社会問題となった 歌舞伎町の”トー横キッズ”を題材に、今年3月に発表された、丸尾丸一郎 初のオリジナル・ミュージカル「ネオンキッズ」が新たに生まれ変わり、12月に「私は怪獣 –ネオンキッズ Live beat-」という新タイトル、開幕。
前作同様、丸尾が創造する新しい作品世界に、強力なクリエイターが集結。
振付は、大河ドラマ『青天を衝け』(2021年)オープニングダンス振付、CM「ポカリスエット」、「UQモバイル」振付から、舞台「千と千尋の神隠し」への出演と、多岐に渡り活動する辻󠄀本知彦が務め、音楽は舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣- など舞台劇伴を数多く手掛ける伊真吾が務める。
そして今作には楠瀬タクヤによる ドラムの生演奏が加わり、物語の音楽面をさらに強化。
岡部麟、髙橋彩音、服部有菜らAKB48メンバー、そして鈴木裕樹、玉置成実ら実力派俳優に加えNGT48の新鋭 小越春花、若手注目俳優 井阪郁巳が参戦。
舞台上に塵の山が。舞台右端に花、ホッピーの瓶に生けてある。あとはドラム。
キャラクターが登場、「怪獣がいる」歌舞伎町の新たなシンボル、ゴジラ、「新宿TOHOビル」(旧コマ劇場)。ここにたむろする若者たち、彼らは「トー横キッズ」と呼ばれる。様々な理由で集まる、本来、一番居られる場所がそうでない、そんな彼ら、現実からの逃避、キリキリとした、やるせない気持ち。その気持ちを歌にする、とは言ってもグランドミュージカルのような楽曲ではない、激しく打ち鳴らされるドラム、シャウトする。少女がやってくる、美幸(岡部麟)、父が浮気、家庭崩壊、母の裏切り、「私、殺しちゃうかも、お母さんか私」。
またここにフラッと1人、裕福な家庭の夕姫(髙橋彩音)、友達いない、箱入り娘で家が息苦しく感じる、家出少女。将来を嘱望されたフィギュア選手、ところが怪我で”出世”ルートから外れて…の和沙(服部有菜)、彼女たち以外の登場人物も全て訳あってここに集う。そんな彼女たち、彼らたち、自分の身の上をシャウトしたり、あるいはラップで表現。どこか連帯感を持つ。
彼らの日常と心境、歌とダンスとドラムの音で表現、極めてシンプルだが、観るものの心に鋭く響く。人は1人では生きていけない、だからこうして肩を寄せていこうとする。ホームレス(丸尾丸一郎)、酒浸り、彼らを自立させようとする男・雨彦(鈴木裕樹)、一見、頼りになりそうな兄貴な感じだが、どこかダークな雰囲気を漂わせている、彼は何者なのか。
少女たちよりちょっとお姉さんたち、厚化粧で、派手な身なり、彼女たちも壮絶な過去がありそう。実際の事件を彷彿とさせるような出来事(もちろんフィクション)を織り交ぜながら物語は進行していく。
刺さるセリフ、歌詞、そしてエネルギーを爆発させるようなダンス、シャウトする姿、感情の爆発、それだけ鬱積していることの裏返し。ゴジラが時々、吠える、響き渡る。『ネオンキッズ』という楽曲がことあるごとに出てくる、印象的な楽曲。「どこにも居場所がない」と歌いつつも「路上に花を咲かせよう」とも歌う。居場所がないと感じつつも、そこで生きようとする、その懸命さ。メインキャラクターは美幸、夕姫、和沙であるが、全ての登場人物にドラマがあり、群像劇の形をとっている。出会い、別れ、すれ違い、傷ついたり、あるいは心癒されたり、そんな登場人物たちの日常。
時には激昂して暴力的にもなるが、その姿がかえって痛い。あっという間の1時間50分だが、ここには多くのことが詰まっている。便利な世の中になったとはいえ、人間の根本は変わらない。生と死、危うさ、ギリギリを生きる。キャスト全員の熱量が客席に充満する。パワフルなドラム、ガツンとくる、都会の真ん中で。公演は18日まで。
作品について
私はゴミ、使い捨てにされたゴミ。
垂れ流されるSNSの書き込みとネオンの欲望に、眩暈しながら
地べたに座って四角い空を見上げる。暗雲が立ち込め、
私の中に怪獣が生まれた。
社会問題にもなった歌舞伎町のトー横キッズを描いた
話題の舞台「ネオンキッズ」が、怪獣の生ドラムと共に生まれ変わる!
概要
OFFICE SHIKA MUSICAL
「私は怪獣-ネオンキッズ Live beat-」
日程・会場:2022年12月10日(土)〜18日(日) CBGKシブゲキ!!
脚本・演出 丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)
振付 辻󠄀本知彦
音楽 伊真吾
出演
岡部麟
髙橋彩音
服部有菜
鈴木裕樹
井阪郁巳
小越春花
有田あん
長瀬絹也
藤綾近
西田夏奈子
立野沙紀
今村花
松本彩音
アイザワアイ
玉置成実
丸尾丸一郎
Drums 楠瀬タクヤ