新国立劇場 演劇 2026/2027ラインアップ発表会レポ

新国立劇場の演劇2026/2027のラインアップ発表会が行われた。芸術監督は9月1日より就任する上村聡史。
上村新芸術監督が最初に新国立劇場に関わったのが2005年、当時は演出助手だったそう。そして「芸術監督諸先輩たちの功績をお手本としながら、私自身の個性や感性を時代の変化と照らし合わせ、その発想が劇場運営に反映できるよう努めてまいりたい」と挨拶。

それから4つの視点でプログラムを構成したいと語った。

1. 現代的、国際的、批評的
書き下ろし新作、古典・近代戯曲などの上演を問わず、どの演目においても、問題提起すべき事象を意識した現代性、グローバルスタンダードを見つめた国際性、演劇が社会における役割を果たす批評性、を踏まえた作品作りを目指します。

2. クロスオーバー、他ジャンル(音楽、ダンス、文芸、漫画、映像など)とのつながり
これからの新しい表現方法を展開していくために、他ジャンルとの交流を積極的に図った作品作りを目指します。

3. 新しい才能との出会い
次代の演劇の発展のため、出演者・スタッフともに、新しい才能の登用、そして交流できる場を目指します。

4. 消費で終わらないパフォーマンス
舞台芸術が、社会生活と共にあるためにも、舞台空間を構成する素材・資源等の長期活用や、再演作品の上演形態を工夫し、消費で終わらない舞台芸術を目指します。

それから上演作品について
『巨匠とマルガリータ』

ミハイル・ブルガーコフの名著を、主人公”巨匠”を小説家から劇作家に翻案したエドワード・ケンプのヴァージョンで上演。”奇想天外”と評される長編小説ですが、「原稿は燃えない」という名台詞から語られる、権力に立ち向かう芸術のあるべき姿、社会における善と悪といったテーマを中劇場において、オープニング作品にふさわしいスペクタクルをもって描く。11月の上演で、演出は新芸術監督。「荒唐無稽な展開です」と上村新芸術監督。
データ
日程:2026年11月
演出:上村聡史
翻訳:小田島創志
出演:成河 花乃まりあ 松島庄汰 菅原永二
明星真由美 小松利昌 富山えり子 内田健介 山本圭祐 山森大輔
柴 一平 釆澤靖起 近藤 隼 猪俣三四郎 篠原初実 笹原翔太
大鷹明良 篠井英介

『ミノタウロスの皿』

様々なジャンルとのクロスオーバーを目指す作品。
藤子・F・不二雄の短編漫画をもとに、ダンスカンパニーCHAiroiPLINを主宰するスズキ拓朗の演出で、”命を食するとは”といった食と倫理の問題を、ダンスや映像を駆使した演出で。また本公演は4歳以上の未就学児からお楽しみ頂ける、幅広い観客層にむけてのクリエーション。「少年少女の心の揺らぎ」を表現するそう。また、二人で話し合った時にスズキ拓朗から「僕もやりたかったんです」と即答。
データ
日程:2026年12月
原作:藤子・F・不二雄
脚色・振付・演出:スズキ拓朗

27年3月からは、「現代的、国際的、批評的」をテーマに掲げた4作品が並ぶ。

『ナハトラント~ずっと夜の国~』
ドイツの現代作家マリウス・フォン・マイエンブルクの作品。
時代の変化のなかで、舞台芸術がより、現代的、国際的、批評的であることを目指した作品づくり。
先進国を中心に巻き上がっている移民の排他主義といった右派ポピュリズムを風刺した家族劇、諧謔的なシーンも多く、皮肉の効いた作品。
遺産相続のドタバタ、価値観の揺らぎを描く。
演出は柳沼昭徳。
日程:2027年3月
作:マリウス・フォン・マイエンブルク
翻訳:長田紫乃
演出:柳沼昭徳

『見えざる手』
イスラム系テロ組織によるアメリカ人銀行家の誘拐に端を発するアヤド・アクタルの傑作。”金融取引”がテーマ。マネーゲームのカタルシス。
世界経済から垣間見える”分断”をサスペンスフルに。
日程:2027年4月
作:アヤド・アクタル
翻訳:浦辺千鶴
演出:上村聡史

『Ruined 奪われて』
ピュリッツァー賞受賞作品、コンゴにおける女性の実態に基づくセンセーショナルな物語。今なお続いている衝撃、男性至上社会を強く批評しながらも、女性たちの生き様をユーモアと力強いタッチで。出演者の一部はオーデションで選出。
日程:2027年5月
作:リン・ノッテージ
翻訳:小田島則子
演出:五戸真理枝

『抱擁』
山田佳奈書き下ろしの新作、山田佳奈は新国立劇場初登場。生命の誕生と終焉について母と娘の確執を軸に、日本の視点と国際的な視点を交えながら展開。母は病を得、娘は出産を控えている、という設定。今の時代の生きづらさを寄り添うような提出で。
日程:2027年6月
作・演出:山田佳奈

消費で終わらない舞台芸術、社会の持続性に伴う資源の有効活用を目指す作品。「グリーン・リバイバル・ラボ」
『エンジェルス・イン・アメリカ』
新国立劇場での上演版を踏まえつつ、『レオポルトシュタット』『白衛軍 The White Guard』(ともに美術・乘峯雅寛)の舞台美術を一部使用する。舞台形状も23年の上演時より変化させる。出演者の演技やスタッフのアイデアといったアナログ的手法に注力。実在した人物、ロイ・コーンを演じ第74回芸術選奨、第31回読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞した山西 惇をはじめ、浅野雅博、岩永達也、長村航希、坂本慶介、水 夏希の初演メンバーが再結集。

2023年公演より(撮影:宮川舞子)
なお、この「グリーン・リバイバル・ラボ」は2030年までの毎シーズン、一つの演目は長編やダブルビルを上演する予定。
日程:2027年7月
作:トニー・クシュナー
翻訳:小田島創志
演出:上村聡史
出演: 浅野雅博、岩永達也、長村航希、坂本慶介、水 夏希、山西 惇 ほか

そして集団創作による新作、上村聡史監督の指針のひとつである、「新しい才能との出会い」。劇作家を公募し、トライアルを重ねながら、新作を創作していくプロジェクトを立ち上げる。多くの新作が、劇団による集団創作から生まれてきましたが、このノウハウに注目し、時間をかけて劇作家と演出家と俳優のア
イデアを積極的に交流し、新作の可能性を発見していくプロジェクトを始める。具体的には、劇作家を公募し、演出家と方向性の検討を重ね、選ばれた作品の出演者はフルオーディション形式で決定し、プロダクションワークショップを経て、上演。
制作側が「こういうものを作りたい」と作家に相談し、その作家に頼るところが大きいが、もっと早い段階で作家や俳優の意見を取り入れるようにする方法と解説。そこがいわゆる委託とは違うところ、とのこと。26年春にプロジェクトの詳細を発表し、劇作家の募集を開始し、26年秋に出演者のフルオーディションの応募受付を開始する予定。公演自体は28年4月頃の予定。演出家は五戸真理枝。公募で決定した劇作家、キャストが五戸と共に、27年春頃より長い時間
をかけて新作を創り上げていく。
また任期は4年であるが「やれることはたくさんある」と上村聡史監督。

また、新しいプロジェクト、『ドラマクエスト ─物語の探求─」、世界各地で話題となっている演劇ムーブメントや、日本で生まれる新しい劇言語と、国内外問わず新しい形式の演劇を共有し、考察。
「今、世界各地の演劇の現場で何が起きているのか?」を体感するために、次のような多彩なプログラムを実施していく予定とのこと。
・劇作家、演出家、俳優、そして様々な分野のクリエーターを迎えたトークイベント
・最新戯曲やトライアウトによる試作戯曲のリーディングイベント
・演技やスタッフワークの体験型ワークショップやレクチャー

最後になりましたが、日本での公共劇場における芸術監督制の歴史っていうのは、ヨーロッパ諸国に比べてまだまだだと言えます。しかし、各国の国立劇場のあり方を見てもそれは決して均一的なものではなく、その国の歴史や生活風習といった背景を踏まえながら、劇場ごとにその独自性があるように見えます。古典から現代作品まで多彩にラインナップを並べる国立劇場もあれば、芸術監督の個性を生かし社会的なメッセージ性を強く訴える演目を並べる国立劇場もあり、多様な個性がいろいろありますが、決して権威的なものではありません。令和日本にとっても、現在、演劇の国立劇場とは何だろうか。 これは本当議論尽きない問題かと思います。
しかし、この命題に対してですね、制作チームのみんなと財団、各部署としっかり対話を重ね、お客様の感覚社会の現状を、偏りのない目線で捉え、そして何よりも芸術監督である己の感性を厳しく問い詰めながら、この命題と向き合ってプログラムを作っていきたいと思います。 そしてあのそういったプログラムであったりその全体の方向性っていうものは批判されるべきものなんじゃないのかなと思いますちょっと言葉は語弊がないように、もう一つ言いたいんですけども公共性公共劇場というのは、やはり批判されてナンボといいますか批判されてともに成長していく場であると私は考えております。

ですので、私自身が強いコンセプトを打ち出すことによって、何か議論というものが透けない空間でありたいなとは思いますただしそういった空間作りの土台というのは作り手もお客様も活発に劇場の中で行き交うことになると思います。 そう知った。 創作もクリエイションも観劇もともに劇場空間というものは精神的にも身体的にも保障されていて生産的な環境ではなくて、生産的な環境でなくてはならないと考えております。 そういった場を構築できるように維持できるように責任を持って監修できればなと考えております以上がラインナップの説明も含め、初年度の所信表明になります。

新国立劇場公式サイト:https://www.nntt.jac.go.jp