流山児★事務所×詩森ろば 意欲作、上演。
流山児★事務所は、詩森ろばとタッグを組んで、沖縄返還時の政治的密約と沖縄ヤクザの抗争の歴史を結び付け「OKINAWA1972」そしてアイヌ民族の迫害の歴史を描いた「コタン虐殺」というふたつの作品を作ってきた。その途上で、沖縄にある南北之塔とアイヌ民族がウチナンチュと共に多数戦死したという事実を知った。それは過去ではなく面々と現在も続く搾取の歴史の象徴である。沖縄—アイヌと一見無軌道にみえる詩森ろばとの5年に渡る共同作業であったが、今回の新作のためと言っても過言でない題材に出会った。作品の理解を深めるため、「OKINAWA1972」の再演、「コタン虐殺」の上映会を行う。
作・演出 詩森ろばコメント
思い入れのある大好きな作品『OKINAWA1972』の再演はたたただ張り切って参りましょう、というかんじなのですが、新作『キムンウタリ』は、知念正真さんの傑作戯曲『人類館』の本歌取りという、昨年の宮本研作品脚色に続く傍若無人、狼藉を働いてしまいました。しかも前回は流山児さんの無茶振りという言い訳がありましたが、今回は自分で勝手に決めたこと。ひとり緊張を高めていましたが、あの作品の振り切った毒と人間愛に力を貰い、わたしという劇作家の限界を少しだけ超えられた気がしています。快く作品を貸してくださったことに感謝すると同時に、何よりこの力強い日本演劇界の特異点とも言える『人類館』という戯曲をわたしの作品を通じてお客様に再発見してもらえる機会となれば、と願っています。
芸術監督・出演 流山児祥コメント
そのエネルギッシュな取材力と筆力で骨太の社会的なテーマを演劇化する劇作家・詩森ろばは、流山児★事務所との初コラボレーション『OKINAWA1972』で沖縄の「闇と真実」を抉りだし、第二弾『コタン虐殺』ではアイヌ民族の苦しみや願いを描き高い評価(読売演劇大賞優秀演出家賞)を得ました。
そしてコラボ第三弾は、沖縄二部作を一挙上演します。この5年間のわたしたちのアイヌとオキナワを巡る「旅」が生み出した劇です。ウクライナ戦争勃発から1年、戦争が露出する「新しい戦前」の時代。再びオキナワに「日本の盾」を押し付ける如き、この国の実態(歴史)に眼を逸らさず真正面から描く詩森ろばの意欲作。2作とも、流山児★事務所でしかできないパワフルでエンタメ性を備えた熱い集団劇になります。ご期待ください。
「キムンウタリOKINAWA1945」・・・新作書下ろし
あらすじ:
沖縄戦激戦地であった糸満市の丘の上に「南北之塔」は立っている。それは、沖縄戦で亡くなった沖縄の民と戦死したアイヌ兵士たちの慰霊碑であり、側面には、「キムンウタリ(山の民)」とアイヌ語で刻まれている。共に迫害されたふたつの民族が「日本の盾」となって戦った、その皮肉と、しかし在った魂の交流を、知念正真の傑作戯曲「人類館」※をリスペクトした構造で描く。
※「人類館」について
1903年大阪万博で起こった学術「人類館」事件をモチーフに、沖縄近現代史が描かれている。しかし、歴史の流れをそのまま反映したのではなく、時間と空間が交錯する中で、沖縄戦やベトナム戦、そして復帰運動など沖縄を取り巻く出来事がダイナミックに描かれている。反植民地主義・反戦劇。戯曲「人類館」は、二つの構造を持っている。人類館を起点として、そこでまき起る、もしくはまき返される幻想(回想)シーンの、恣意的、無差別的濫乱と、「人類館」という名の精神病院の中で展開する、医者と患者のリハビリテーション(社会復帰訓練)としてのお芝居ごっこである。この両者を、同時並行的に推し進めることによって、沖縄の近(現)代史の暗部が浮きぼりにされ、それらは、やがて一つの接点を見つけ出す。(日本劇作家協会HPより)
知念正真(1941-2013) 沖縄県沖縄市出身 劇作家・演出家1978年岸田國士戯曲賞受賞
「OKINAWA1972」・・・改訂版
あらすじ:
1972年日本への沖縄返還が行われることとなり、沖縄は大きく揺れていた。政治、市民の生活、そして裏社会、すべてが交錯し、火花を散らす。核や軍用地を巡る密約はほんとうにあったのか。現代日本の問題の縮図が噴出する1972年の沖縄を舞台に、政治とはなにか、外交とはなにか、生きるとはなにかを問いかける。
概要
公演名 :OKINAWA2部作1945⇔1972
作品名 :「キムンウタリOKINAWA1945」「OKINAWA1972」
日程会場 :2023年4月6日(木)〜23日(日) 下北沢ザ・スズナリ
作・演出 :詩森ろば
音楽・演奏 :鈴木光介
芸術監督 :流山児祥
出演:塩野谷正幸、伊藤弘子、かんのひとみ、三上陽永(ぽこぽこクラブ)、福井夏(柿喰う客)杉木隆幸、浅倉洋介、工藤孝生/上田和弘、甲津拓平、里美和彦、山下直哉、荒木理恵、五島三四郎、竹本優希、本間隆斗、山川美優、龍昇、流山児祥