小出恵介主演、舞台「日本昔ばなし」 貧乏神と福の神〜つるの恩返し〜が無事に開幕した。
誰もが知っている日本の昔話、そして誰もが耳にしたことのあるメロディー、「♪坊や 良い子だ ねんねしな♪」アニメの『日本昔ばなし』、市原悦子さんの語り、脳内にあのアニメーションが蘇るほど。その中から『鶴の恩返し』『貧乏神と福の神』『三年寝太郎』を舞台化。これをミックスして一つの作品として上演。また、貧乏神役は仲本工事がキャスティングされていたが、逝去に伴い、星田英利、片岡鶴太郎、生島ヒロシが日替わりで出演。
微風の音、川のせせらぎ、それからあの懐かしい映像、「♪坊や 良い子だ ねんねしな♪」アニメの『日本昔ばなし』、オープニングが懐かしい、そして予め募集していた映像、これが子供たちの笑顔、ほっこりとしたオープニングだ。それから物語が始まるのだが、出だしがちょっと悲壮感漂う。語りのナレーション「むかし、むかし…あるところに正直で働き者の一家がありました」、懐かしいあの人の声!21世紀の技術を使って!子供を背負った母親・はる(安寿ミラ)、だが、背中の子供は笑う。そんな時に一発の銃声が。
一羽の鶴が流れ弾にあたってしまった。鶴の精霊の千羽鶴(原日出子)、子供をはるに託していなくなり、そこへ甚左衛門(中西良太)と長兵衛(丹羽貞仁)の庄屋の親子がやってくる。銃声の主は長兵衛だった。もちろん、そんなこと言えるはずもなく、その精霊の子供は甚左衛門と長兵衛が引き取ることに。
この物語、悪人が一切出てこない。20年経ち、引き取った子供は美人な娘に、名前はつる(中村ゆりか)。笑ってばかりいたはるの息子は寝太郎(小出恵介)、おおらかで相変わらず笑ってばかりの青年に。2人は幼馴染、そこへつるの母であるお徳(黒田こらん)が娘に縁談の話をする。お相手は豪商の息子・新之介(大倉空人)、いかにも育ちの良さそうな好青年。
ところがある日、鶴の精霊の千羽鶴がつるの寝床とはるの寝床に現れて、重大なことを告げる、つるの寿命について。そこからちょっとした騒動が起こり、というのが大体の流れ。
出だしは悲しげでも、物語が進むにつれて、ちょっとしたやりとりがほっこりしたり、笑顔になれたり、あるいは登場人物の優しさで感涙だったり。
貧乏神(ゲネプロでは星田英利)は心優しいし、お笑い福の神(ゲネプロでは肥後克広)は出てくるたびにちょこっと笑えたり。主人公の寝太郎がすこぶる”いいヤツ”で、こんな人が近くにいたら、きっと嫌なことがあっても、その嫌なことがちっぽけなことのように思えてくるようなキャラクター。小出恵介が、自然体で素直に演じる。出だしでは寝そべっているが寝太郎だけに(笑)、そして空を見る。対するつるは、幼馴染の気やすさか、寝太郎の前では自然体。
中村ゆりかはこれが初めての舞台だそう。だが、その存在感と実直さ、気をてらわない演技で。周囲の大人たち、彼らの心の中はちょっと複雑、過ちが後ろめたい長兵衛、つるには幸せになってほしいし、つるの育ての母、お徳、自分が産んだ子供ではないが、彼女なりにつるに愛情を注ぐし、甚左衛門は物分かりの良い老人。演技派がしっかりと。そして寝太郎の母・はる、安寿ミラは宝塚歌劇団の元トップスターだが、今回は田舎のおばちゃん、だが、うちに秘めた強い気持ちを優しさが同居した役作りで、しっかりと芝居を引き締める。優しげな新之介、観客はきっと途中でオチもわかってしまうだろうが、寝太郎も応援したいが、新之介にも幸せになって欲しいと思ってしまう。また、原日出子の鶴の精霊、残してきたつるを気にかける温かさに溢れている。
そしてお笑い福の神と貧乏神、ここは日替わりで組み合わせが毎回変わるので、コンビネーションが大変かもしれないが、ゲネプロではお笑い福の神が肥後克広、貧乏神が星田英利、この2人のやりとりが思わずクスッと笑える。立場が全くな逆な神様、ラスト近くでは、ここは毎回変わるところだが、お笑い福の神が渾身の力を振り絞って!みんなを笑わせたらお笑い福の神が勝利、貧乏神は”退場”、この貧乏神が寝太郎たちの家族のような仲間になるのだが、寝太郎役の小出恵介始め、お笑い福の神のMAXな笑いに耐え切れるのか(笑)、ここは是非ともしっかり観て欲しい。ゲネプロでは、ぎりぎり感で(笑)。
「お金はないけど福はある」、笑顔は人を幸せにする、貧乏神も。心温まる作品、休憩なしのおよそ1時間45分。またDVDとBlu-rayが発売されるが、映像はそこから。4Kデジタルリマスター版、初のソフト化となる。「鶴の恩返し」「三年寝太郎」「こぶとり爺さん」「さるかに合戦」など収録。またエンディングテーマ「にんげんっていいな」放送第1期の「グルッパーのうた」も初収録。
ゲネプロ終了後に簡単な会見があった。ゲネプロに参加したキャスト全員と生島ヒロシ。
小出恵介は「ゲネプロも無事に終わって。初日を楽しく、楽しく!」と語る。また、ラスト近くの対決シーン、「笑いを堪えるのが大変。たくさんのお客様に笑っていただけるように」。「みんなよく頑張ったなー」と原。なんと初めて衣装をつけての稽古だったそう。「みんなが一つのチームになれた」と肥後克広。生島ヒロシは「最後の稽古の時、1人だけ台本持ってました。初の商業演劇の舞台、できるかなーと。ほっしゃん。のを拝見しまして、参考になるところが多々ありました。貧乏でも笑っていられる、こういう時代には必要」とコメント。また今日を迎えるにあたって小出恵介は「整理する間も無く進めていく…新たに参加してくださる方々の熱意が稽古場で…新たに来てくださった皆さまのお気持ちごと、舞台に乗せて昇華できたら。楽しい気持ちでやれたら」としみじみ。また肥後は「30年ぶりぐらいに演技、30年前に戻れた、間違いない。ほっしゃん。素晴らしい、凄さがわかった。片岡さんは直の先輩で、30年ぶりに演技をぶつけ合う。ネタバレですが、貧乏神に熱々おでんをぶつけたい、おでんはやろうと」と語るが、ここはポイント(笑)。生島ヒロシも「ほっしゃん。こういうふうに変えてる、すごいなー。とりあえず、セリフは入りました、でも飛ぶんじゃないか…やりますんで(大興奮)」。肥後克広はギャグを毎回変えるそうで「ネタが尽きるまで」と意気込む。「楽しんだ方が伝わるかなー」とも。
最後に小出恵介が「楽しく!よろしくお願いいたします」としめて会見は終了した。
インタビュー記事
概要
日程・会場:2022年11月17日(木)〜11月27日(日) 東京芸術劇場 シアターウエスト
監修・原作協力:「まんが日本昔ばなし」 (愛企画センター)
脚本・演出:モトイキ シゲキ
出演(配役/役柄):
小出恵介(寝太郎/碧空村 百姓)
中村ゆりか(つる/庄屋の娘)
丹羽貞仁(俵屋長兵衛/碧空村の庄屋)
黒田こらん(お徳/庄屋の内儀)
大倉空人(新之介/町の豪商 白木屋)
中西良太(甚左衛門/碧空村の村長)
原 日出子(千羽鶴/鶴の妖精)
安寿ミラ(はる/寝太郎の母)
貧乏神. ※日替わり出演
星田英利 *11/17、21、23、24 出演
片岡鶴太郎 *11/18、19、20 出演
生島ヒロシ *11/25、26、27 出演
お笑い福の神 ※日替わり出演
肥後克広<ダチョウ俱楽部> *11/17、20、26 出演
星田英利 *11/19出演
レギュラー *11/21出演
コロコロチキチキペッパーズ *11/25出演
ひょっこりはん *11/24出演
かなで<3時のヒロイン> *11/18出演
彦摩呂 *11/23、27 出演
主催: 舞台「日本昔ばなし」製作実行委員会(プロデュースNOTE/リズメディア)
制作: プロデュースNOTE/アオイスタジオ
運営: LIVE FORWARD
後援: ニッポン放送