末原拓馬作・演出 おぼんろ「ヂャスヴュラ」−死なない証明、物語る。− 上演中 井の中の蛙が海に出たら。

独特の世界観で人気を博している劇団おぼんろの第27回本公演「ヂャスヴュラ」が上演中だ。
なんと、今回は全ステージ入場無料、完全投げ銭制。そして初の 本多劇場公演となる。
開演前、キャストが客席を回る、一緒に写真を撮ったり、握手したり。観客と積極的なコミュニケーションをとる、劇団おぼんろをよく知っているなら、そこは先刻承知。舞台撮影も開演前、終演後はOK。独特の世界観が舞台上に広がる。始まる前から劇場全体が作品世界になっている。そして、一人の観客が選ばれる。ここは無作為。小道具の鍵を渡される。この鍵をキャストにわたさないと物語がスタートしない仕組み。キャストと共に練習。「よくやった!〇〇!!(観客の名前)」。そして始まる。
物語の設定は昔なのか未来なのか、ちょっと前なのか、そこは曖昧。人類は絶滅、しかも雨は滅多に降らない過酷な環境。昨今の環境問題が脳内でイメージ。動物たちは身を寄せ合って生きている。「ヂャスヴュラ」、それはその島の連中が眠ったときに見る夢に出てくる巨大なヘビ。恐ろしいという声もあれば、美しいという声も。実際はどうだかわからない。だが、この恐怖の蛇の夢を見ると自殺する動物が後を立たない。かなりダークな設定。


メインキャラクターはカエル。三兄弟、「井の中の蛙」という言葉がある。正確には「井の中の蛙大海を知らず」、荘子からのことわざ。自分の狭い知識や経験にとらわれて、他に広い世界があることを知らない者のことを指す。ここでは文字通り、井戸の中の世界しか知らないカエル3匹。しかも長男と末っ子はなんだか詐欺っぽいことをしている。

観客の協力でタイトルロールが!

末っ子がお兄ちゃんにくっついている、というところは「ある、ある」。父親代わりはイモリ。両生類と爬虫類、そんなイモリがカエルたちに向かってでっかいことを言う。「世界を変えるカエル」なんだか駄洒落っぽいフレーズ。そしてこのカエルたちは大志を夢を抱く。外の世界に憧れる。跳ぶ、カエルは跳ぶ、一瞬、月が見える、希望の、夢の、月。たった4分58秒。そしてなんとか井戸の縁に。広がる世界は想像をはるかに超えた荒れた世界。それでもカエルたちは信じる。


ヤドカリにフクロウに、動物たちが出てくる。皆、一癖も二癖もある連中。カエルたちもなかなかに個性的。現実と夢の狭間、今を生きる人間社会もまた、人々はかすかな希望や夢を抱くが、現実の前に押しつぶされてしまう人もいる。「何も変わらない」と。だが、カエルたちは「信じることを信じたから出れた」と言う。そして雨乞いをしようと思いつく。
閉塞的な世界でも、どこか希望や夢を捨てない。疑うことから信じることへ、セットが自在に動く、動いているセットを移動しながらの演技、徹底したアナログ演出、アートな、遊び心のある空間。時折、歌も。長男カエルはさひがしジュンペイ、パワフルだが、どこか危うさもある長男、だが、長男らしい逞しさも。井の中の蛙が海を知ったら?カエルたちの冒険譚、上演時間は2時間15分の休憩なし。公演は15日まで、本多劇場にて。

末原拓馬より
劇団という文化そのものが絶滅の危機にあるときくようになって久しい昨今ではありますが、劇団でしか創り得ないものがあるのも事実だと確信してやって参りました。エンターテイメントとアートの狭間で自分たちの表現を追い求め続け20年近くが経ちました。
あらゆる劇場を借りることができなかった駆け出しの頃に、路上独り芝居から始まり、時には廃工場を借りて特設劇場に改造したり、テントを立てたりもしました。海外に招聘されたこともありました。劇団の過ごしてきた様々な軌跡のすべてが僕らの物語で、そして今回の公演はその一番新しい瞬間です。ここまでに出会ってきたすべての方々への絶え間ない感謝の気持ちを抱き、その出会いの先に存在する自分たちを誇らしく思います。本多劇場という場所でやれることを光栄に思いながら、場所の持つ目には見えない力に衝動をもらっています。
井の中の蛙が海を知り、そしてどうなるのだ、という物語を描きました。
僕らは、物語は世界を変えるということをただひたすらに信じ、そうしたいと切望して活動し続けて参りました。そんな突拍子もない夢を微塵も疑うことなく信じ込み、ひた走ってこれたのです。それから、たくさんの現実を知りました。そして僕らはいま、どうなるのだ。そこに、自分たち自ら目を向けたいのです。
変わり続けたいと願ったかつての僕らは、いつしか変わりたくないと願うようになり、けれど、変わらないことの安心と引き換えに自分たちが死んでいくような緩やかな絶望を抱いたりもします。
そんな僕らが今この瞬間、やっぱり夢を見続けていたいと叫んでみる、そんな物語です。どうかご参加いただければ幸いです。

あらすじ
昔々、はたまた未来かあるいは現在か。
人類が絶滅し、雨がめったに降らず、生命が生き延びるには厳しい世界で、小さな動物たちは肩を寄せ合って生きていた。
<ヂャスヴュラ>というのは、その島の連中が眠ったときに見る夢に出てくる巨大なヘビ。
それが恐ろしかったという者もいれば、美しかったという者もいる。
この蛇の夢の恐怖で自ら命を立つ動物が後を絶たないのが、この島だった。

「これ以上、夢を見ないように」

長男カエルのザビギジンは、末っ子カエルのタミッケルと共に、生き物を「乾眠」へと誘い財産を奪い取る詐欺蛙に成り果てていた。
「あいつはどこへ行った?」
そう、彼らカエルは三兄弟。真ん中カエルのロンリと共に、かつては井戸の中で暮らしていた。
「お前らは世界を変える蛙だ」
父代わりのイモリ、モリノコセが語りかけると、カエルたちは奮起する。
ここから見える月はわずか4分58秒。ここから飛び出せばよもや一晩中月の姿を見られるかもしれない。
闇雲な努力の末、日に日に高く飛び上がれるようになったカエルたち。
「届けぇぇぇーーーー!!!」
井戸の縁を掴むと、三匹揃って初めての世界に足を踏み入れた。

しかし、眼前に広がるのは思いもしない光景。荒廃し干からびかけた大地だった。

ぶっきらぼうなヤドカリのヤドガダラに連れられて、人間の残した巨大な建物に着く。そこではたくさんの生き物が、険しい顔をし、身を寄せ合っていた。
彼らは口々に言う。
「今日もヂャスヴュラの夢を見た」
この島にはどうしてか雨が降らない。干上がっていく池、色を失った木々、そして巨大な蛇――ヂャスヴュラの悪夢。
そんな彼らを救う雨乞いの儀式の歌を歌う、片翼のフクロウ、ホーホメッグ。
「恐れるな まだ見ぬその夢を 忘れるな あの夜のその夢を」
儀式を続けたある夜、降り出した大粒の雨。湧き上がる歓声の中、末っ子カエルは心に決める。

「ねぇ僕ら兄弟を弟子にして!」

世界のあらゆるものが彼らを包む。
そんな、海を知ったカエルの物語。

さひがしジュンペイ インタビュー

おぼんろ「ヂャスヴュラ」−死なない証明、物語る。−さひがしジュンペイ インタビュー

概要
日程・会場:2026年2月12日(木)〜15日(日) 下北沢・本多劇場
全ステージ投げ銭制
出演
末原拓馬
さひがしジュンペイ
わかばやしめぐみ
高橋倫平
井俣太良
塩崎こうせい
作・演出:末原拓馬

劇団公式サイト:https://www.obonro-web.com
作品特設サイト:https://www.obonro-web.com/obonro27th