香港と日本在住の舞台人が共同製作した新作ミュージカルが開幕する。香港在住の舞台人と日本の舞台人の共同制作。試行錯誤し、ワークショップを繰り返した末のトライアウト、そして公演となる。
出だしはコンテンポラリーダンスのよう、俳優陣、ダンサーが舞う。客席からも登場し、ダンス。そしてコートを着た男性が登場、物語が動き出す。歌、「何かが変わった」「何も変わらない」と。その”何か”、不確実な、不透明なもの。そして、香港の街、ワイワイと人々が。広東語、英語、日本語が入り乱れる。香港、現在は中華人民共和国の南部にある特別行政区である。広東語を話す人々、その元は隣接する広東省、1930年代から1960年代に中国での戦争や共産主義体制からイギリスの植民地であった香港に逃れて来た人々であった。戦後はイギリス統治が再開され、1997年まで続いたのは周知の通り。香港は世界有数の1人当たりの所得を有するが、先進経済諸国有数の所得格差もまた存在、つまり富める者とそうでない者の差は激しい。物語の中心人物は貧しい若者、叉焼仔(チャーシューザイ)、彼の幼馴染のオーウェン、そして幼馴染の女性。時は現代、ただ、ただ、毎日を生きる叉焼仔。幼馴染の彼女が気になっているものの、イマイチ素直になれない。彼女の方も、そんな叉焼仔の気持ちは知ってるのか知らないのか、会えば口喧嘩。
そこへオーウェンが香港に戻ってきた。叉焼仔とは違ってパリッとしたスーツを着こなし、部下から「社長」と呼ばれる。名家の跡取りであると同時に世界をまたにかけるビジネスマンでもある。叉焼仔の持ってないものを全て持っている。仲は良いが真逆な2人。そんな彼らを取り巻く人々、母ちゃん、3人を、皆を温かく見守る。キップがよく、頼りになる存在。
わちゃわちゃといろんな人々が、もちろん観光客もいる。日本からやってきたという観光客、今風、動画をUPさせることに余念がない。香港といえば、美味しいもの!北京ダックを注文する下りは賑やかで歌も楽しい、広東語講座のよう(笑)。2人の間で揺れ動く彼女、この微妙なトライアングルも気になるが、それもさることながら、香港の雰囲気や空気を感じつつ、普遍的なものも描いている。
時代の空気、基本的には港町だったので、さまざまな文化が交差するところでもあり、また、歴史的背景から見てグローバルでインターナショナル。オーウェンはまさに、世界を相手にビジネス。その一方で叉焼仔、閉塞感の中で生きているが、どこか自由な感じにも受け取れる。コロナ禍、香港は外交権と軍事権以外の「完全な自治権」が認められているわけではない。自由でありながら、そうではない側面もある。それを面と向かって語りはしないが、香港の複雑さをそこはかとなく感じさせる。日本語、英語、広東語、字幕はあえてつけていない、言葉をそのまま感じて観れば自ずとわかる。そんな香港の息遣いが感じられる作品。
あらすじ
あなたのまちの夕焼けは何色ですか
貧しい若者、叉焼仔(チャーシューザイ)は毎日をひたすら生きている。幼なじみの女性に恋心を抱きつつも、素直になれず、会えば口喧嘩ばかり。そんな折、オーウェンがイギリスから香港に戻って来る。オーウェンは叉焼仔たちの幼なじみだが、香港の名家、ホー家の跡取りでもある。彼が帰国した理由はーー。
世界的に自分たちのコントロールが及ばない状況の中、受け継いできた文化、これまでの価値観が通用しない中で、若者たちは「今」を「なぜ」「どう」生きるのか。手を伸ばしもがきつづける。
あの日の夕焼けを探して……。
俳優たち、ダンサーたちのエネルギーがさく裂する、今しか観られない作品を、どうぞ、お見逃しなく。
概要
タイトル|香港スケッチ
日程・会場|2022年7月6日(水)-10日(日)座・高円寺
アフタートーク※※※①7月8日(金)14時の回終演後 ファニーサム、藤森裕美、坂口阿紀、緒方桃子
アフタートーク②7月9日(土)14時の回終演後 ファニーサム、釈人、梅沢鮎実、緒方桃子
演出|坂口阿紀 作・音楽|緒方桃子 音楽監督|羅健邦(ポン・ロー)
振付|三枝宏次 今宮多力香 美術|トクマスヒロミ
出演|岑君宜ファニー・サム 釈人 藤森裕美(イッツフォーリーズ)
明羽美姫(イッツフォーリーズ) 仁木祥太郎(テアトル・エコー放送映画部)
三枝宏次 渡邉春菜 梅沢鮎実 岡山玲奈(劇団スーパー・エキセントリック・シアター)
あかまつひでのぶ 柳内佑介 半澤昇(イッツフォーリーズ)
近藤萌音(イッツフォーリーズ) 羅文賢ラブンケン
提携 NPO法人劇場想像ネットワーク/座・高円寺 |協力 株式会社オールスタッフ/ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズ、他 |協賛 香港芸術発展局 |認定 公益社団法人企業メセナ協議会による「2021 Arts Fund」 |主催 香港スケッチ実行委員会
※本公演は、杉並区とパートナーシップ協定を結ぶ日本劇作家協会が、会員応募作品より座・高円寺に推薦する「日本劇作家協会プログラム」(夏の劇場09)です。
※※本公演は、香港の文化庁にあたる香港芸術発展局による助成を受けております。
※※※アフタートークでは、香港スケッチがなぜ生まれたのか、演劇による国際交流や役作りについてそれぞれの想いを話します。
香港スケッチ公式HP https://www.hongkongsketches.com/
香港スケッチ公式YouTube https://www.youtube.com/hongkongsketchesthemusical
30人以上の日本・香港の舞台人・映像作家・歌手が参加し、オール香港ロケで製作したミュージカル使用曲MV “Trees” https://www.youtube.com/watch?v=drjzHdQtF6w
香港スケッチ公式Twitter https://twitter.com/HKSketches
香港スケッチ公式Facebook https://www.facebook.com/hongkongsketches