故つかこうへいの小説・テレビドラマ作品である『つか版 忠臣蔵』。横内謙介が、氏の三回忌に脚色して戯曲化し、2012年6月に扉座公演として上演。好評を博し、2013年2月に再び「すみだパークスタジオ倉」にて緊急再演、終演後すぐに熱烈な再演希望の声が劇団に寄せられ、2014年4月に再再演が、 紀伊國屋ホールにて上演。そして10年の時を経て、つか作品の数々の名作が生まれた紀伊國屋ホールにて『つか版・忠臣蔵2025』開幕。



舞台上には何もない。始まりの音楽、つかこうへいの作品を観たことがあるなら、思わず笑ってしまう楽曲が流れる。一瞬、他の作品のシーンが脳内で蘇る。横内謙介が演劇の沼にハマったきっかけが『熱海殺人事件』。



つかこうへいの『忠臣蔵』、一筋縄ではいかない面白さ。史実も時代考証も無視、見た目はカオス、そこがまた楽しい。近松門左衛門の岡森諦、ドーンと初っ端から。平たく言えば『忠臣蔵』を上演するまでが描かれている訳だが、この物語、二重、三重の仕掛けが施されており、また、虚構の世界でありながら、”現実”の瞬間も(上演劇場が紀伊國屋ホールという設定)あり、ここが憎い。


宝井 其角、演じるは山本亨、江戸時代前期の俳諧師。忠臣蔵では、赤穂義士討ち入り前夜、四十七士の一人の大高忠雄(源吾)と会ったとされているが実際には大高が江戸で其角に近づいたり、教えを受けた事実はないとされている。山本亨は長年つか作品に出演してきただけあって、楽しく、時には軽やかに演じていたのが印象的。


そのほか、市川團十郎、そして忠臣蔵なので、浅野内匠頭や大石内蔵助、阿久利、赤穂浪士たち、吉良上野介、柳沢吉保など、忠臣蔵ではお馴染みのキャラクターが次々と登場するが、よく知られているキャラとは違うので、そこはみてのお楽しみ。桂昌院、徳川綱吉の母として知られているが、ここでは少々お下品なキャラ、ホストにしか見えない柳沢吉保が常にそばに(笑)、登場しただけで笑える、中原三千代がコミカルに。


後半、ラスト近くはほぼほぼショータイム、かっこいい殺陣はもちろん、宝塚の男役さながらの中村座の面々、ちなみに中村座、江戸にあった歌舞伎劇場で江戸三座のひとつ。

客席からは時折笑いが、拍手も随所で起こる。客席と舞台が一体化。紀伊國屋ホールの舞台上で30名以上のキャストが賑やかに元気よく。ラストは「そうきたか」、通路を使う演出もあり、休憩なしの2時間強だが、怒涛のような展開で一気に見せる。公演千秋楽は12月14日、1702年(元禄15年)のこの日(旧暦)、赤穂浪士47人が江戸・本所松坂町の吉良邸に討ち入りし、仇討ちを成し遂げた。扉座らしい楽しく賑やかで楽しめる演出、この時期に相応しい公演。
<全員色紙コメント>

概要
劇団扉座第80回公演 『つか版・忠臣蔵2025』
日程・会場
厚木
2025年11月29日(土)、30日(日)厚木市文化会館 小ホール ※公演終了
東京
2025年12月9日(火)~14日(日)紀伊國屋ホール
出演
岡森諦 有馬自由 犬飼淳治 累央 上原健太 新原武 松原海児 野田翔太 小川 蓮
翁長志樹 彌永拓志 土岐倫太郎 守 敦也
中原三千代 伴美奈子 藤田直美 砂田桃子 小笠原彩 北村由海 菊地 歩 佐々木このみ
北條莉那 佐々木未央 佐々木琉吾 鈴木おとめ 寺田聖生 中島優佳 森 愛瑛
客演:山本亨 友部康志
スタッフ
原作:つかこうへい
脚本・演出:横内謙介(扉座)
振付監修:ラッキィ池田
振付:鈴木里沙
殺陣:西村陽一
舞台監督:大山慎一(ブレイヴステップ)
照明:塚本悟(ライトトレイル)
音響:青木タクヘイ(ステージオフィス)
衣裳:木鋪ミヤコ・大屋博美(ドルドルドラニ)
ヘアメイクプラン:川口博史(アート三川屋)
メイク:比嘉奈津子
所作指導:花柳輔貴理子
演出助手:鈴木里沙
プレゼンツ:見城徹(幻冬舎)
協力:
つかこうへい事務所 大沢事務所 エルビス・エンタテインメント 鈴木興産 すみだパークスタジオ 篠原要 明和運輸 厚木扉座サポーターズクラブ(厚木公演)
宣伝美術:吉野修平(ヨシノデザインオフィス)
宣伝イラスト:溝口イタル
題字:小林三左衛門覚
制作:赤星明光・田中信也(扉座)
(公財)厚木市文化振興財団(厚木公演)
WEB宣伝:串間保彦・大川亜耶
票券:そのださえ・菊地恵未
製作:(公財)厚木市文化振興財団
(有)扉座
公式サイト:https://tobiraza.co.jp


