木下グループpresents『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』アーロン役 中村獅童インタビュー

2001年に発売された名作『ファイナルファンタジーX』が、21年の時を経て“大長編 歌舞伎”として、いよいよ3月4日にIHIステージアラウンド東京にて世界初上演! 記念すべき初上演の出演者は、自ら企画と演出を担当する尾上菊之助をはじめ、中村獅童、尾上松也、そして中村錦之助、坂東彌十郎、中村歌六など豪華な顔ぶれ。
脚本は連続テレビ小説『おちょやん』などを手掛けた八津弘幸、共同演出は、『ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー』や大規模なライブショーを成功させている金谷かほりという強力タッグが実現!
また、アジア初の360度客席回転劇場にて舞台、映像、音楽、照明などと画期的な方法で融合、他では決して味わえない刺激的な新しいエンターテイメント体験ができる。
尾上菊之助はこれまでも「NINAGAWA 十二夜」「マハーバーラタ戦記」「風の谷のナウシカ」など自身の企画、構想などから新しい歌舞伎の舞台を創り出してきたが、この作品は菊之助が更なる高みに挑戦すべく歌舞伎化を熱望、渾身の新作歌舞伎に。不朽の名作ゲーム『ファイナルファンタジーX』の世界観を、アジア初の没入型エンタテインメント劇場にて世界初上演となる。重要な役どころ、アーロン役の中村獅童さんのインタビューが実現した。

――改めて、オファーをいただいた時の感想を

中村:菊之助さんからコロナ禍の緊急事態宣言の時にお電話をいただきました。一緒にお芝居させていただいてから十数年ぶりになります。なかなか共演の機会がなかったのと、コロナ禍の中でお電話いただいて嬉しかったですね。

――「ファイナルファンタジー」、まさにゲームの中のゲーム、今回の役柄はアーロン、伝説の剣士。作品はオファーをいただく前からご存知だったのでしょうか。

中村:ゲームは…やらないですね(笑)。「ファイナルファンタジー」ってゲームをやらない僕でも知っている、相当人気がある作品ですよね。

――稽古も進んでいらっしゃると思いますが、ご自身が演じるキャラクターについては?

中村:みんなを引っ張っていくという存在、ティーダを引っ張っていく、誘う、頼り甲斐のある人です。

――「かっこいい親父さん」っていう感じでしょうか。

中村:そうです。

――お稽古もだいぶ進んでいらっしゃると思いますが、歌舞伎の舞台と違って、まず客席が回転すること、それから舞台はドーナッツ状、真ん中に丸い客席があり、それが回ることによって臨場感があったり。通常のお稽古とは様子が違うと思うのですが、どんな感じでしょうか。

中村:舞台機構に慣れるということと場面転換が多いですから、劇場に慣れること、どこに引っ込んで、次はどこから出るのか、迷わないようにする稽古の真っ最中です。

――舞台裏見学をさせていただく機会があったのですが、出はけが…紙で矢印がいっぱい貼ってあったのを覚えています。段取りを覚えるのが大変そうです。

中村:芝居にはだいぶ慣れてきましたが、(出はけは)思ったほど大変ではないです。休憩時間になって、「楽屋帰るの、どっちだっけ?」って迷います(笑)。また、自分が板つきでスタンバイしなければいけない時に、矢印で“どっち”って貼ってあるので、それをみて、「次はこっちだ」と。これを間違えるとえらいことになりますが、矢印に全部書いてあります。お客様も始まった時と位置が変わりますので、「さっきと違う」と…僕らも同じことで「さっきと違う、楽屋、どっちだっけ?」って迷います(笑)。

――客席からロビーに出る時「あれ?階段がない」という経験がありましたが、舞台裏も同じなんですね。

中村:そういうことに慣れるための稽古でもありますね。
芝居の演出は金谷さんと菊之助さんですが、 例えば、僕らが歩いて旅をしている時、回っている時などはその距離をもっともっと伸ばして歩いている感じを長くしましょう、と頻繁にいろんなアイディアは出してくださいます。

――金谷さんは、いわゆるアリーナのようなところで大きなショーをやる方で迫力のある演出、そこも楽しみですね。

中村:楽しみです。立ち回りとかね、飛び回って…スペクタクルな演出家さんですので、それがどのように『ファイナルファンタジーX』の世界と融合するのかが一つの見どころです。

――しかも通し狂言というのはなかなかない公演、前編、後編と分かれていますね。

中村:ゲームをやっている方は「これはあの場面だ」と分かるようになっていますし、ゲームをやったことのない方もストーリーを楽しめます。歌舞伎初心者の方も上級者の方も、楽しんでいただけるのではないかと思います。

――幅広いお客様が観に来られるかと思います。歌舞伎は観るけど「ファイナルファンタジー」がわからない方々は結構びっくりされるかもしれないですね。ニコニコの超歌舞伎を初演から拝見させていただいています。超歌舞伎は古典を超歌舞伎として表現し、またミクさんとの共演が大きな柱ですが、今回の作品は新作で、しかも2.5次元。2.5次元ミュージカル協会の定義では、アニメ・漫画・ゲームの舞台化なので、これは2.5次元になります。これから初日ですが、ご自身のライフワークとも言える超歌舞伎と今回の新作歌舞伎、2.5次元の『ファイナルファンタジーX』違いはどのように捉えていらっしゃるのでしょうか。

中村:ありがとうございます。超歌舞伎はおっしゃる通り、古典の枠組みから僕らははみ出ることなく、バーチャルの世界と古典歌舞伎が融合していく。ところが、この作品はキャラクターがある、キャラクターの枠組みからはみ出ないように、こういうところが注意するところ。それで歌舞伎にしなきゃいけない。“2.5次元”といわれるように、こういうものを歌舞伎にするのは、匙加減が難しい。そんなところを意識しています。超歌舞伎はお客様の煽りがありますね。

――この作品を歌舞伎に持ってくること、歌舞伎の要素が強すぎてもいろんなところがずれてしまうところが、演じる側の難しいところでしょうか。最後にメッセージを。

中村:劇場で、客席で体感していただく、お客様も世界観の中にその中に飛び込んで、ぜひ我々と一緒に旅を行きましょう。その空間に来ないと味わえないことがありますし、ぜひ足を運んでいただいて、旅に出ていただきたいと思います。客席が回ることで没入感も凄いです。ぜひ、劇場へ、多くの方に旅をしていただきたいと思います。

――ありがとうございました。公演を楽しみにしています。

<製作発表会レポ記事>

尾上菊之助, 中村獅童, 尾上松也 etc. 出演『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』製作発表会レポ

前後編のあらすじ
■前編 (開場11:30 開演12:00)
大いなる脅威『シン』に人々がおびえて暮らす、死の螺旋にとらわれた世界スピラ。そんなスピラへと迷いこんだ少年ティーダ。そこで可憐で気丈な召喚士ユウナと出会う。ユウナの目的はただ一つ。『シン』を倒すこと。そのための『究極召喚を手に入れること』であった。
ユウナの決意に胸をうたれるティーダは同じくユウナを援護する仲間たちと共に旅にでる。
水球競技ブリッツボールでの熱戦や、父の盟友アーロンとの再会により、一行は「真実」に近づくこととなる。
だがそこに立ちはだかるグアド族の族長・シーモア。「死の安息こそスピラの願い」というゆがんだ考えを抱いている男である。
その原因ともなった彼の幼き頃の悲哀に満ちた物語とは果たして……。
■後編 (開場17:00 開演17:30)
グアド族の族長・シーモアの策略はティーダたちをますます追い込んでいく。
狡猾なシーモアは、ユウナを誘拐し、彼女を利用するために政略結婚を企てる。それに抗った一同は反逆者の汚名を着せられ、旅の中断を余儀なくされる。絶望し泣き崩れるユウナを見て、ティーダはなんとしても彼女を守りぬこうと決心。出会った頃から互いに惹かれあっていた二人は秘めた恋心に身を委ねるのであった。
一同は決意を新たに、再び『シン』を倒す究極召喚を手に入れるために立ち上がる。
だがそこに待ち受けていたのは衝撃の出来事……『シンの正体』『究極召喚と引き換えになってしまうユウナの命』
そして『ティーダの存在の真実』……
彼らはそれを乗り越え、自分たちの物語をつむごうとする。

概要
木下グループpresents『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』
日程:2023年3月4日(土)~4月12日(水)
※休演日:3月8日(水)、15日(水)、22日(水)、29日(水)、4月5日(水)
前編11:30開場 12:00開演
後編17:00開場 17:30開演
劇場:IHIステージアラウンド東京(豊洲)
出演:尾上菊之助 中村獅童 尾上松也
中村梅枝 中村萬太郎 中村米吉 中村橋之助 尾上丑之助 上村吉太朗 中村芝のぶ
坂東彦三郎 中村錦之助 坂東彌十郎 中村歌六 / 尾上菊五郎(声の出演) ほか
※中村歌六、中村錦之助、尾上丑之助は後編のみの出演となります。
主催:『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーⅩ』製作委員会
(TBS/ディスクガレージ/ローソンエンタテインメント/博報堂DYメディアパートナーズ/木下グループ/楽天チケット/TopCoat)
後援:TBSラジオ/BS-TBS
原作・協力:スクウェア・エニックス
制作協力:松竹 特別協賛:木下グループ 協賛:再春館製薬所
製作:TBS
IHI Stage Around Tokyo is produced by TBS Television, Inc., Imagine Nation B.V., and The John Gore Organization, Inc.
公式HP:https://ff10-kabuki.com

撮影:金丸雅代
取材・文:高浩美