むかしむかし“円”が世界で一番強かった頃〜『スワロウテイル』4Kデジタルリマスター版上映で 岩井俊二監督トーク ⟪東京国際映画祭⟫

岩井俊二監督作品『スワロウテイル』4Kデジタルリマスター版が、第38回東京国際映画祭にて11月2日に上映された。『スワロウテイル』は、 主演に三上博史、CHARA、伊藤歩で1996年に公開されたの日本映画。来年2026年で公開からちょうど30年となる。当時、ワールドプレミア上映が、客席数1000席を超える映画館、パンティオン渋谷で催され、新しい映画の時代の到来を告げる作品と期待を持って受けとめられ。ヒットに繋がった。

今回、4Kデジタルリマスター版の上映前に、岩井俊二監督が登壇した。客席には20歳前後から当時公開の観客層と幅広い客層が席を埋めた。初見が、挙手によると7割程度のようだ。

『スワロウテイル』予告編

作品に出てくる“円都(イェンタウン)”と“円盗(イェンタウン)”について聞かれ、「当時、ヘイト、レイシズムというワードがなかったが現象としてはあり、自分らに石を投げている感じでいいかな」と、その言葉を思いついた言う。製作の経緯を、前作のハードボイルド作品「FRIED DRAGON FISH」の登場人物のPart2のプランが、主人公も変わり、気がついたらこうなった感じです」と述べた。聞き手の石坂健治(同映画祭シニア・プログラマー)から「“円都(イェンタウン)”に集う無国籍的なならず者たちがいるんですけども、制作から30年近く経っているが予言的なリアリティを感じますが、日本とアジアについて当時のお考えは」という問いに「当時から、今と変わらず入管の問題などがあり、胸が痛む話がありました。未来を予想して書いた訳ではなく、当時の色々なことを拾い集めて作ったものでした。逆に今でも解決していない問題で、解決して欲しかった思いで非常に残念です」と伝えた。

また、岩井からは同作品の「冒頭に、“むかしむかし、“円”が世界で一番強かった頃”と始まるのですが、30 年掛かって、やっと時代に合ってきた、何も嬉しくないです」と、苦笑したが、拍手が沸き起こり「なんで、拍手を!? 皆さんやばいです」とシニカルな観客の反応に応えた。

また、4Kデジタルリマスター版について「作業の2種間、至福の時間を過ごせた」と語りトークを締めた。

同作品は、2026年に劇場公開が予定されている。

『スワロウテイル』概要
物語:むかしむかし、“円”が世界で一番強かった頃。いつかのゴールドラッシュのようなその街を移民たちは“円都(イェンタウン)”と呼んだ。でも日本人はこの名前を忌み嫌い、移民たちを“円盗(イェンタウン)”と呼んで蔑んだ。ここは円の都、イェンタウン。円で夢が叶う、夢の都。…そしてこれは、円を掘りにイェンタウンにやってきた、イェンタウンたち
スタッフ:監督/脚本 岩井俊二 / 音楽:小林武史 / 撮影監督:篠田昇 / 美術:種田陽平
キャスト:三上博史 / Chara / 伊藤歩 / 江口洋介 / 漫部篤郎 / 山口智子

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