塚原大助企画 ゴツプロ!『さよなら挽歌』開幕

ゴツプロ! の塚原大助が展開する企画シリーズ「ブロッケン」第3弾公演。今作では、HIGH colors主宰であり、劇作家・演出家の深井邦彦を迎える。
ゴツプロ!の塚原大助をはじめ、元AKB48で舞台やミュージカルでも輝きを放つ増田有華、次世代を担う注目の女優 やまうちせりな、力強い存在感で物語を支える阿岐之将一、文学座所属で声優・俳優として幅広く活躍する渋谷はるか、女優としても高い評価を得る南海キャンディーズの山崎静代、そして重厚な演技で観客を魅了し続けるベテラン俳優・塩野谷正幸が出演。

主人公の藤原(塚原大助)は、幼い頃から苦労を重ね、今はサラリーマンとして働きながら妊活にも向き合う男。経済的不安や将来の見えにくさは募る一方で、夫婦の間には小さな亀裂が生まれていく。
妻・奈々恵(渋⾕はるか)は「アタシ向いてないと思う。不妊治療」と苦しい胸の内をこぼすことも。

そんな中、藤原が手をだした“闇バイト”は、コインロッカーに閉じ込められていたおっさん(塩野⾕正幸)を5日間見張るという不可解な仕事でした。

おっさんは茶目っ気と哀しみを併せ持ち、「人生は別れが一番怖いんだよな」と洩らした一言が、藤原の胸に静かに落ちていきます。出口の見えない生活の中で、藤原は「家族」と「未来」に向き合い始めます。

物語の核を担うのが、美智子(山崎静代)。彼女はレンタル家族として“おっさんの亡き妻”を演じる女性であり、「別れ」「記憶」「祈り」を象徴する存在として物語に深みを与えます。

おっさんに寄り添いながらも、どこか一線を引く美智子。記憶と現実の境界で揺れる人間の弱さと優しさを鮮烈に映し出します。

物語のもう一つの軸として描かれるのが、売れない劇作家・都築(阿岐之将⼀)と、長年彼を支えてきた恋人・愛海(増田有華)の関係です。愛海の妊娠をきっかけに都築は「子どものために書く」と創作に意気込みますが、その熱は次第に生活も愛情も見えなくしていきます。

生活・創作・妊娠という三つの重圧がのしかかったとき、“何を選び、何を手放すのか”という問いが二人の未来を揺さぶります。

愛海の妹・唯(やまうちせりな)の存在も、“産む”/“産まない”という女性の選択にさらなる奥行きを与え、登場人物それぞれの「痛みと希望の輪郭」がより鮮明になります。

迷路のような人生の中で、藤原が見つけた小さな一歩。都築と愛海が向き合って選んだ未来。
物語全体を貫くのは、“別れ=終わりではなく、未来へ進むための選択”という柔らかな視点です。
若手からベテランまで、三世代のキャストが交差することで生まれる“人生の奥行き”。
笑いの中に鋭い痛みがあり、痛みの奥にやわらかな温度が宿る。『さよなら挽歌』の世界を、劇場で。

コメント
塚原⼤助より
若手演出家コンクール2025で優秀賞を受賞したばかりの深井邦彦くんの新作『さよなら挽歌』が、昨日、新宿シアタートップスにて開幕しました。
緻密に、そして繊細に編まれたこの物語を、出自も世代も異なる役者たちが、試行錯誤と悪戦苦闘を重ねながら一つの舞台へと立ち上げていく。
その姿は、まさに「今」を生きる令和の演劇そのものだと感じています。
迷い、ぶつかり、立ち止まり、それでも生きようとする人間の姿が、静かに立ち上がっていく作品です。
観劇後、身近な大切な人へ想いを寄せたくなる。そんな余韻が残る舞台になっています。
ぜひ劇場で、この時間、この空気を、直接体感していただけたら嬉しいです。

作・演出 深井邦彦より
やっとというか、もうというか、兎に角初日があけました。
今回、自らの事を主に書きまして、正直どう見て貰えるのか不安しかなく、劇場の男性用のトイレにジェントルマンと書いてあって少しだけ入るのを迷うような人間なので、自分の話なんて本当におもろいのだろうか?という思考から中々逃れる事の出来ない稽古場を過ごしておりました。
ここまで緊張した初日も珍しいかもしれないです。でも色々とありましたが初日を迎える事が出来ました。ご来場頂いた皆様のお陰です。本当にありがとうございました。
この物語は何かを手放す物語です。そして何かを手に入れる物語です。今の所、自分の棺桶に入れるのはこの戯曲だと思います。この物語の人間、彼や彼女の覚悟や決意そして祈りが誰か一人でもいいので誰かの何かになっていればいいなぁと願っています。
まだ公演は続きます。一人でも多くの方にご来場頂ける事を祈っています。

イントロダクション
貧乏だった。
流行りのゲームも買って貰えなかった。
父親が帰って来なかったから1人だった。
だから流行ってたロールプレイングゲームの勇者みたいな気持ちで生きていた。
米を炊けたらレベルアップ。
洗濯出来たらレベルアップ。
僕にはそれが楽しかった。

それから数十年経ち、俺は勇者からサラリーマンへと職業を変えた。
妻も出来た。共に人生を闘う仲間が増えた。
現在我々の目の前には妊活というダンジョンが広がって、中々クリア出来ずにいる。
クリアの為に俺は金を稼ごうとサラリーマンから闇バイトへと職業を変える事にした。
闇バイト当日。指定された場所に行き、指示されたコインロッカーを開けると中年男が飛び出してきた。
闇バイトのミッションはこうだった。その男を一週間見張り、指定場所へ届ける。あの日々のロールプレイングゲームの様な奇妙な任務が始まった。

これは社会の滑稽さと哀しみを描く“祈り”の活劇である。

概要
日程・会場:2025年12月12日(金)〜21日(日) 新宿シアタートップス
作・演出:深井邦彦
出演:
塚原大助 増田有華 やまうちせりな 阿岐之将一
渋谷はるか 山崎静代 塩野谷正幸
問合:staff@52pro.info

企画・製作:ブロッケン / 主催 ゴツプロ合同会社

公式サイト:https://52pro.info/