「ニッセイ名作シリーズ」は、1964年から50年間にわたり、全国で小学校6年生をミュージカルへ無料招待してきた「ニッセイ名作劇場」、および1979年から2013年まで、中高生にオペラを低廉な料金で提供してきた『青少年のための「日生劇場オペラ教室」』を前身とするもの。「ニッセイ名作劇場」では、劇団四季は数多くのオリジナルファミリーミュージカルの制作・上演を行ってきた。
今年はニッセイ文化振興財団が設立してちょうど50周年、日生劇場がオープンして60年と言う節目の年。2014年度から「ニッセイ名作シリーズ」をスタート、無料招待の対象を小学生から高校生までとし、オペラ、バレエ、人形劇、クラシック・コンサートと幅広い内容に拡大し、2022年11月に無料招待数は累計800万人にも。そして今年、2023年からは「ニッセイ名作シリーズ」日生劇場公演にて劇団四季を迎え、新たに小学校3〜4年生を対象としたミュージカルの公演をスタート、この作品はその第一作目。オペラ公演は「ニッセイ名作シリーズ」としての無料招待は収束、中高生向けにオペラを低廉な料金で提供する「日生オペラ教室」を再開する、とのこと。
『ジャック・オー・ランド ユーリと魔物の笛』(作・山崎貴、絵・郷津春奈、企画監修・千葉伸大 )は、ともに高名な映画監督、アニメーターとして、映像作品の世界に身を置く山崎貴、郷津春奈が初めて手掛けた絵本で、「種族を超えた友情」や「信じる心をもつことの大切さ」が描かれている。
観劇した日は学校招待の日、多くの子供たちで客席は賑やか。開演前のアナウンスに拍手。そしていよいよ始まると、それまでワイワイとしていた子供たちは静かになった。二人の俳優が客席の子供達に呼びかける。ハロウィンについて、「ハロウィンの真実を」といい、本格的に始まる。ダンス、見てるだけでも楽しくカラフルな衣装、魔物の王のジャック・オーと魔物は人間たちと仲良くしていたが、彼は人間に騙されて宝物を奪われたために信じる心を失った。一方、両親を亡くした少年・ユーリは、その境遇にもかかわらず、明るい、「一人でも平気さ」と歌う。幼馴染の少女・エルがある日、目覚めなくなってしまい、エルを助けるために魔法の笛を手に入れようとジャック・オーがいる魔物の街へ行くが、そこで似た境遇の魔物の少年・コブと出会う。二人の出会いのナンバーがハッピーな雰囲気「友達になれば一人じゃない」、だが、この時、ユーリは”変装”していた。その格好のまま、ジャック・オーに会いに行くも見破られる。ありのままの人間の姿では確かに行きにくい、その気持ちはわかる。それでもコブはユーリとの友情を信じる。コブはユーリの本質を見ていた。見た目で判断せずにユーリ、という人物そのものを理解していた。だが、一度、心閉ざしたジャック・オーには通用しない。「見せてもらおう、お前らの友情を」と二人に言う。
演出は劇団四季所属の山下純輝、ファミリーミュージカル『カモメに飛ぶことを教えた猫』でも演出、そして振り付けは同じく劇団四季の松島勇気。わかりやすく、観やすい演出、そして様々なダンススタイルを取り入れた振り付けは楽しく、子供達はしっかりと舞台に釘付け状態。ところどころで拍手も起こり、歓声や笑い声も響く。客席と舞台が一体になる場面もあり、子供達の反応は素直。
アートな舞台セット、人間の心の奥底に潜む、ダークな心、2幕後半では、ユーリとユーリの黒い心が対峙する。激しくもダイナミックなダンスで表現。ここは客席は静まりかえっているだけでなく、固唾を飲んで見守る子供達の雰囲気が伝わる。もちろん、バッドエンドにはならないので!また、2幕に登場する、ユーリに”悪魔のささやき”をする大人、”いる、いる、こういう感じの人”という造形。最後にハロウィンの仮装、パーティの意味、ジャック・オーの固い心を溶かすユーリとコブの友情、途中15分の休憩を挟む2幕もの。それぞれが1時間以内という子供達にとって観やすい上演時間。俳優陣は劇団四季のメンバー、ベテランから若手まで、熱のこもったパフォーマンスで魅了。
長年にわたっての取り組み、今年からは、その新たな”ステージ”へ、ということに。未来のための取り組み、日生劇場の挑戦は続く。
物語
山の上にある魔物の街。そこにある黒い大きな城に、恐ろしい魔物の王ジャック・オーが住んでいた。彼は人間に騙され宝物を奪われた過去から“信じる心”を失い、固く心を閉ざしていた。 この山のふもとに住む人間の男の子ユーリは、両親を亡くし一人ぼっち。ある日、目覚めなくなってしまった女の子を助けるため、不思議な力を持つ魔物の笛を手に入れようと、一人魔物の街へ忍び込む。途中同じく一人ぼっちの魔物コブと出会い意気投合した二人は、一緒に魔物の笛を探しにジャック・ オーの元へ。しかし途中で捕まってしまい、ジャック・オーから笛を貸す条件として、コブを置いていくと条件を飲むコブ。ユーリは「必ず帰る」と約束し、城を出るが…。
概要
日生劇場開場60周年記念公演 ニッセイ名作シリーズ 2023 新作ミュージカル『ジャック・オー・ランド 〜ユーリと魔物の笛〜』
原作 「ジャック・オー・ランド ユーリと魔物の笛」
(作・山崎 貴、絵・郷津春奈、企画監修・千葉伸大 2017年ポプラ社刊)
脚本:南 圭一朗
歌詞:辻林美穂
演出:山下純輝
作曲・編曲:兼松 衆
振付:松島勇気
装置デザイン:土岐研一
照明デザイン:紫藤正樹
衣裳・ヘアメイクデザイン:射場茅乃
主催・企画:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]
制作・上演:劇団四季
後援:東京都
協賛:日本生命保険相互会社
公演詳細:https://www.nissaytheatre.or.jp/schedule/meisaku_jol/
ポプラ社公式サイト:https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8008166.html