つかこうへいの命日にあたる7月10日、今年は十三回忌を迎える。最後の追悼公演となる今年「つかこうへい Lonely 13 Blues」と銘打ち、ホームグラウンドである紀伊國屋ホールで 「蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く」と「初級革命講座 飛龍伝」の連続公演を上演することになった。
「蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く」は、2020年にコロナ対策における緊急事態宣言の影響により上演中止となった。直後に朗読劇へと変更され、乗り切った。今年は、名作「蒲田行進曲」の完結編にして完全版。
まずは、この「蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く」が開幕。
誰もが知っている『蒲田行進曲』は、『熱海殺人事件』『ロマンス』等と並ぶつかこうへいの代表作の一つ。その続編として『蒲田行進曲完結編〜銀ちゃんが逝く』が作られた。
物語の出だし、ヤス(石田明)が登場し「銀ちゃんが死んだ」と。倉岡銀四郎(味方良介)ら登場、派手なオープニング。そして時間が遡る。撮影所では、新撰組の撮影が行われていた。
土方歳三を演じるのは、もちろんスター・倉岡銀四郎。彼の子を身ごもった人気女優・子夏(北野日奈子)、銀ちゃんは小夏をヤスに押し付ける。銀ちゃんを崇拝するヤス、もちろん「NO」とは言わない。ヤスは、出産費用を稼ぐために「新撰組・池田屋階段落ち」のシーンに挑戦する。失敗すれば死に至るかもしれない、体を張ってまで費用を稼ぐヤス、小夏は無事に女の子を出産、ルリ子と名付けられたが、不治の病に犯されていた。しかも小夏の心はやはりヤスではなく銀ちゃん。当の銀ちゃんは、ルリ子の病は自分のせいと思い込む。新たな「新撰組」の撮影が始まり、銀ちゃんは「函館の石階段落ち」に挑戦する。
有名すぎるくらい有名だが、見入ってしまうのは作品のパワー。セリフ一つ一つが圧倒的な熱量を持っている。歌舞伎界の大御所のひとり息子中村屋喜三郎(細貝圭)、彼も銀ちゃんに負けず劣らず、スター然としており、銀ちゃんを見下す。ヤスにとっては憧れの銀ちゃん、彼のためならなんだってする、そして「銀ちゃん、かっこいい!!」と叫ぶ。どこまでも銀ちゃんが好き、好きすぎる、その底知れない熱い気持ち。当の銀ちゃんは、どこまでもスター、カメラは自分だけ撮ってればいいと思っている。後半、銀ちゃんはルリ子のために体を張る決意をする。ヤスの銀ちゃんへの限りない熱い思い、銀ちゃんの意地とスターとしてのプライド、自分の子供への無償の愛、殴られてもなお、銀ちゃんを愛する小夏、熱い物語、実は深い。中村屋喜三郎は名門の生まれ、銀ちゃんのような成り上がり者は面白くない、あからさまな差別。しかも銀ちゃんは自分の出生のせいでルリ子が病気になったと思っている。セリフの一つ一つに作家の魂がこもっている作品。
また、この「蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く」、8月にCS放送「TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画」でテレビ初独占放送(https://www.tbs.co.jp/tbs-ch/information/2022_0708_1300.html)。
このあとは「初級革命講座 飛龍伝」の公演が控えている。両方に出演する俳優陣もいるが、この暑いシーズン、無事に乗り切って欲しい。
なお、今回の追悼公演、会見が行われた。
演出:岡村俊一
演出の岡村です。お忙しい中お集まりいただき誠にありがとうございます。
今年で早12年となってしまいました。ずっと追悼公演をたまたま預からせていただいて、
12年もの間続くとは思っていなかったんですが、未だに紀伊國屋ホールでは、つかこうへいの作品やっているっていう、事実を残せたことが何よりも喜びであり、誇りであると思っております。
作品を簡単に説明しますと、「蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く」というのは、つかさんが直木賞を蒲田行進曲でお取りになった、5年後ぐらいにその続編、完結編として発表された小説が元になっております。
それを後に舞台化しているのですが、これはまるでつかさんの遺書であるかのような読み方を個人的にはしておりまして、銀ちゃんの生き方そのものが、つかさんの人生だったのではないか、みたいなイメージで構成・演出させていただきました。
つかさんの、銀ちゃんのデンドロ、香典泥棒として育ったっていう表現をなさってるんですけども、ずっと考えてますけど、なぜ香典泥棒なんだろうって。
たとえ話として考えてみ、人の悲しみや痛みを金に換えて生きている、っていうことを自分の中で後ろめたくというか、何かを言いたかったんだろうなって思いながら、いつもこの作品を作りながら思ってました。
その香典泥棒だったやつが、何が何でも世の中をハッピーエンドにしてみせるっていう意地みたいなものを、銀ちゃんの役に込められているんじゃないかと思いながら、演出していました。
そして飛龍伝というのは、僕は初めて「飛龍伝90」っていう、つかさんの代表作になった、読売文学賞をとった傑作があるんですが、それの元となった原作のものです。
「初級革命講座 飛龍伝」を元にして「飛龍伝90」が生まれて、皆さんご存知の「神林美智子の生涯」っていう飛龍伝は、「初級革命講座 飛龍伝」があって初めて生まれたもの。
その原作となるものという意味で13回忌の公演に、ちゃんと元通りにして上演できればと思って、今回企画いたしました。
この2本とも一生懸命俳優たちが汗を流して、血を流して作っておりますので、ぜひご紹介のほうよろしくお願い致します。
【蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く】
味方良介
倉岡銀四郎を演じます、味方良介です。
この倉岡銀四郎という人物は、僕はお会いすることができなかったつかこうへいさん自身が投影されていると思っていて、それを演じる責任だったり覚悟、そういうものが僕の中で、今までつかさんの作品に携わってきた中でもっとも大きくて重くて。
だからこそ責任というか覚悟、全部をかけて、この作品を成功させたいなと、みなさんにお届けできたらいいなと思っております。ありがとうございます。
北野日奈子
小夏役の北野日奈子です。
私は今回初めてつかこうへいさんの作品に挑戦するんですが、つかこうへい作品の先輩方に囲まれて、いろいろなことを教えていただいたので、今日から始まるゲネプロ、初日、最終日まで一生懸命駆け抜けたいと思いますし、この時間でしか小夏として過ごせないので、一生に一回の小夏としての人生を一生懸命、全身全霊で頑張っていきたいと思います。
よろしくお願いします。
石田明
村岡安次役の石田明と申します。
今日初日を迎えるということで、ハリーポッターも初日。同じ会社のエハラマサヒロが出ているんですね。すごいセットの中、すごい期間やると思うんです。
僕たちは見ての通りセットほぼなし。という中、公演期間も短いんですけど、その分濃縮した濃いものを届けれたらなと思ってます。
質問①:味方さんへ、銀ちゃんを演じることへの想いなどお聞かせいただけますか?
味方:倉岡銀四郎という人物、僕が思い描くつかこうへいさん自身の、僕は今まで熱海殺人事件の木村伝兵衛だったり、幕末純情伝で桂、坂本だったりとかたくさんの役をやらせて頂いたんですけど、その中でも1番つかさんの理想像だったり、みんなが目撃してきたつかさん自身ではないかなと思っていて、だからこそ僕が向き合ってきた作品たちとの、僕が木村伝兵衛とコミュニケーションしてきた時間だったりとかっていうのを詰め込んで、全てのいいところ、悪いところを全部もらってこの倉岡銀四郎を創っている感じですね。
質問②:石田さんへ、ヤスを演じることへの想いなどお聞かせいただけますか?
石田:かねてからずっと味方とやりたいな、やりたいなと言っていまして、味方とは出会って結構長いんですけど、ここ10年くらい1番お酒を飲み交わしているのは、味方だと僕は思います。ホンマにそれくらい仲が良くて、この仲の良さが本当に銀ちゃんとヤスの関係だと僕は思っていまして、それがこうやって舞台で生きる時が来るのっていうのは僕は感慨深く思っていまして、ヤスという歴代のたくさんの素敵な俳優の方がやってきたものを汚さず、かつ、より攻めて誰も演じていないヤスにたどり着けたらなと思います。
質問③:北野さんへ、乃木坂46卒業後、初の舞台と承っています。小夏役への思いとともに、今後の活動への意気込みもお聞かせください。
北野:小夏さんは自分の人生では、経験したことが無い人生を歩んでいて、北野日奈子としては全然分からないけど、この作品に入って、皆さんから受け取る感情でやっと小夏さんを理解できるようになって、すごく暖かくて、みんなに愛される小夏さんなので、私もこの舞台に立っている間は、皆さんから愛されていると思い込んで、頑張りたいと思いますし、卒業後初めての大きいお仕事で、本当に素晴らしい皆さんの中に入ってこういう経験が出来ることを本当に幸せに思いますし、このタイミングで卒業して、このタイミングでこの作品に出会えたことに本当に感謝しています。最後まで頑張ります。
【初級革命講座 飛龍伝】
高橋龍輝
初級革命講座飛龍伝で山崎を演じさせていていただきます。高橋龍輝です。
僕が初めて初級を観たのは約7年前の「つかこうへいTriple Impact」の時で、この紀伊国屋ホールで見て、すごく人間の強さというものを感じ衝撃を受けたことを今でも覚えております。本番では、その受けた衝撃を皆さんに与えられるように、全力で楽しんでいきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
佐々木ありさ
この度、アイ子と小夜子役を務めさせていただく事になりました、佐々木ありさと申します。私にとっては憧れの紀伊国屋ホールで念願のつかこうへいさんの作品に出演出来るということで、とても幸せを噛みしめております。やるからには全力で、死ぬ気でやりたいと思います。よろしくお願いいたします。
久保田創
久保田創です。よろしくお願いいたします。今回初級革命講座という作品は、1980年の作品で、もう40年も前の作品となるのですが、この作品は、熊田という男が帰ってくるのをみんなで待っているという作品なんですけど、この紀伊国屋で13回忌にやれることでまた皆さんのそれぞれの心の中につかさんが戻ってきてくれるように、一生懸命努めたいと思いますので、ぜひ劇場に足を運んでいただけましたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。
【最後に代表して味方良介より】
味方良介
13回忌ということで、たくさんの人の思いが詰まったこの紀伊国屋ホールです。この2つの作品を通して、つかこうへいが生きているんだな、演劇って生きてるんだなと、皆様に思っていただけるよう全身全霊で、死ぬ覚悟と言いますか、死んでもいいと思って、戦いますのでぜひ応援よろしくお願いします。
概要
「蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く」
日程会場:2022年7月8日(金)~7月18日(月祝) 紀伊國屋ホール
作:つかこうへい
演出:岡村俊一
出演
倉岡銀四郎:味方良介
ヤス:石田明
小夏:北野日奈子
中村屋喜三郎:細貝 圭
ケン:中本大賀 (円神)
高橋龍輝
佐久本宝
河本祐貴
監督:久保田創
「初級革命講座 飛龍伝」
日程会場:2022年7月23日(土)~7月25日(月) 紀伊國屋ホール
作:つかこうへい
演出:岡村俊一
出演
山崎:高橋龍輝
熊田:吉田智則
小夜子:佐々木ありさ
久保田創
※「初級革命講座 飛龍伝」は全公演終演後にゲスト・トークショーあり
提携:紀伊國屋書店
制作:つかこうへい事務所
企画・製作:アール・ユー・ピー
問合:03-6265-3201(平日 12:00~17:00)