つかこうへい作品「熱海殺人事件」「ストリッパー物語」二作品がつかこうへい作品聖地である紀伊國屋ホールにて11月1日より開幕、この名作を忠実再現しての公演。
1980年劇団☆新感線旗揚げ、創設メンバー、こぐれ修が演出を手がける。旗揚げ作品は「熱海殺人事件」、そして同時期に同劇団で「ストリッパー物語」を上演。その時の資料をもとに戯曲を再現。一座でしか上演できない赤いポスト貯金箱を用いた、つか氏初期バージョン、さらにつかこうへい事務所が実際に「ストリッパー物語」上演時使用した銀紗幕を使用、そこも注目ポイント。
出演は座長の田谷野亮をじめ「熱海殺人事件」は劇団EXILEの小澤雄太が主演。松川尚瑠輝、小池里奈が名を連ねる。
「ストリッパー物語」は日比美思主演。滝澤エリカ、大川泰雅、八条院蔵人、永井彩加、門松順。そして、なだぎ武が作品を彩る。
この2作品の主演、小澤雄太さんと日比美思さんのクロストークが実現した。
ーー出演のオファーを受けた感想をお願いいたします。前回の『蒲田行進曲』もご出演なさってますね。
小澤:『蒲田行進曲』の稽古場の机に『熱海殺人事件』の戯曲が置いてありまして。「なんでずっとここに置いたんだろうな?」って、手に取ってちょっと読んだりしてたんですけど、多分そこから(田谷野亮さんの)オファーの策略がされてたんでしょうね(笑)。「これ、できないですかね」って毎日のように…そうしたら本当にオファーの話があったので「こうなるよな」って思いながら(笑)、でも単純に嬉しかったです。僕の40歳の節目としてすごくふさわしい作品。12、13年前にやっていた『熱海殺人事件』を紀伊国屋ホールで見ているので、「いつかここに立ちたいな」っていう気持ちもありましたので、すごく熱くなりましたね。
ーー小澤さんとは『蒲田行進曲』でご一緒なさってますね。
日比:はい。やはりお話をいただいたときは、率直に本当に嬉しかったですね。『蒲田行進曲』に出演させていただいたときはもう全速力で走り切ることに無我夢中でした。とにかく、ゴールしたことにも気づかずにそのまま走り続けてるみたいな状態だったので、そのとき自分ができる限りの全力は出しましたが、やっぱり後々、何かこういうこともやってみたかったなとか、こういうこともできたんじゃないかなって思うところもあったので、いつかリベンジしたいなって思ってました。またつかこうへい作品に関わることができてすごく嬉しいです。
ーー『蒲田行進曲』にお二人とも参加いたしましたが、その時の思い出やエピソードなど。
小澤:僕は、実は途中で「ちょっと出てくださいませんか?」って言われて(笑)、途中合流でした。ということで稽古の思い出は…どうぞ(笑)
日比:はい(笑)。『蒲田行進曲』で汗水垂らして頑張ってる中、机の上に『熱海殺人事件』の台本がもう置いてあって、「なんだこれは?!」って。「もういい加減にしてくださいよ」って言った記憶があります。次のことは考えてなかったです(笑)。
小澤:すごいな(笑)。(当時)皆さんがもう出来上がってるところに僕が入ってきたので、「うわー、これ大変だな、全部覚えるのはいやだな」って思いながら(笑)…皆さん、長らく稽古していて、僕は途中合流だったので、最初から心配なく、稽古中にその作品自体がすでに出来上がってる感じだったので、そこにぽっと自分が入っていく感じでした。稽古場は皆さん、すごく楽しそうでしたね。トレーニングのように芝居やってましたよ。同じことの繰り返しなので、みんな気合入ってるから出来上がるのが早かったんでしょうね。もう後半の2週間、通し稽古をしたら終わりみたいな、通し稽古しに稽古場行くみたいな感じでしたね(笑)。
日比:部活みたいで楽しかった。
小澤:部活でしたね(笑)。
日比:(小澤さんは)本当に現場で頼れる兄貴というんでしょうか、本当に、みんなにすごく楽しく明るく振舞ってくださってて、みんなついていくかも。
小澤:(笑)。

ーー『蒲田行進曲』は風間杜夫さん主演映画が有名すぎて。
小澤:そうですね。『蒲田行進曲』の映画はすごく評価されましたね。『熱海殺人事件』も映画化されましたが、『熱海殺人事件』に関しては舞台が”本場”の作品なのかなって思っていますので、僕も生半可な気持ちで挑めないので、気合が入っております。前から作品を観てくださっているお客様や、もう紀伊國屋ホール、劇場についてるお客様もいらっしゃるので、文句を言われないようにバチッと決められたらいいなという思いでございます。
ーー原作者のつかこうへいさん、もちろんリアルでお会いしたことはないですが、今、つかこうへいという作家について持っているイメージはございますか?
日比:『蒲田行進曲』の共演の方でしたり、演出の方にも色々お話をお伺いして、とんでもない暴君だったっていうお話をたくさんお聞きしたんですけど、書かれている戯曲は本当に素晴らしく面白いものですので、私の中ではやっぱり想像でしかないんですが、もしもつかさんがいらしゃったら、今のお稽古にどういうふうに口立てしてくださるのかな?って想像したりしました。
小澤:僕はもう劇団デビューしておりまして、つかさんが亡くなった翌年の追悼公演、『幕末純情伝』をやらせていただきまして。そのときは僕はまだ駆け出しの役者で振付師兼アンサンブルっていう感じで入らせていただき、それから役付きの役をいただいて参加させていただいてたんです。そのときから、ずっとつかさんの話をいろんな方から聞かせていただき、尚且つ、北区の劇団のメンバーさんからもいろんなお話を聞いたので、、何となく想像は出来ました。(つかさんは)正直な人なんだなって。皆さんから聞く限りでは、思ってることを言っちゃったりとか、思ったことをそのまま書いて渡しちゃったりとか。でも、それだけ役者に寄り添ってくれる脚本家はなかなかいないなと思いますので、すごく素晴らしい方なんじゃないかなって思います。多分生きていらしたら応援したくなると思います。それぐらい破天荒な方なんじゃないかなって思います。演出も、台本をいきなり袖で渡してきて、それを覚えて出るっていうエピソードが有名ですが、演技をしているときに、つかさんはいきなり舞台上に自転車に乗って入ってきた奴がいるみたいな設定を考えて、それを「やれ」っておっしゃって、その場で若い役者に自転車を買ってこさせて、キャストに乗らせて、舞台にでてきて、その自転車で荒らすだけ荒らして帰ってくみたいなことを普通にやるような人だったそうです。それぐらい演劇というものを楽しめる人って昨今いないと思うんですよ。今は、できているものをまた一生懸命作ったりとか、元々ある原作を一生懸命実写で作り上げるみたいなのが主流になってきていますが、そうではなく、一から人間のいいところも、絶対に人前で見せられない気持ち悪い部分だったりとか、そういう人間の汚い部分みたいなものをお芝居で表現できること、今の世の中では、それはなかなかできないことなので、そこをお芝居を通して人間の本心みたいなものを見せていく…今の時代に、皆さんが必要なものなんじゃないかなって。つかさんが亡くなって17年たった今でも、伝え続けられる機会は少ないので、そこを考えるとやっぱり偉大な方だったんだろうなって…すごく感じますね。

ーーご本人が亡くなってもいろんな作品が日本のどこかでやってますね。
小澤:本当にぶっ飛んでますよね。
ーー伝説が尽きないつかさんですが、台本を読んだ感想とご自身が演じる役柄についてお願いいたします。
日比:『ストリッパー物語』はお話をいただいてから初めて読ませていただいて、私が演じる明美がとにかく本当にかっこ良くてかわいらしくて、とんでもない生きざまだなと思いました。私はこの深さを果たして演じられるのか不安もありましたが、本当に読んでいて楽しくて、台本の最初から最後までがあっという間に読んでしまいました。これを演じることは、もう本当に基礎的な体力だったり、ストレッチだったり、自分の技術力が本当に浮き彫りになるなって思ったので、そこを重点的に補いながら本番に向けて頑張ってるって感じです。
小澤:『熱海殺人事件』は本当に有名な作品ですし、かなりの方々が知ってると思うんです。(登場人物は)本当に曲がり曲がった人たちの集まりだなと思っていて。脚本に関しては5ページ目ぐらいで「長いな」って思ったんですけど、その中で伝えられるものは一体何なのかを考えたときに、読み切って伝わることは、やっぱりこの今の日本でも伝わる。右倣えをしたら右に倣う人しかいない世の中でも、私達はこういうことをしてでも自分たちを変えたい、世の中を変えたいみたいなメッセージがすごく詰まった作品だなと思うんです。右倣えしてる人たちが多い中で、それを覆す作品になるような展開になってるんじゃないかなって思うんですよ。だから今でも、すごく新鮮に読める本なんだなって感じたのが第1印象なんです。それを具現化するっていう意味、令和というこの時代に木村伝兵衛という人間が…僕がやってどうなるのかっていうのは僕もやってみないとわからないですが、セリフ量も…こんなに多いセリフを覚えるのも多分初めてなのですが、セリフ云々ではなく、やっぱり役者としての生きてきた証が出ると思うんです。役者魂が見えるかなって思いますし、とにかくかっこいい刑事でいたいなと、とにかくかっこいい犯人、とにかくかっこいい婦警…人間って汚いところも全部さらけ出すからこそかっこいいよっていうことがお客さんに伝えられる作品になればいいなと単純に思ってます。
ーー本当に『熱海殺人事件』は本当にいろんな方がやってますね。これだけ長くやってる作品ってなかなかないですね。
小澤:つかさんご本人も、作・演出変えて作ってるのが素晴らしい。王道のベースなのかもしませんが、キャストを女性にしたり、セリフを変えたり、設定を変えたりして、ベースを元にしてちゃんと完結した作品を作り続けている、『熱海殺人事件』という作品名を継続させていること自体も、今の世の中、なかなかできないことなのかなと思いますし、そういう作品を今の人たちが見ている、つかさんが亡くなられからもこれだけ上演され続けているのは、やっぱり名作なんだなと思いますし、その中で今回王道を、一番シンプルなのをやるのはちょっと言い訳できない部分があるので、気合いの入り方がいつもとは違うなと、僕も薄々感づいております。
ーー『ストリッパー物語』はそんなに多く上演しているわけではないですが、知ってる人は知ってる。
日比:本当に元の戯曲が好きな方が楽しんでくださったらすごく嬉しいし、初めて知った方にも新鮮に楽しんでいただけるように頑張りたいなって思います。『ストリッパー物語』はとにかく愛の物語だと思ってるので、そこを本当に丁寧に描いていけたらと思うし、私が演じる明美とヒモのシゲさんとそれを中心に巡っていく人間模様をキャストの皆さんと一緒に作り上げていけたらなって思います。

ーーつかさんの作品がこれだけ、日本のどこかで必ずやっている、学生演劇でもやってますね。それだけ、作家さんの力、作品の力がある。最後になりますが、お客様へのメッセージを。
小澤:これだけ続いてる作品、自分が生まれる前からある作品の中で、生で上演できること自体が今後、あるかどうかもわからないし、もちろん続けていく役者たちがいるとは思いますが、日本が戦争を経験してから必死にこの日本を守りながら生きてきた中で、自分たちが守ってきた文化、自分たちが生まれるまでに行き着いたものが垣間見える作品だとすごく思うんです。今は平和でみんながこうやって健やかに暮らしているのは、昔の人たちが頑張ってきたからだし、その中にあった少ないエンターテイメントの中で、未だに評価され続けてる作品を見ることができることはすごく貴重なもの。百聞は一見にしかず、やっぱり聞いただけじゃわからないことってたくさんあるし、もしかしたら見てもわからないかも知れない。だから劇場に感じにきて欲しい。生の舞台、役者が本気で魂でぶつかりにいく作品ってどんなものなんだろうというのを見に来ていただきたいというのが正直なところです。自分たちがこの作品を見て、明日からどういうふうに生きていこうかって思えるような何かやる気をもらえるような作品になってるので、もう見に来る方はそこを楽しんでいただきたいですし、チケット買うのを迷ってる方は、自分がこれから生きていく糧を作る社会勉強として観にきていただければなと思っております。
日比:フライヤーに『常識を脱ぎ捨て、熱くぶつかれ。』と書いてあるんですけど、もちろん熱量のこもった作品ではありますが、陽の当たらない人たちにも優しく寄り添ってくれる作品だなと思うので、とにかく精一杯演じたいと思ってますし、人間の生と死、あとはちょっと強気に言うと女の肌に勝るものはないと思ってるので、そこは皆さんに楽しみにしていただけたらなと思います。
ーーありがとうございました。公演を楽しみにしております。

概要
紀伊國屋書店提携公演
たやりょう一座 第14回公演
一座二部作
「熱海殺人事件」「ストリッパー物語」
日程・会場:2025年11月1日〜11月9日 紀伊國屋ホール
原作:つかこうへい
演出:こぐれ修
振付:髙橋有生
ギター演奏:ちゃんじょん
出演:
熱海殺人事件 小澤雄太(劇団EXILE)松川尚瑠輝 小池里奈 田谷野亮
ストリッパー物語 日比美思 田谷野亮 滝澤エリカ 大川泰雅 八条院蔵人 永井彩加 門松順 / なだぎ武
企画製作:合同会社一座 提携:紀伊國屋書店
公式サイト:https://ichiza.jp


