子
スタッフ
製作・監督:西田宣善
脚本・アソシエイトプロデューサー:梶原阿貴
原案:伊藤芳宏「生の希望 死の輝き 人間の在り方をひも解く」(幻冬舎刊)
音楽:鈴木治行
撮影監督:藍河兼一
美術:竹内公一、竹内悦子
録音:廣木邦人、荒木祥貴
編集:藤田和延
監督補:鈴木農史
製作:ジュリア、オムロ
配給:渋谷プロダクション
宣伝:MAP
2025年/カラー/91分

WEB:https://mataaimasho.com

©︎Julia / Omuro