小川絵梨子芸術監督 演出 最終シーズン フルオーデション企画 『エンドゲーム』上演@新国立劇場

小川絵梨子芸術監督 最終シーズンのフルオーディション企画は、満を持して自らが演出!
挑むのは、ノーベル賞作家サミュエル・ベケットの傑作『エンドゲーム』 !
「終焉」のときを待つ登場人物たち…、人間とは、生きること、とは──。

小川絵梨子芸術監督が、その就任とともに打ち出した支柱の一つ、すべての出演者をオーディションで決定する〈フルオーディション企画〉。8年間で累計 1 万 3 千通を超える応募があった本シリーズも、小川絵梨子監督の任期満了と共に、いよいよラスト。
任期最後の本企画で、自ら演出も担う小川が選んだのは、1957 年の初演から半世紀以上を経てもなお世界中で上演され続けているサミュエル・ベケットの傑作『エンドゲーム』。
タイトルの「エンドゲーム」は、チェスの終盤戦を意味しており、駒が少なくなり、逃げ場のない状況を示唆しています。終末的な状況下で、閉じ込められた四人の登場人物の絶望的で繰り返される日常を描いた不条理劇で、ベケット自身は、本作を「自分の作品の中で最も嫌いじゃない作品」と評したと言われています。出口のない状況の中で、彼らは終わりを待ち続けているのか、それとも──。

1,016名の応募から選ばれた、全員が新国立劇場初出演の4名


オーディションは 2025 年 3 月より公募を開始し、1,016通の応募が寄せられました。書類選考から三次選考まで、約2ヶ月に及ぶ審査を経て選ばれたのは、近江谷太朗、佐藤直子、田中英樹、中山求一郎の4名。
フルオーディション企画史上最少人数となるこの4名は、全員が新国立劇場主催公演初出演。「作り手が新しい俳優と、俳優が新しい演出家と、劇場が新しい作り手たちと出会い、作品を立ち上げていく」という本シリーズが掲げてきた理念を体現する結果となった。

シリーズ企画「いま、ここに──」第二弾として
本作は、小川芸術監督の任期最後のシリーズ企画「いま、ここに──」の第二弾でもあります。変わり続ける世界の中で、いま、ここに生き、小さな希望を見いだしていく 3 つの物語を 2026 年 4 月より 3 カ月連続で上演します。
小川は、『エンドゲーム』について、今まさに終わろうとしているかのように見える荒廃した世界の中で、「終わらせないためにどう生きるか」を探求する物語だと語る。

コメント
翻訳・岡室美奈子

自粛生活を余儀なくされた COVID-19 パンデミックを経て、ウクライナやガザなど世界のいたるところで戦争が起こっている現在、『エンドゲーム』はとてつもなくリアルな作品です。もともと『ゴドーを待ちながら』などベケットの演劇は戦争や災害が起こった土地で上演されてきましたが、『エンドゲーム』は『ゴドー』以上に現在の世界に応答しているように思われます。また、戦争や厄災のみならず介護やヤングケアラーの問題にも直結しています。しかしそうした諸問題を映し出すだけではなく、人間の連帯と孤独、物語の役割など普遍的なテーマをもった深い作品でもあります。 新訳では、盲目のハムの語りを大事にし、会話パートと語りのパートの文体を変える工夫をしました。ベケットと言えば、不条理劇=わけがわからないというイメージが根強くありますが、そうした固定観念を払拭すべく、原文に忠実で、かつ、わかりやすい訳を心がけました。ハムとクロヴの二人の関係の変化がお客様に伝わることを願っています。最後にクロヴがどういう決断をしたのか、想像していただければ幸いです。

演出・小川絵梨子

サミュエル・ベケットによる『エンドゲーム』は、1957 年に初演されました。描かれている世界は、どうやら『ゴドーを待ちながら』の時代よりもさらに荒廃が進んでおり、人間関係は一層の悪化を見せ、今まさに終わろうとしている世界に見えます。しかし描いているのは「意味を失った世界」や「世界の終わり」という状況だけでなく、「終わらないためにどう生きるか」を探究する物語でもあると思います。
ベケット作品の登場人物たちのように、時間と存在への無力感と対峙しながらも、それでもなお生きることの意味を模索し続ける姿は、科学技術が進み世界がより密接になろうとも変わらず、普遍的な人間そのものの姿です。ベケット自身、この『エンドゲーム』を「自分の作品の中で最も嫌いじゃない作品」と評したとされています。
また、私が特に心に残っているベケットの言葉に「Try again. Fail again. Fail better.」というものがあります。冷徹に見える現実の中に人間的な温もりが宿っているベケットの考え方に希望を感じます。失敗を繰り返し、終わりに近づく中にあって「どう終わりを迎えるか」あるいは「どうやって終わらせないか」という問いを絶えず問い続けること。この作品を通じて、生きる意義を「問い続ける姿勢」こそが人間の希望であることを描ければと考えております。

あらすじ
家具のない室内。舞台奥に小さな窓が二つ。カーテンは閉じている。壁際にはバケツが二つ、並んで置いてある。古ぼけたシーツを被って車椅子にかけている盲目のハム。もうひとり、クロヴが不自由な足取りで室内をウロついている。
どうやら主従関係のようだ。二人はとりとめのない会話を続け、ハムは常にクロヴに文句を言い、怒鳴り散らし、イライラしている。クロヴはたまに外を覗いたりもするのだが、見えるのは殺伐とした風景。お互い、そんな日常に絶望しうんざりしていた。やがて退屈しのぎにハムが、バケツの中の人間に話しかける。中にいたのは彼の父親らしい。そしてもうひとりは……。

概要
いま、ここに──[2]『エンドゲーム』
【作】サミュエル・ベケット
【翻訳】岡室美奈子
【演出】小川絵梨子
【美術】小倉奈穂
【照明】原田飛鳥
【音響】竹田 雄
【衣裳】前田文子
【ヘアメイク】高村マドカ
【演出助手】渡邊千穂
【舞台監督】梅畑千春
【主催】新国立劇場
【キャスト】近江谷太朗、佐藤直子、田中英樹、中山求一郎
【公演日程】
2026年5月20日(水)~31日(日)
プレビュー公演:2026年5月15日(金)・16日(土)
【会場】新国立劇場 小劇場

【チケット申し込み・お問い合わせ】
新国立劇場ボックスオフィス TEL:03-5352-9999 (10:00~18:00)
新国立劇場WEBボックスオフィス https://nntt.pia.jp/

公式サイト:https://www.nntt.jac.go.jp