
東京二期会オペラ劇場『さまよえるオランダ人』は、現代社会に響く「孤独と救済」をテーマにした新制作。9月11日より東京文化会館にて開幕。
『バトル・ロワイアルII』『僕たちは世界を変えることができない。』で知られる映画監督・深作健太がワーグナーのオペラに挑む。
深作健太による演出の発想の原点は“氷海”と“フランケンシュタイン”深作はオペラと同時代の芸術からインスピレーションを。ドイツ・ロマン派の画家フリードリヒ《氷海》(1823年)──氷塊に押し潰される船は、絶望と「ここではないどこか」への夢を象徴。メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』(1818年)──愛されぬまま孤独に北極にむかう怪物は、北海をさまようオランダ人の姿と重なります。
オランダ人は”怪物”ではなく、愛を得られない社会的アウトローとして捉え、フランケンシュタインの怪物と同じく、孤独と絶望の象徴であり、それは現代社会における疎外や格差の問題ともつながっていく。
また、救済の物語としてのオランダ人、彼を救おうとするのが、優しき女性ゼンタ。誰にも愛されなかった者と、ひとり必死に救おうとする者──この対比が未来への希望を描いていく。深作は今回の演出で「孤独な魂を救う優しさ」に強い光を当てていく。
物語
18世紀のノルウェー。嵐の航海中、悪魔に呪われ、死ぬことができず海をさまようオランダ人船長。7年に一度だけ許される上陸の時、愛を誓う女性が現れれば救われるという。その幽霊船に出くわしたノルウェー貿易船の船長ダーラントは、オランダ人の財宝に目がくらみ、娘ゼンタを彼に引き合わせることを約束する。
ゼンタはオランダ人と運命的な出会いを果たすが、すでにゼンタには恋人エリックが。エリックに責められるゼンタ。それを知りオランダ人は絶望し出航。ゼンタは彼を追って海に身を投げる……。
概要
東京二期会オペラ劇場《さまよえるオランダ人》新制作
オペラ全3幕
日本語及び英語字幕付原語(ドイツ語)上演
日程・会場:
2025年9月11日(木)、13日(土)、14日(日)、15日(月) 東京文化会館
指揮:上岡敏之
演出:深作健太
台本・作曲:リヒャルト・ワーグナー
出演:
[9月11日18:00/9月14日14:00]
ダーラント:山下浩司
ゼンタ:中江万柚子
エリック:城 宏憲
マリー:花房英里子
舵手:濱松孝行
オランダ人:河野鉄平
[9月13日/9月15日14:00]
ダーラント:志村文彦
ゼンタ:鈴木麻里子
エリック:樋口達哉
マリー:川合ひとみ
舵手:与儀 巧
オランダ人:斉木健詞
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:二期会合唱団
主催:公益財団法人東京二期会