芥川賞作家・上田岳弘の文学に共鳴する高橋一生が、上田に書下ろしを提案した本作品。
疫病があっという間に世界を覆い、東京オリンピックがなくなったあの年、2020年を起点に、はるか昔、人類の誕生から、はるか先?の世界の終わりまでを、高橋一生の声、肉体、動きを通して目撃する80分!
「クロマニヨン人」「赤ちゃん工場の工場主」「最高製品を売る男」そして「最後の人間」。彼ら登場人物=高橋一生の挑発に、あなた=観客はどう応えるのか。舞台に立つ一人の男の叫びは、私たちの心の葛藤を浮き彫りにする。構成・演出は、これまで高橋一生と『4 four』(2012年)『マーキュリー・ファー』(2015年)『レディエント・バーミン』(2016年)で高い成果を見せた白井晃。
6年ぶりの最強タッグ復活で、今、私たちが飲み込まれつつある現実と未来に強烈な光を当てる。またステージング・振付・DANCERとして橋本ロマンスが参加する。映像、音楽、ダンスが彩る、高橋一生による一人芝居『2020』。高橋一生×上田岳弘×白井晃のトライアングルが奏でる〝挑発の調べ′′。
客席から高橋一生が登場、マスクをつけている、まさに現代。舞台に上がってからマスクを外す。開口一番「沈黙は金!」。「沈黙は金」の語源はイギリス、「Speech is silver, silence is golden」。
日本語に訳すと、「雄弁は銀、沈黙は金」。立板に水のごとくに喋り続ける。映像演出、次々と。バベルの塔、あの有名な絵が映し出される、旧約聖書の「創世記」中に登場する巨大な塔。天にも届く神の領域まで手を伸ばす塔を建設しようとして、崩れる。そしてクロマニヨン人、キリストが生まれる遥か昔。高橋一生、ここで毛むくじゃらのカツラなどをかぶって!それから映像、ラスコー洞窟の壁画、人々は狩をして暮らしていた。火(映像)を起こす、肉にかぶりつく。
トントンと舞台は進んでいく。歴史の時間軸通りに進むと思いきや、そうではない。次から次へと様々なシーンが紡がれる。橋本ロマンスのダンスがエモーショナル、作品を彩る。特攻隊の話、大田正一、日本の海軍軍人、特攻兵器桜花の発案者の話、また動物のレミングの話、実に様々な話がどんどん出てくる、高橋一生はそれに合わせて役を演じるわけだが、とにかく素早い演じ分け、歌も歌う。
高橋一生は会見で「見どころは全部」と言っていたが、目は舞台に釘付けになる。ところどころ、心に刺さる台詞、「正しさによって口を塞がれることになる」「この体でできることは限られている」不可思議さ、奥深さ、象徴的なエピソード、そのつなぎ方。
ラストは、再び冒頭の言葉に戻る「沈黙は金…」。解釈は観客の数だけある。「2020」、この数字は決して忘れ去られることはない。
まず、ゲネプロの前に会見。登壇したのは、高橋一生、上田岳弘(作)、白井晃(構成・演出)。
抱負を聞かれて。
高橋一生「抱負は持たないようにしているんです。これまで通りですね。1ヶ月近く稽古をしたのですが、その半分はお二人との会話に費やしました。楽しくできるかなと思います」とコメント。
上田岳弘「まず、1人舞台をしようと。キーワードは2020。お一人なので最後までギリギリまで追い込む、すごいなと」
白井晃「上田さんの文学を演劇に『難しい』という声が。何度か打ち合わせして3人で議論、チームの力でまとめました。刺激的で興味深い作品になりました。高橋くんの踏ん張りがはたで見て、腹立たしいくらいに素晴らしい」
上田、白井、高橋一生を絶賛する。
見どころを聞かれて高橋一生は「全部観てほしいんですが、ビジュアル的には被り物ですかね」と。また長丁場なので「思った以上に塩分とってなかったなと。朝、体が重い、すごく汗かくんで。夏バテ防止に(塩分)タブレットを購入したら、俄然、良くなりました。水分摂ってるつもりだったのに」と塩分不足を実感。
1人舞台は体力、気力、白井晃は「難易度の高い舞台、1人でやるのは本当に大変なこと、でも稽古を見ててどんどん良くなっていく、『なんだ?こいつは?』と」とコメント。昨日通し稽古をしたそうで高橋一生は「白井さんがものすごい動いてて反響しやすいのかな?白井さんの声が聞こえて気が散って」と笑いを誘った。さらに「客席の反応を期待しています、1人なのでお客様と対峙するので反応が楽しみです」。上田岳弘は「僕の作品は難解と言われてて。この作品は3万字以上あるんです。それって原稿用紙でいうと100枚以上。そういったものを一人で演じられるのか半信半疑でいたんですが、実際に見ると成り立っていてすごいなと思いました」と語り、それを受けて高橋一生は「今、聞いてびっくりしました」とコメント。稽古の前半はほぼ話し合いだったようで「稽古初期はほぼ話し合い、有効な時間でした」とコメント。ここで時間となり、会見は終了した。
概要
パルコ・プロデュース2022『2020』
作:上田岳弘
構成・演出:白井晃
出演:高橋一生
ステージング・振付/DANCER:橋本ロマンス
東京:2022年7月7日(木)~7月31日(日) PARCO劇場
問合:03-3477-5858(時間短縮営業中)
福岡:2022年8月6日(土)~8月7日(日) キャナルシティ劇場
問合:050-3539-8330(平日12:00~15:00)
京都:2022年8月11日(木祝) 京都劇場
問合:0570-200-888[11:00~16:00/日祝休業]
大阪:2022年8月18日(木)~8月21日(日) 森ノ宮ピロティホール
問合:0570-200-888[11:00~16:00/日祝休業]