『マイ フレンド ジキル』が、12月16日、よみうり大手町ホールにて開幕、22日まで上演、12月27日~29日に梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演。
世界中の人々がその魅力にとらわれ幾度となく映画化・舞台化されてきた、怪奇小説『ジキル博士とハイド氏』(ロバート・ルイス・スティーヴンソン著)。2019年、この名作をモチーフに、上演台本・演出 : 瀬戸山美咲、s**t kingz の shoji(持田将史)・Oguri(小栗基裕)により、⟪語り⟫と⟪踊り⟫が交差するダンス × 朗読『マイ フレンド ジキル』が誕生した。今回、新バージョンで上演。語りを湖月わたる、踊りを柚月礼音で観劇。

2019年、2021年の公演とは趣がガラッと変わる。演者は元宝塚歌劇団のトップスター、男役。出だしは破れたコートにぼざぼざの長髪の男が不穏で不気味に登場、音楽、雷鳴。そこから一転して舞台は明るくなる。アスタン、明るく闊達な雰囲気、基本彼のモノローグが大部分、つまり、物語はアスタンの視点で語られるが、語りは一人なので状況描写なども語りが担う。

そしてジキルが入ってくる。凛々しく、背筋をピンと伸ばした、そしてなんでもできる男、颯爽とした雰囲気。アスタンはひと目でジキルに憧れを抱く。二人は意気投合、ここのダンスシーン、二人がシンクロしながら踊る、その流麗さ、宝塚歌劇団出身だけあって、絵になる瞬間が随所に。

バレエ、ジャズダンス、コンテンポラリーといったオーソドックスなダンスに元男役らしい空気感を纏い、細かい仕草もキマる、振付もこの二人にあった動き、長い手足、長身を十二分に生かし、s**t kingzの二人とは全く異なったダンス、よって初演、再演を観た観客なら、『全然違う!』と認識を新たにするだろう。
高名な紳士ジキルと醜悪な小男ハイド、原作の『ジキルとハイド』、人間の心に潜む善と悪の葛藤を描き、二重人格の代名詞としても名高い怪奇小説だが、ここでは二人の人間関係と友情にフォーカスしている。湖月わたると柚月礼音、星組では、湖月わたるがトップスターだった頃、柚月礼音は新人公演では湖月わたるの役を何度も演じた、いわゆる先輩後輩の間柄。お互いを熟知しているからこその阿吽の呼吸、目と目を合わせてシンクロしながら踊るシーンはファンなら感嘆。細かいニュアンスで二人の個性が見え隠れする瞬間があり、そこも楽しい。

真っ直ぐなアスタンの存在、ジキルにとっては眩しくも大事な友人。そしてジキルの苦悩、観客は最初からオチは知っている。それでも心揺さぶられるものがある。テンポよくそして濃密な瞬間が繰り出される。少年のような笑みを浮かべるアスタン、それを嬉しそうに見つめるジキル。原作は同性愛を描いているという説もある(あくまでも説)、この時代は同性愛は違法であり、悪。そんなところも気にして観ると作品の奥深さに改めて気付かされる。恐ろしいハイド、だが、なぜハイドが生まれたのか、なぜ、ジキルは薬を作ったのか、人間の本質、哲学的なところ。生演奏、ギターの調べが物語に奥行きを与える。上演時間はおよそ1時間半。公演は東京は22日まで。その後。大阪は27日開幕。
<Aバージョン>




<s**t kingz shoji & Oguri 『マイ フレンド ジキル』2021年>
s**t kingz shoji & Oguri 持田将史と小栗基裕として再び挑戦!舞台『My friend Jekyll(マイ フレンド ジキル)』愛と友情と人間の尊厳の物語
<<s**t kingz shoji & Oguri 『マイ フレンド ジキル』2019年>
s**t kingz、“朗読&ダンスパフォーマンス”新スタイルに挑戦!! 朗読劇『My friend Jekyll (マイフレンドジキル)』人としての欲望と理性のせめぎ合い、そして友情と。
Story
19 世紀末、ロンドン。弁護士のアタスンは、医学博士で法学博士のヘンリー・ジキルと出会う。誰もが羨む経歴も持ちながら人格者でもあるジキルに、アタスンは憧れと尊敬の念を抱いていた。やがて、二人は日曜日になると公園を散歩しながらさまざまな話をするようになる。しかし、ある日、ジキルが公園に現れなかった。
ちょうど同じ頃、ロンドンの街に奇妙な男の噂が広がる。彼の名はエドワード・ハイド。通りすがりの幼い少女を踏みつけるような暴力的な男だ。ハイドの名を聞いたアタスンは、ジキルから預かっていた遺言状の存在を思い出す。そこにはジキルの遺産の相続者としてハイドの名前が書かれていた。アタスンはジキルにハイドとの関係を尋ねるが、ジキルは何も語ろうとはしなかった。
そうしているうちに、地元の名士の男性が道で撲殺されるという事件が起きる。犯人はあのハイドだった―
概要
会期会場:
東京:2025年12月16日(火)~22日(月) よみうり大手町ホール
大阪:2025年12月27日(土)~29日(月) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
CAST
湖月わたる 柚希礼音
ギター:jin tanaka(back drop bomb) 飛田雅弘
STAFF
上演台本・演出:瀬戸山美咲
音楽:jin tanaka(back drop bomb) 飛田雅弘 GOTH-TRAD
音楽プロデュース:坂井田裕紀 振付:益井悠紀子
美術:土岐研一 照明:吉田一統 音響:武田安記 衣裳:十川ヒロコ ヘアメイク:国府田圭
演出助手:村田千尋 舞台監督:髙橋大輔
企画・制作:AMUSE CREATIVE STUDIO 梅田芸術劇場
主催:AMUSE CREATIVE STUDIO 梅田芸術劇場 読売新聞社(東京)

