ミュージカル『ISSA in Paris』が好評上演中だ。東京・日生劇場にて1月10日開幕、2月に大阪・梅田芸術劇場メインホール、愛知・御園座にて公演。
世界中で「HAIKU」として知られている日本の文学の文化の一つ、「俳句」。本作は現代と過去を交錯させながら、小林一茶の知られざる10年を大胆に描いていく。

ピアノの調べが流れ、この物語の主人公である海人/ISSA(海宝直人)が登場する。憂いを帯びた表情、海人はシンガーソングライター、デビューしてすぐは曲がバズるという恵まれたスタートを切ったが、曲が書けなくなり、引き篭もる。両親、特に母親は小林一茶の研究をしていた。母親につっかかる海人、苛立ちをぶつける。母親は息子を思い「パリに行きたいの、一緒に行かない?」と誘うも彼の心には響かない。「いい加減にしろよ」「あんたの人生に巻き込まれるのはたくさんだ」舞台後方に映像で文字が浮かぶ「一茶とフランス革命」。ところが、海人の母は、なんとパリで死去、訃報が届く。
小林一茶は1763年生まれ、1823年死去。本名は小林弥太郎。フランス革命は1789年、この年の7月14日にパリ市民が決起してバスティーユ監獄を襲撃、現在の革命記念日、この日に合わせてパリ祭が行われているのは周知の通り。


優しい母に恵まれた弥太郎(岡宮来夢)。ところが母親が亡くなり、継母に。祖母の死後、継母との仲は極度に悪化、15歳で奉公に出される。舞台上では、そんな一茶の生い立ちを 海人が傍観者として眺めているという演出。閉塞的な状況下でも、どこか希望を持っていた弥太郎、そんなおりにオランダ船が寄港、「俺だって旅に出たい」と弥太郎。オランダ船の船乗りに出会う、類まれなるチャンス。江戸に奉公へ出たあと、俳諧師としての記録が現れ始める25歳までの約10年間は実はよくわかっていない。海人の母の仮説、一茶はパリに行ったという大胆なもの。舞台上、海人はその光景を見ているのだが、彼は決心する、飛行機のチケットを買い、彼もパリに旅立つ。




舞台上の演出、現在と過去、あるいは江戸とパリが、交錯していく。海人はタイムスリップしているわけではなく、自分の足でパリに旅をし、母が残した本を読む、ある意味、彼の脳内の具現化、とも言える。この表現がファンタジックでありながらどこかリアルに観る者の胸に刺さる。弥太郎はパリで一人の女性に出会う。彼女の名はテレーズ(豊原江理佳)、舞台女優だが、意志の強い瞳、彼女はフランス革命にも身を投じていた。彼女に言いしれぬ魅力を感じる弥太郎。一方のテレーズも弥太郎に運命を感じていた。一方の海人はルイーズ(潤花)と出会う。彼女はいわゆるガイドさん、本業はダンスの振り付け。子供時代を思い出す海人。母は自分の仕事を大事にしていた、帰宅時間も遅い。海人はよく父と共にいたが、父は具合が悪そう。「大丈夫」と息子に言うも眉間に皺が。そして母親不在時に父は倒れる。




海人の旅と弥太郎の旅、観客はその二人の旅を観る。フランス革命、無常とも言える状況下でも社会を良くしたいという強い気持ちを持つ人々。その気持ちが大きなうねりとなり、その只中に弥太郎は存在することに。彼らの魂、テレーズの強い意志に触れて彼もまた、変わっていく。一方の海人もまた、母が残した本から、何かを感じ取る。

前編に流れるミュージカルナンバーが多彩で印象に残り、しかも緩急つけた構成で彼らの旅路に奥行きと深さを与える。歌唱力の高いキャストの力強く、そして心に響く歌声で観客は弥太郎と海人の旅を見届ける。弥太郎がなぜ、『小林一茶』になったのか、言葉はただの『音』ではない。”言霊”と言う言葉があるが、まさに『言葉に想いを託す』。長い、長い言葉ではなく、俳句という短い言葉で想いを吐露する。

時代も国境も超えて、彼らの想いと魂が呼応する。舞台上の映像で一茶の俳句が時折映し出される。彼は20000句以上を読んだと言われている。「露の世は露の世ながらさりながら」、海人の母が好きだった俳句。原案・作詞・作曲のモーリー・イェストンは一茶の俳句に感銘を受けてこのミュージカルを創作したそう。一つの俳句に込められた気持ちや哲学、一茶の空白の10年、大胆な”仮説”。時間も時代も超越した一茶の俳句の重さ、深さ、彼は俳句に何を託したかったのか、答えはまちまちだが、命に重点を置いていたのは想像に難くない。休憩を挟んだ2幕もの、長さを感じさせない、没入感も。東京公演は30日まで。

キャラクター紹介
<海人/ISSA:海宝直人>
正体を隠し、「ISSA」としてYouTubeで活動しているシンガーソングライター。
デビュー曲がバズり一世を風靡するも、スランプに陥り、曲が書けなくなって10年。
誰にも会わず、部屋に閉じこもる日々を送っていた。
そんな彼のもとに届いた母の訃報。そして思い出す、母が好きだった一つの俳句。
「露の世は露の世ながらさりながら」それは、止まっていた海人の時間を再び動かすきっかけとなった。
母が生前追い続けていたのは、俳人・小林一茶がかつてパリに渡っていたという仮説である。
その夢のような物語を信じ、海人は引きこもり生活から一歩踏み出し遠く離れたパリに向かう。
大切な人を失った悲しみ、自分を見失ったままの孤独、そして止まったままの音楽。
その答えは、時空を超えた旅の先に──。
<小林一茶/弥太郎:岡宮来夢>
江戸後期の俳人、小林一茶。本名弥太郎。
名句を残す彼にも、歴史が語らない「空白の10年間」がある。この期間、実は鎖国ニッポンを飛び出し、
ヨーロッパに渡っていたという、海人の母が追い続けた仮説が実際にあったかもしれない。
異国への憧れを抱いた弥太郎は、出島からオランダ船に乗り、波乱の時代の真っただ中、パリにたどり着く。
そこで運命の女性テレーズと出会う。しかし時はフランス革命の足音が近づく1788年。
民衆は、世の無常を嘆き、自由と平等を求め、身分制度の打破を目指し、戦いの準備を進めていた。
その中にテレーズもいた。
一茶には帰国の日が近づいていたが、一緒に革命に参加しテレーズと運命を共にする決意を固める。
その時、時空を超えた奇跡が起きる。
<ルイーズ:潤花>
海人がパリで出会う、フランス人の父と日本人の母をもつ現地ガイドの女性。
彼女の本業は振付家で、日本の俳句や民謡をラップと融合させ、独自のスタイルで踊る革新的なパフォーマンスを展開
している。母の遺した研究を手がかりに小林一茶の謎を追う海人に関心を抱き、彼の探究に協力する。
<テレーズ:豊原江理佳>
弥太郎がパリで出会う女性。
表の顔は舞台女優だが、その裏では、密かに革命運動にも身を投じている。
ある日、占い師に告げられた不思議な予言から、弥太郎との出会いに強い運命を感じる。
動乱と変革が訪れるフランス革命の時代、異国の地で戸惑う弥太郎を支え、心の拠り所となっていく。
<製作発表会レポ記事>
概要
原案・作詞・作曲:モーリー・イェストン
脚本・訳詞:高橋知伽江
演出:藤田俊太郎
出演:海宝直人 岡宮来夢 潤花 豊原江理佳
中河内雅貴 染谷洸太(Wキャスト)
彩吹真央 藤咲みどり(Wキャスト)
内田未来 阿部裕 他
日程・会場
東京
2026年1月10日(土)~30日(金) 日生劇場
大阪
2月7日(土)~15日(日) 梅田芸術劇場メインホール
愛知
2月21日(土)~25日(水) 御園座
公演HP:https://www.umegei.com/issa2026/
企画・制作:梅田芸術劇場


