田中哲司、大森南朋、赤堀雅秋の演劇ユニットが約2年半ぶりに集結、ヒロインに門脇麦を迎えて、荒川良々、あめくみちこ、清水優、新井郁と豪華キャストの新作公演となる。
4月21日の東京公演はじめ、初上陸の札幌にて上演される。
約6年以上前のとある日、田中哲司、大森南朋、赤堀雅秋の演劇ユニットが誕生。
そもそもは、田中が光石研と舞台をやりたい、誰と何をやったら面白いか、そんな発想から企画はスタートし、かねてから親交を深めてきた田中、大森、赤堀が、しがらみにとらわれず、俳優たちが真摯に物作りをできる場所を求めて一致団結。
キャスティングも俳優同志で声を掛け合い、2016年2月に光石主演、麻生久美子など豪華な顔合せで、舞台『同じ夢』の上演、2019年には、長澤まさみ、でんでん、江口のりこ、石橋静河を迎えて、第二回『神の子』を上演。
3度目となる今回は、門脇麦がユニット初参加。そして、赤堀作品にも多数出演している荒川良々、あめくみちこ、清水優、新井郁が集まった。
物語の舞台はリサイクルショップ、都会のショップではないので、どこかうらぶれた感じ。幕開き、手島(大森南朋)が顎マスクでくつろいでいる。現代、という設定。車が止まる音が聞こえる。やってきたのはマルセル小林(田中哲司)、自称映画プロデューサー、ちょっと調子の良さそうな(笑)雰囲気。出口(荒川良々)がやってくる、ここの従業員、「貧乏、暇なしですよ」と自虐的、電子レンジが落ちてたから持ってきたという。特になんということのない光景、笑う3人。
そこへ銃声、増え過ぎた鹿が農家の作物を荒らしており、被害を見過ごせない状況故に他県からも猟師を募って害獣駆除をしている。これも時折、ニュースなどで見聞きすること。都会のように娯楽があるわけでもない田舎町、彼らの楽しみはキャバクラでマイカ(門脇麦)や美由紀(新井郁)ら女の子をからかったり、酒を飲んだり、冗談言ったりと、それぐらいしかない。田舎なので、店内の雰囲気も洗練されたものではなく、どこか時代遅れ的なセンス。
従業員の木村(清水優)、髪は金髪、カッコいいとは言い難い風貌、どこにでもいそうな若者。そんな古びたリサイクルショップ、郵便局員の節子(あめくみちこ)、父が身罷ったので遺品を整理しており、不用品を引き取って欲しいという。遺品整理でまだまだ使えそうなものはリサイクルに回す、これもよくあること。そんなありがちな光景、日々が”ちょっとしたこと”であらぬ方向へと変わっていく。
キャバクラのシーンやリサイクルショップ等のシーン、そこでのやり取り、少しずつ、何かがずれていき、不穏な空気が漂い始める。節子が出口にカレーを振る舞う場面は少し穏やか。また、山の中で鹿の駆除をしている猟師である柳田和男(赤堀雅秋)に遭遇する場面では何かが起こる予感を感じさせる。何の変哲もない光景、状況がじわじわと崩れ、歪み、ねじれていく様は少々戦慄を覚える。そして衝撃のラストへ向かっていく。
出だしは特に何の変哲もないが、この顔ぶれで『何も起こらないはずはない』と期待して観る観客は多いと思うが、その期待に違わず、それぞれの役柄でパワーを発揮する。手島とマルセルが抱えているもの、木村が見つけたもの、節子の気持ち、など、個々が抱えている『こと』が最初は小さなさざなみのようなザワザワ感、それが最後には大きなうねりとなる。タイトルになっている”ケダモノ”の意味、それは観客の感じ方次第。
ゲネプロ前に簡単な会見があった。
まず、作・演出・出演の赤堀雅秋は「田舎町の話です。牧歌的ではありません。コロナで鬱積した空気感、とにかく一生懸命演じて」とコメント。大森南朋は「緊張感のある中で…すごく楽しめればいい」と語り、初参加でヒロインとなる門脇麦は「緊張しています、楽しめればいい」とコメント。田中哲司は「観た人が想像してくれれば。自称映画プロデューサー、いい加減なおじさんの役です(笑)。沖縄弁で言うとちむどんどん。頑張って突っ走っていこうかなと」と役柄についてコメント。
荒川良々 は「大森南朋さんの店の人です。早くやりたいです、はい」と手短なコメント。あめくみちこは「独身で58歳という設定、一瞬だけババアと呼ばれます」と語る。大森南朋は舞台出演については「しばらくは赤堀くんとしかやっていない、楽しみと緊張感を持ってやらせていただいています」と語る。田中哲司は「本当に毎回、搾り出して台詞を書いている、毎回素晴らしい。今回は『あ、そっちで来たか』、新しい一面が見えて、自信を持って皆様に」と絶賛。門脇麦は「ずっとご一緒したかった」と”夢が叶った”ことを語り、「言葉が全て、稽古場から贅沢な時間を過ごしてきました」と語る。
物語としては荒川良々は「あめくさんとロマンス的なことがあります」と言い、あめくみちこは「赤堀さんの演出を10年前に受けまして、熱くって迫力があって。今回、お声をかけていただきありがとうございます。荒川さんとはちょっとロマンス…ね」と(衝撃のシーン、あり)。最後に大森南朋が「初日を迎えることができました。どんどん芝居が変わってくると思います。ぜひ、2回、3回と、とことん変わっていく生々しい芝居を観てください。北海道へも珍しく行きます。お待ちしております」と締めて会見は終了した。
配役
大森南朋:手島 清(リサイクルショップ経営)
門脇 麦:マイカ(キャバ嬢。フィリピン人(母)と日本人の(父)のハーフ)
荒川良々:出口友宏(リサイクルショップ勤務)
あめくみちこ:青木節子(郵便局勤務)
清水 優 :木村正彦(リサイクルショップ勤務)
新井 郁 :山口美由紀(キャバ嬢。)
赤堀雅秋:柳田和男(猟師)
田中哲司:マルセル小林(映画プロデューサー)
あらすじ
神奈川県のはずれ。
駅前の繁華街以外は寂れ、奥には山ばかりが広がる田舎町。
真夏。
リサイクルショップを経営する手島(大森南朋)は、アヤしげな自称・映画プロデューサーのマルセル小林(田中哲司)とつるむ以外、特に楽しいこともなく、日々しけた店を切り盛りしている。
従業員は態度のでかい出口(荒川良々)と、やる気ばかりで空回りの木村(清水優)の二人。
彼らの楽しみは飲みに出て、キャバクラでマイカ(門脇麦)や美由紀(新井郁)ら女の子をからかうことくらいしかない。
ある日、郵便局員の節子(あめくみちこ)から「父が死んだので家を整理し、不用品を引き取って欲しい」という依頼が。
手島たちは節子の家と蔵を物色するが、木村が蔵から意外な「もの」を見つける。
山から時折聞こえる銃声。
増え過ぎた鹿が農家の作物を荒らし、その被害が深刻化しているため、他県からも猟師を募って害獣駆除をしているのだという。
手島とマルセルの抱えた「事情」と木村がみつけた「もの」、そしてマイカの切実な望み。
退屈な日常はふとしたはずみで軋み、歪み、彼らは暴走し始めた。
概要
赤堀雅秋プロデュース
『ケダモノ』
[東京公演]
日程・会場:2022年4月21日(木)~5月8日(日) 本多劇場
[札幌公演]
日程・会場:2022年5月14日(土)~15日(日) かでるホール
[大阪公演]
日程・会場:2022年5月20日(金)~5月22日(日) サンケイホールブリーゼ
作・演出・出演:赤堀雅秋
出演:
大森南朋
門脇 麦
荒川良々
あめくみちこ
清水 優
新井 郁
赤堀雅秋
田中哲司
[スタッフ]
作・演出:赤堀雅秋
舞台美術:土岐研一 照明:佐藤 啓 音響:田上篤志 衣裳:坂東智代
ヘアメイク:鎌田直樹 演出進行:松倉良子 舞台監督:南部 丈
宣伝美術:榎本太郎 宣伝写真:江森康之 宣伝衣裳:森 保夫 宣伝ヘアメイク:林 摩規子
宣伝映像:原口貴光 WEBデザイン:齋藤 拓 宣伝・パンフレット編集:大堀久美子
宣伝広報:吉田プロモーション
協力:鈍牛倶楽部 アパッチ ユマニテ 大人計画 阪口京子事務所 アウルム コムレイド
制作協力:PRAGMAX&Entertainment
制作:佐々木康志 新居朋子
プロデューサー:西田圭吾
公式HP:https://www.comrade.jpn.com/kedamono/
公式Twitter:https://twitter.com/kedamono2022/
舞台撮影:引地信彦