8月12日~9月2日 東京国際フォーラム・ホールCで開催される「ワンピース音宴~イーストブルー編」、ミュージカルでもない、コンサートでもない、全く新しいエンターテインメント、それを、あの「ワンピース」でやってしまおうという斬新な企画だ。あの名曲「ウィーアー!」の作曲家でもあり、今回の音楽監督を務める田中公平さんにあの名曲ができた経緯や「ワンピース」で世界中回ったこと、今回のワンピース音宴~イーストブルー編」の見どころなどを語ってもらった。
10年は残る曲を書こうと、絶対に10年は残さないと。ありきたりの曲を書いてもしょうがないなと思っています。
――「ウィーアー!」作曲依頼時のエピソード、古い話で恐縮です。
田中:アニメ1999年10月からの放送で、この年の・・・・・作詞がコンペだったんです。作詞から入ったんですけど、決まるのが遅くって、「どうしたの?」「まだ、作詞、やっています」、そうやって出来たのが藤林聖子さんのあの詞!ぶっ飛んでて素晴らしい詞です。「探し物を探しに行く」のがすごいです。
――インパクトがありますね。
田中:探し物はあるかないか、わからないものを「ある」として探すということ、そういう意味ですよね。そして「ありったけの夢を」って・・・・・・作曲当時の問題はですね、時間がない!依頼が来てから、2週間後には全部出来ていなくちゃいけない、恐ろしい現実(笑)。曲を書く時間は3日ぐらいしかないという感じでしたが、書きました。昔から詞が先で、後から曲をつけるのが好きなんです。詞を読んでいただければわかりますが、詞にリズムがある。「ありったけの夢をかき集めて」それを早口言葉みたいに・・・・・後でみんなに無茶苦茶言われたんですが、「ありったけの夢を♪」ってつけたんです。すごい曲ができたから、これでOKにしてもらおうと思ったら、関係各所から早口言葉で子供が歌えないっていっぱい言われた!でもよかった!押し通して!自分の音楽家としての信念を曲げずに押し通しまくって、それが20年歌われる曲に(押し通さなかったら)こんな風にはなんなかった。ここんところは思うことがあって、10年は残る曲を書こうと、絶対に10年は残さないと。ありきたりの曲を書いてもしょうがないなと思っています。でも、この曲を書いた頃はそんなこと、全く思っていなかったのですが、結果的に20年、残った、すごいです。曲ができまして、アレンジも根岸貴幸さん、彼にやってもらって仮歌入れようという話になって、誰かいないかな?と。うちの事務所のマネージャーが一人、売れないバンドのボーカルを知っていると。「じゃあ、連れてきて」と。来たのがきただにひろしさん。「ちょっとこれ、歌ってみて」って言って・・・・・・いい声しているし、歌上手いじゃん!「仮歌、どうもお疲れ様」って言って本当はそこで終わっていた話なんです。コロンビアさんにそれを出したら、「きただにさん、すごい、いいじゃないの」「じゃあ、きただにさんにしましょうか」っていう話です。それできただにさんの人生がこんなに変わるとは!今、彼は世界中で歌っていますものね。とにかく「ウィーアー!」は日本を代表する歌ですよ。きただにくんは私に足を向けて寝れない(笑)。
自分が20年前に作った曲を、知らない外国の人が日本語で歌ってくれている、すごいですよねーー!!
――世界中に演奏に行っていらっしゃるそうですが現地の聴衆の反応は?
田中:すごいですよ!のべ15カ国行っています。パリは4回、ロンドン1回、それからデンマークでやって香港・・・・・・台湾で3回やって、今度、イタリアも行きます。オーケストラコンサートはよくやるんです。私が一人で行って向こうはオーケストラが待っていてくれて、練習して本番やるんですが、パリ管弦楽団でやった時もロンドンのロイヤルフィルハーモニー管弦楽団でやった時も、舞台に立って観客席を見渡すと日本人が誰もいないです。オーケストラには時々日本人がいたりするんですが、「おお〜ここで日本人は私一人だけだー」それで聴衆が日本語で歌っていて「すごいな〜」と思いますね。みんな、一緒に歌ってくれるし、すごく盛り上がっていつも最後に「ウィーアー!」をオーケストラで演奏するんですが、私が指揮をして最後に「みんなで歌いましょう」と後ろ向くともう、みんな歌っていて・・・・・・すごいっすよ!もしも、皆さん、あそこの指揮台に立ったら泣くぞ、絶対に!自分が20年前に作った曲を、知らない外国の人が日本語で歌ってくれている、すごいですよねーー!!こんなこと、ないっすよね。1番は完璧に歌えるんです。2番はね、始まったら、1番と2番が混じって無茶苦茶になるんです(笑)。
――1番だけでも完璧に歌えるなんてすごいですよ。
田中:すごいですよ。もう、指揮台から見たら全員の顔がわかる、歌っているなーって。うん、日本を代表するコンテンツですよ、アニメっていうのは。「ワンピース」は世界中の誰もが知っていますね。
――「ワンピース」と「美少女戦士セーラームーン」は本当にすごいですよね。
田中:本当!あとは国によって違うんですけどフランスは「聖闘士聖矢」なんですよ。あとはW杯もありましたが「キャプテン翼」はみんな好き(笑)
――日本の漫画は、本当によく知られていますね。
田中:各国回っていると面白いですよ。日本のアニメで何知っていますか?って聞くと・・・・・・一番面白いのはドイツです。絶対に当たんない。
――え〜。
田中:「みなしごハッチ」。
――え〜。
田中:朝の6時か7時からずーっと何十年もやっていたので子供はみんな見ているんです!「みなしごハッチ」の話は共通ですよ。すごい!日本にいたらわかんない。
――イタリアでは「赤毛のアン」は原作より先にアニメが上陸して、イタリアの子供たちは「赤毛のアン」は日本のアニメだと思っているらしいです(笑)
田中:「フランダースの犬」で有名なベルギーは日本語の碑があるらしいですね。
――ファンが聖地巡礼に行きますからね。
田中:世界中の子供たちって同じようなシンパシーがあるから、日本の子供たちに向けて作れば世界中の子供たちに受け入れられるというのが私の考えで、音楽も、もちろんそうです。音楽は世界に輸出するものだからいい音楽書かないと!だからいい曲書いて、世界中に届けて良かったな、と思っています。今はYouTube!サウジアラビアに行って「ワンピース」の演奏会やってサイン会もやりました。「なんで知っているの?」って聞いたら「YouTubeで『ワンピース』やってたから」って言われました。
――YouTubeが出現して広まるのは早くなりましたね。
田中:早いですね〜。YouTubeは下に字幕なんて出ないですからね。だから「これ、何言ってんだろう」って意味を知りたくて日本語を勉強するんです。そういう人はやたら日本語うまい!しかもいっぱいいる!フィンランドに行った時も「日本人じゃないのか?」って思うくらい日本語がうまい。
――昔「TVチャンピオン」で外国人選手権でアニメの映像が流れて早押ししてセリフ言うっていうのがありましたが、一瞬でボタン押して、完璧な日本語でセリフをスラスラと!
田中:すごいですよ!あの人たちは全部覚えている!私がちょっと間違えると!もう(笑)。
――完璧に覚えていますね。
田中:素晴らしいことだと思うんです。「サクラ大戦」でアメリカに行った時「すみれさんのあの時のセリフはすごかったです」って言われました。
日本も負けないくらいの素晴らしいものを作れば海外に売れる。しかも日本のアニソンは世界中に受け入れられているんだから。
――小中高の学生の吹奏楽とか鼓笛隊で演奏されていると思うんですが、そういう反応って聞いたことがありますか?
田中:高校野球とかでかかるアニメの曲が「宇宙戦艦ヤマト」と「ルパン3世」しかかかんない時代があったんですよ。「なんで?」と思ったら楽譜が出版されていた。つまり、他のアニメの人たちは吹奏楽に向けて楽譜の出版をしていなかったんです。それで6年か7年か前にそういう企画を立ち上げて「ウィーアー!」とかを吹奏楽に編曲して、そうしたらそこらじゅうで「ウィーアー!」ですよ。やらなきゃいけないことはやらないと。
――自分の好きなアニソンを自分の手で演奏するのは楽しいですよね。
田中:そりゃあ、楽しいですよ。今まで楽譜を出さなかったんで、吹奏楽の先生が勝手に編曲して、それが間違っている音でやっていたりするので・・・・・・「ウィーアー!」は特にそうなんです。それでプロジェクトを6年ぐらい前に立ち上げて、東京芸術劇場で2回、目黒のパーシモンホールで2回程ですが、ブラスバンドのコンサートをやったところ、吹奏楽団の人たちがいっぱい来てくれたし、それがきっかけで吹奏楽好きも増えたし、アニメの音楽を吹奏楽でやってくれる機会が増えた。もっとやろうかなと。それがこれにつながるんだから面白いよな!
――吹奏楽ですからね。
田中:そうなんですよ!最初は何も考えずにそれだけやろうと思った。そうしたらこうしてみてくれて次につながるという・・・・・・いい話ですね。
――企画が立ち上がっていい方向に話が進んで。
田中:いいですね。これは演出の金谷さんが企画されて、キョードー東京に持っていってこういう話になったんです。金谷さんと私はテーマパークで「ワンピース」でずっと一緒に仕事をしてまして世界的に、なんかやりたいねって言ってたんです。私は「ワンピース」のミュージカルをやってしかも「ワンピース」なら海外に持っていけると思ったんです。今、日本で海外ミュージカルが多く上演されているのは作品が素晴らしいからです。日本も負けないくらいの素晴らしいものを作れば海外に売れる。しかも日本のアニソンは世界中に受け入れられているんだから。で、ミュージカルやろうと思っていたんですがいろいろあってうまくいかない。そうしたらこの話が来たんですよ。「あれ、これセリフないし」・・・・・・パッケージにすれば海外に売りやすいし、世界中の「ワンピース」ファンが見てくれる。オーケストラでは行っていますが、これは「オペラ座の怪人」並みに、海外に持っていける、ビジネスモデルもできるのではないかと思っています。
――「ワンピース」はみんな好きですから、きっと。
田中:今回、すごいらしいです(笑)
――本当ですか?
田中:「見て泣いちゃいました」って(笑)。
――これだけの大きなプロジェクトなら海外に持っていけるんじゃないでしょうか。
田中:「とにかく輸出しようよ」と。少しでもいいから!アニメの人には言っているんですよ「海外に行って向こうで歌え。絶対にすごいから」って。やるべきなんですよ!
完璧なマンパワーの迫力を「ワンピース」の世界に入って感じて欲しい。みんなで同じ気持ちになって「ワンピース」の世界に入って全員で盛り上がろう!
――今回の聴きどころ、見所は?
田中:1部は名場面ですね。一番いいところをやるので、涙、涙の展開になる、見ただけで本当に泣くと思いますよ。1部終わった時に「もう、お腹いっぱいだから2部、いらないんじゃないの?」って(笑)。もう、お腹いっぱいだよって。でも、せっかくだから2部やらないと!ヒットメドレーになりますので、これは盛り上がりますね。1部でドキドキして2部でワクワクしてください。
――1部でドキドキ、2部でワクワク、いいフレーズですね。最後に締めのPRを。
田中:とにかく、人間が自分の目の前で精一杯の力を振り絞って出せる音を全て出すという、このマンパワー!
――全て。
田中:シンセサイザーとかは使いません!完璧なマンパワーの迫力を「ワンピース」の世界に入って感じて欲しい。みんなで同じ気持ちになって「ワンピース」の世界に入って全員で盛り上がろう!ということですね!
――会見はYouTubeで拝見しましたけど、これは盛り上がりますね。
田中:ありがとう!
――楽しみにしています。実は小学生の頃、鼓笛隊に入っていたんです。
田中:何、やっていたの?
――ベルリラです。リラグロッケンとも呼ばれていて、歩きながら演奏できる鉄琴です。
田中:いいねぇ。ウソップのところは鼓笛隊でやるんですよ。ちょうど、鼓笛隊ってどういう楽器があったかな?っていう話になったんです。リコーダーとピアニカは入れたんだけど。
――これ、入れると音が華やかなのと、ソロが入ると変化がつきます。
田中:いいねぇ。
――採用されるのを楽しみにしています(笑)。
【公演概要】
ワンピース音宴(おとうたげ)
イーストブルー編
2018 年8 月12 日(日)~9 月2 日(日) 全28公演
東京国際フォーラム・ホールC(東京・有楽町)
原作:尾田 栄一郎(集英社『週刊少年ジャンプ』連載中)
演出・構成・振付 :金谷かほり
音楽監督 :田中公平
出演:ルフィ役:松浦 司 cv:田中 真弓 /ゾロ役:福地 教光 cv:中井 和哉 /ウソップ役:森 良平 cv:山口 勝平 / サンジ役:高澤 礁太 cv:平田 広明 / ナミ役:大北 岬 cv:岡村 明美/シャンクス役:村瀬 文宣/ミホーク役:宇乃 徹/アーロン役:田中 精/石川 直/米所 裕夢/中部 敬之/三上 悠/西田 剛/田辺 栞/アマンダ・ベイトマン/リサ・ライザネック・チャペル/グラハム・ローズ他、 日米混合キャスト35名
主催:キョードー東京/フジテレビジョン/東映アニメーション音楽出版
協賛:伊藤園
後援:BSフジ/WOWOW
監修:集英社/東映アニメーション
企画制作:キョードー東京
料金:S席9,800円、 A席8,300円、 B席6,800円 *3歳以下のご入場はお断り致します。
公式ホームページ: https://otoutage.com
公式SNS Facebook:http://www.facebook.com/onepieceotoutage
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文:Hiromi Koh