菅井友香主演でつかこうへい原作『新・幕末純情伝』が紀伊國屋ホールにて開幕。
『幕末純情伝』は、幕末の京都を舞台に、新撰組の沖田総司が実は女だったという、つかこうへいの ユニークな着想のもと、1989年8月PARCO 劇場にて幕を上げた。 それ以降『熱海殺人事件』『飛龍伝』 と並ぶつか氏の代表的な作品として愛され、これまで幾度となく上演され続けている。
この『新・幕末純情伝』には女性は一人だけしか登場しない。つかこうへい独特の論法「女、恋に狂わば時代を覆す」というテーマが壮大な物語を突き動かしてゆく。
主演の菅井友香は3年前『飛龍伝 2020』のヒロイン神林美智子役で熱演、振り切った演技で高い評価を得た。
つかこうへい作品の二大ヒロインと言われる沖田総司と神林美智子を両方を演じたことがあるのは、 長い歴史の中で広末涼子と桐谷美玲の二人だけである。菅井友香は三人目の歴史的ヒロインとなる。
今回、菅井友香を支えるべくフレッシュな共演者が顔を揃えた。
NHK 朝ドラ『エール』で鮮烈な印象を残し、『新・信長公記』では今川義元役を演じた松大航也、 つかこうへい十三回忌特別公演『初級革命講座飛龍伝』で主演を務めた高橋龍輝、モデルとして世界で活躍し、今回初の舞台に挑戦する晃平、『仮面ライダーリバイス』オルテカ役で注目を集めた関隼汰、 2022 年度関西演劇祭でベストアクター賞を受賞した北野秀気など、多彩な分野から紀伊國屋ホール に集結し、幕末メンバーを一新する。 そして、北区つかこうへい劇団の重鎮、吉田智則が歴史をつなぐ。
演出は岡村俊一、9代目の松井玲奈以来7年ぶりに指揮をとる。
つかこうへい作品には舞台セットというものがない。開演前、舞台中央に日本刀、銃声、刀にスポットライトが当たる。デモクラシーを叫ぶ土方歳三（高橋龍輝）、怒涛のごとくなオープニング、膨大な言葉。
そしてパッと場面が変わって、女の赤子を拾う男2人。中央の刀は沖田総司の刀、「菊一文字則宗」。そして、再び場面変わり、沖田総司（菅井友香）登場、ここから本格的に物語が動き出す。勝海舟と沖田総司の関係、土方歳三、坂本龍馬との出会い、ここが主軸となり、スピーディーに展開する。物語の筋よりも彼らが放つ言葉、刺さる台詞が洪水のごとく客席に押し寄せる。
ここでは沖田総司は女性、もちろん史実とは違うし、沖田総司、土方歳三、坂本龍馬、勝海舟らとの関係ももちろん、フィクション。だが、何度観ても、それが舞台上ではリアリティを持って観客に迫る。だからこそ何度も上演されている所以。台詞だが、過激な言葉も多く、眉を顰める方もいるかもしれない。表面的にはそうだが、その奥深くにある作家が意図した真実に、ハッとさせられる。
ビジュアル的な見どころは殺陣、アクション。有名な池田屋事件も登場、小ネタも満載（『めざせポケモンマスター』の曲に合わせて踊る、菅井の定番ポーズ「がんばりき」を披露、桂小五郎役の関隼汰が、過去の出演作『仮面ライダーリバイス』を彷彿とさせる“変身”ポーズを）。菅井友香はこの作品で本格的に殺陣に挑戦しているのだが、ここは長きにわたる稽古の成果、男性陣を相手に刀を振り回す。女性としての悩み、苦しみ、また、幕末という激動の時代に翻弄される主人公を熱演。坂本龍馬演じる松大航也、この役も錚々たる顔ぶれの俳優陣が演じている大役、フレッシュかつエネルギッシュに演じ、菅井友香とも良いバランス。また、高橋龍輝は『新・幕末純情伝』は2度目、その他、『新・熱海殺人事件』『初級革命講座 飛龍伝』など、つか作品の常連、安定した佇まい、そして、重鎮・吉田智則、北区つかこうへい劇団出身、パンフレットを見ると1973年生まれ、身体のキレ、圧倒的な台詞回し、もっともっと長きにわたって活躍して欲しい俳優さん。
幕末、大きく変わろうとしている時代、「自由元年」、自由に生きる、思うがままに行動することへの憧れやそれを貫きたい思い、また人間としての素直な欲望や本音、勝海舟は「狂った女と男の嫉妬、この世で一番恐ろしいもの」と言う。キャスト全てに見せ場、桂小五郎（関隼汰）、幕末暗殺史にその名を刻んだ岡田以蔵（濱田和馬）、岩倉具視（武田義晴）など実在の人物多数登場、インパクトのある格好も見どころ。つか作品の根底に流れるもの、生きることの尊さと生きるエネルギー、ノンストップのおおよそ2時間10分、時代を、人生を駆け抜けた人々がここにいる。
初日に先駆けて会見が行われた。登壇したのは、菅井友香、松大航也、高橋龍輝、吉田智則、岡村俊一。
最初に岡村俊一が作品を解説、「僕自身、4度目の演出」と言い「約2ヶ月近い稽古、やっとご披露できる、嬉しく思います」と笑顔。それから挨拶。
菅井友香「（欅坂46卒業後）初めての舞台、嬉しく思います」
松大航也「精一杯頑張ります」
高橋龍輝「2度目の『新・幕末純情伝』、前回を超えられるように力を込めて」
吉田智則「わび、さびを担当しています、勝海舟役を演じます、たっぷり稽古しています」
紀伊國屋ホールでの公演「紀伊國屋ホールは初めて、嬉しいことです。このホールに見守ってもらってる気がします」と菅井友香。つか作品といえばここ、紀伊國屋ホール。松大航也は「菅井さんの姿をみて『頑張ろう』と」と言いまた高橋龍輝は「つか作品のテーマは『愛』、皆様に『愛』を届けられるように」と語る。吉田智則は「つかさんは『たくさんの稽古より１回の本番が役者が成長する』と…これ以上登れないというところまで成長したい」とコメント。つかこうへいらしい言葉。
また、稽古場エピソードでは、稽古期間はクリスマスやお正月などの大きなイベントがあったが、菅井友香が「岡村さんからお年玉、もらいました」と発言、新年らしいエピソード。高橋龍輝は「菅井さんの台本の書き込みがブワーーーーっと」、吉田智則は「菅井さんは朝一番に稽古場に入る」と”菅井エピソード”。
また１月にちなんで今年の抱負「健康に気をつけて」（吉田智則）、「大人になる」（高橋龍輝）、「目の前の仕事を精一杯こなす」（松大航也）、「いろんな経験をして心を豊かにして、それを届けられるような人になりたいと思っています」（菅井智香）
また見どころについては「生きることを考えさせられる、観る人によって印象の変わる作品、できることはどんどん…観る方に精一杯届けられるように…すごく偉大な役で責任を感じています」と菅井智香。それを受けて岡村俊一は「過激であると言われながら、でも史上最高に美しい沖田総司です。まっすぐに演っています」といい菅井智香も「言葉の裏にこれだけの想いが込められているんだ」としみじみ。
最後に「改めて初日が迎えられるのは嬉しく思います。素敵な作品、私たちの熱い想いを、魂を込めて！」と締めて会見は終了した。
ものがたり
徳川260年の泰平の世が、今まさに崩壊せんとしている文久3年。
武士になりたい一身で、京都への道を急ぐ一群の男達がいる。 近藤勇率いる、新撰組。
その隊士の中に「女」がいた。沖田総司。 小さい頃から男として育てられ、ただひたすら剣の修行を強いられてきた孤独な女――。
風雲急を告げる、時は幕末。
勤皇、佐幕が入り乱れる動乱の京の街で、 総司は愛する土方歳三のため、 一人、また一人と勤皇の志士たちを斬り続ける。 そして、そんな総司の前に、一人の男が立ちふさがった。
その男こそ、日本に新しい時代をもたらす男。土佐の龍、坂本龍馬――。
裏切りと憎悪渦巻く暗黒の時代、 総司と土方、そして龍馬の胸を焦がす、熱い恋の行方とは?
そして、勝海舟、桂小五郎・・・ 幕末の若き志士たちが夢見た、 新しい時代の夜明けとは?
国とは、女のことぜよ。
日本とは、おまんの美しさのことぜよ。
明日とは、男と女が見つめ合う、
熱い眼差しのことぜよ。
国とは、男と女が愛おしく思い合う
意思のことぜよ。
その強い意思があるかぎり、
国は滅びん!
概要
つかこうへい復活祭 2023「新・幕末純情伝」
作:つかこうへい
演出:岡村俊一
出演：
菅井友香
松大航也
高橋龍輝
晃平
関隼汰
北野秀気
濱田和馬
武田義晴
須藤公一
河本祐貴
大津夕陽
大津朝陽
伊東陽光
古田龍
江浦優大
吉田智則
日程・会場：
東京：2023年1月28日(土)~2月12日(日) 東京・紀伊國屋ホール
神戸：2023年2月17日(金)~19日(日) 神戸・AiiA 2.5 Theater Kobe
問合: 03-6265-3201(平日 12:00~17:00)
提携:紀伊國屋書店(東京公演)
運営協力:サンライズプロモーション大阪(神戸公演)
制作:つかこうへい事務所
主催:アール・ユー・ピー
公式サイト:http://www.rup.co.jp/
