2022年11月3日に世田谷パブリックシアターで舞台「夏の砂の上」が開幕。
1998年に初演された本作は、劇作家・演出家の松田正隆が生まれ育った長崎を舞台に描いた作品で、1999 年 読売文学賞戯曲・シナリオ賞を受賞した松田の代表作の一つ。
長崎を舞台に、職をなくし妻に家出された主人公と彼を取り巻く人物たちの間で交わされる会話から、一見淡々と した日々に漂う、抗いようのない悲哀や心の乾きが滲みだす名作。
栗山民也より
ずっと大事にしてきた作品の初日を、無事迎えることができました。それぞれの登場人物が、それぞれの過去の記憶とともに、舞台の上で静かに 弾け、それぞれがじっと沈黙します。そのなんとも虚無的な人々の光景 は、夏が終わっていくように何も変わることなくラストシーンに向かいます。 変わったことといえば、指を三本無くしてしまったという事実だけ。幕が降 り、今まで緩やかに流れていた風が止み、そこにいくつかの穴が開いたよ うな気分。乾き切った夏の砂の上に、ただ一人ボンヤリ取り残されたかの ような。 二十数年前に生まれたこの長崎の物語が、今のこの空虚な時代と妙に重 なって見えます。わたしたちと同じ不可解で素敵な人間たちに出会えたこ とに、感謝!
田中圭より
夏の砂の上。たった今初日を終えました。
本日 11 月 3 日はとても縁起のよい日らしく、そのパワーも借りて、ハプニ ングもありましたし、台詞も間違えましたが、結果良い初日になったんじゃ ないかなと思っております。
とても楽しかったです。 汗ひとつかかない舞台も初なのですが、とにかく面白いこの本を、栗山さ んのもと頼りになるキャストと一緒に生きられるのは嬉しく思います。 あとはどれだけ変化、進化していくかもとても楽しみです。 皆様、是非劇場で見てみてください。 なかなか見れない舞台なのは間違いないので、皆様、是非お見逃しなくです!!
西田尚美より
日常を演じることの難しさと毎日たたかってきて、やっと初日を迎えられて とても嬉しいです。でもきっとそれは、千秋楽まで続いていくのだろうと思 います。人と人が話すこと、聞くこと、感じること、言葉の裏にあること、栗 山さんとのお稽古で何度も思考したけど、本当に尽きないのです。じーっ と耳を澄ませて、あの小さな畳の部屋に存在したい。生きたい。あの人た ちが、あの場所で必死に生きていたと想像してもらえるように。がんばります。
山田杏奈より
のような状況のなかで無事全員揃って初日を迎えられたことにひとま ず安堵の気持ちでいっぱいです。私はこの作品で初めて舞台に立たせ ていただきます、お客さんのまえで芝居をするという経験も初めてに近い です。
この 1 ヶ月間濃密な稽古の期間を過ごさせていただいていましたがそ れがある意味まっさらになるくらいひとつひとつがその場でその瞬間に新 鮮に生み出されていって、舞台は生ものという言葉を身をもって実感して います。
稽古期間中に栗山さんをはじめとしたスタッフのみなさん、そして役者 の先輩方からたくさん声をかけていただいたことを一つ一つ大切に最後 まで走り抜けられるようがんばります。
あらすじ
ある地方都市、坂のある街。 坂にへばりつく家々は、港を臨む。 港には錆びついた造船所。 夏の日。
造船所の職を失い、妻・恵子に捨てられた小浦治のもとに、家を出た恵子が現れる。恵子は 4 歳で亡くなった息 子の位牌を引き取りに訪れたのだが、治は薄々、元同僚と恵子の関係に気づいていた。 その時、治の妹・阿佐子が 16 歳の娘・優子と共に東京からやってくる。阿佐子は借金返済のため福岡でスナック を開くと言い、治に優子を押し付けるように預けて出て行ってしまう。
治と優子の同居生活が始まる。
概要
公演タイトル: 『夏の砂の上』
日程・会場:2022年11月3日(木・祝)~ 11月20日(日) 世田谷パブリックシアター
ツアー公演あり。
作:松田正隆
演出:栗山民也 出演:田中圭 西田尚美 山田杏奈
尾上寛之 松岡依都美 粕谷吉洋 深谷美歩 三村和敬
プロデューサー:大下玲美
芸術監督:白井晃
主催:公益財団法人せたがや文化財団
企画制作:世田谷パブリックシアター
後援:世田谷区
公式サイト:https://setagaya-pt.jp/
撮影:細野晋司