『Dancing☆Starプリキュア』The Stage 鷲尾天 & ほさかよう オフィシャルクロストーク

『Dancing☆Starプリキュア』The Stageが10月から11月にかけて上演される。
公演に先立ち、プリキュアシリーズ生みの親であり本作のスーパーバイザーの鷲尾天さんと、脚本・演出を務めるほさかようさんの対談が行われた。
どのようにして本作が立ち上がったのか、また、作品が目指しているものを熱くトーク!

―― 男性キャストによる「プリキュア」初の舞台公演。企画をお聞きした時のお気持ちをお聞かせください。

鷲尾:実は私が言い出しっぺなんです。プリキュアシリーズの20周年に色々やりたいねと話している中で、プリキュア を見てきた人たちが集まれるような場所を作りたいという思いから始まりました。昔を思い出して「プリキュアって楽 しかったな」と思える場所がリアルな舞台だったら面白いのではないかと考えたのですが、最初は周りの人に話しても リアクションが薄かったんです。ですが意見を聞く中で 2.5 次元舞台を観に行くことがあると耳にして、「じゃあ、若手 俳優さんたちで男子プリキュアがメインの舞台をやったとしたら?」と尋ねたら、目の色が変わりました。それで可能性 を感じて色々な方にご相談させていただき、実現に至った次第です。企画を聞いて驚いたというより、驚かせる側にい ました(笑)。

ほさか:僕は驚いた側です(笑)。子供の頃からアニメが大好きだったので、プリキュアの初代も見ておりました。その プリキュアを男性キャストで舞台化すると聞いた時は大変面白そうだなと思うと同時に、「誰が言い出したのだろう?」 と気になって。プリキュアを作られている方々はこの企画をどのように感じるのだろう……と思ったら、その方からの ご発案なの!? と二度驚きました。

鷲尾:(笑)

ほさか:ですがそれを知って安心したところもあります。プリキュアが「固定観念を壊す」というテーマで始まっている ということも伺ったので、今回の舞台でも成し遂げねばならないことの重圧を感じつつ。鷲尾さんを始めとするプリキ ュアを作り上げてきた方々同様に、愛情を持って作っていかねばと思っております。

―― 『Dancing☆Star プリキュア』The Stage のテーマは「ダンス&バトル」。ダンスに情熱をかける男子高校生 たちがプリキュアとなり、困難に立ち向かっていきます。

鷲尾:舞台プロデューサーの方々から幾つか設定や要素をご提案いただき、相談しながら今回のテーマが決定しまし た。舞台のことは私には分からないので、全部お任せしますとお伝えしています。一点だけ、登場する彼らが日常の生 活を大事にして一生懸命生きているからこそ、変身して戦うファンタジーのパートにジャンプアップするシーンは意図 して欲しいとお願いはしましたね。特に初期のシリーズは主人公たちがふつうに生活している中でファンタジーの状況 が舞い込んでくる始まり方だったので、そんなイメージが今回の舞台にもあるといいのではないかなと。

ほさか:彼らはダンス部なので、日常の中にダンスがある子たちなんです。上達していく過程やチームとして息を合わ せていくところなど、必然的に部活の日々も描くことになるだろうと思います。ただ難しいのが、戦いをダンスで表現 すること。アクションの最中に歌や踊りを挟むわけではなく、ダンスそのものが彼らプリキュアの力になるので、各セク ションの方にも知恵を絞っていただいて共に頑張らないといけない……と、プレッシャーを分散させておきます(笑)。

鷲尾:キャストの方々とはまだお会いしていないのですが、ダンスが上手な方ばかりだと聞き及んでいますので楽しみ です。どんなことに興味があるのかとか、得意なことであったり好きなものであったり、私がインタビューしたいぐらい。

ほさか:この舞台のオファーを受けたからには、プリキュアへの愛と覚悟は必ずあるでしょう!

―― 舞台化の情報解禁時は「男子プリキュア」が SNS でトレンド入りするほど大きな注目を集めました。

鷲尾:そこは私も気を抜いていたところがありまして。プリキュアは誰からも注目されていないような状況で立ち上げ た作品でしたから、皆が思っているものと違うことをやる時は、それほど注目を集めないだろうと思っていたんです。 それでコソッとやっちゃおうみたいなつもりだったんですけど、コソッとできなかったですね(笑)。でもやるべきことは 今までと変わらないです。「プリキュアってこういうことじゃないかな」というものをほさかさんと考えていくので、きっ と実際のステージを観ていただければご納得いただけるんじゃないかなと思います。……今、ほさかさんにすごくプレ ッシャーをかけてしまいました。

ほさか:ヒシヒシと感じます(笑)。でもこうしてお話ができて良かったです。繊細な作業にはなると思いますが、身構え たままでは結局何もできないで終わってしまう気がするので。スクラップ・アンド・ビルドじゃないけれども、あまり恐れずに「これはどうでしょう! 違うか、じゃあコレ!」と、どんどん出していければと思います。「繊細にやっている場合じ ゃない、まずはやろう!」という意気込みです。

鷲尾:もちろん、お任せしています! 私自身が散々色々なものを壊しておいて、今さら人に「壊すな!」と文句を言う わけないですから(笑)。

―― 鷲尾さんがスーパーバイザーとして監修を務められ、キャラクター&ストーリーはオリジナルで展開されます。

鷲尾:アニメシリーズのキャラクターたちを舞台で女性に演じてもらうことを想像した時、ステップを上がった感じがし なかったんですね。それでは既存のものと変わり映えしないような感覚があって。なので「男子プリキュア」をやるので あれば、がっつりこのステージのためのものである、と言い切った方が絶対に面白くなるし、現場の皆さんもやりやす いだろうと考えました。川村敏江さんが新たにキャラクターを描き起こしてくださったのですが、そのデザインとキャス トの方々の完成ビジュアルを見て驚きましたね。再現度や華麗さなど、本当に感心しました。

ほさか:僕もとても素敵だなと思いました。変身後はどんな格好になるのか気になっていたのですが、絵も彼らも一目 で「プリキュアだ!」と分かる。とても秀逸なデザインだなと感じました。

―― ビジュアルから既に“プリキュアらしさ”が迸っているように思います。おふたりが感じるプリキュアの魅力、プリ キュアらしさはどんな部分にあると思いますか?

鷲尾:これは自己矛盾を抱えてしまうので大変難しい。番組開始当初は「男らしく」「女の子らしく」を否定したところか ら始まっているので、“らしく”という言葉は非常に使いづらいんです。ですが、あえてその言葉を当てはめるものがあ るとすれば、常に何かに抗い続けていた結果だろうと思います。“らしくある”ことに対して、常に違う形で答えを出し ていく。それが 20 年、20 作品連なると、「プリキュアってそういうことだよね」と見てもらえるのかなと思っていて。 一つひとつは“らしさ”との戦いだったのではないかと思いますが、常に疑問を持ち、抗い続けることによってシリーズ としてひとつの作品に見えているのではないかなと。今回の舞台も、その流れの一環としては全く自然なものだと私 は感じています。

ほさか:僕にはプリキュアに携わっている歴史がないので個人的な感覚になりますが、プリキュアの魅力は「かわい い!」に尽きます。もちろん人によって色々なニュアンスでその魅力を表現されていると思いますが、カッコイイとかキ レイとか、ちょっと大人びた表現とはまた違った「かわいい」という言葉が、自分の感性としてはしっくりくる“プリキュ アらしさ”かなと。そして言葉にするのは難しいのですが、「これもありだし、あれもありだよね」という優しい哲学のよ うな揺るぎない信念をシリーズからは感じます。それが鷲尾さんがお話をされた、“らしくある”に何かを狭めていかな いことなのかなと思いますね。台本を執筆するにあたりプリキュアシリーズを見まくっているのですが、どれも面白い んですよ。最初こそ「子供向けで作られているものでしょ」なんて穿った見方で見始めるものの、気が付けば夢中になっ ている。子どもが喜ぶシーンもあれば、大人にも響く瞬間がある。その懐の深さを舞台でも目指したいなと思っています。

―― 今後の展望を含めて、お客様にメッセージをお願いします。

鷲尾:この企画は私のような素人が舞台をやりたいと言い出し、男性キャストでやってみようと皆さんに問い掛けて、 やることになった大変無謀な試みです。しかし皆さんのご尽力のおかげで絶対に素晴らしいものになると思っていま す。願わくはこれがきちんと皆さんのこれに届いて、1つのシリーズとして立ち上がるぐらいになればと……あまり今 の段階で欲をかいてはいけないのですが(笑)。私としてはそれも願いながら、お客様にはステージを楽しみにしてい ただければと思います。

ほさか:今まで皆さんがご覧になっていたプリキュアとはきっと違うプリキュアだけれども、これもちゃんとプリキュア だと思っていただけるステージにします! ご期待ください!

INTRODUCTION
どんな困難にも立ち向かう少女たちの物語を描き、幅広い世代に愛されてきた「プリキュア」 シリーズ。 20周年のアニバーサリーイヤーに舞台オリジナルの「男子プリキュア」が活躍するプリキュアシリーズ初の舞台化が決定しました。 今回プリキュアに変身するのは男子高校生!彼らのダンスにかける日常と、プリキュアとしての使命を描くオリジナルストーリー、舞台ならではの演出、目の前で繰り広げられる力強いダンス&アクションで心躍る新たなプリキュアの世界をお届け!

物語
【星河 楽(ほしかわ がく)】は、好きなものはダンス!特技もダンス!憧れのダンス部で全国大会優勝を夢見る高校2年生。
レギュラー選抜テストに向かう途中、奇妙な衣装の青年【パドドゥ】と、虚ろな目をしたスーツの男と出会う。
スーツの男は突然不気味な音楽に合わせてリズムを取り始めると、姿を変えて襲いかかってくる!
絶体絶命とおもった時、パドドゥのもつペンダントが強く輝き、楽は光につつまれる—
『胸に高鳴れ、希望のビート!キュアトップ!』…って何言っちゃってんだ俺?てか、何だよこの格好!
絶望を希望に変える【光のリズム】を乗りこなせ!Dancing☆Star プリキュア開幕!

概要
『Dancing☆Starプリキュア』The Stage
日程会場
東京:2023年10月28日(土)~11月5日(日) 品川プリンスホテル ステラボール
大阪:2023年11月10日(金)~11月12日(日)  サンケイホールブリーゼ
原作:東堂いづみ
スーパーバイザー:鷲尾 天(東映アニメーション) キャラクターデザイン:川村敏江
脚本・演出:ほさかよう
音楽:楠瀬拓哉 振付:YOKO 殺陣:六本木康弘(ジャパンアクションエンタープライズ)
美術:乘峯雅寛 照明:鈴木健司(ルポ)
音響:遠藤宏志 映像:森すみれ 衣裳:摩耶 ヘアメイク:AKi /
特殊造形:田中秀美 演出助手:千田阿紗子 舞台監督:井上卓 /
宣伝美術:LT Graph ロゴデザイン:栗原高明 グッズデザイン:樋口敬太 宣伝写真: 大柳玲於
制作進行:S-SIZE
出演:
キュアトップ / 星河 楽 役 田村升吾
キュアロック / 夏目颯斗 役 滝澤 諒
キュアソウル / 月宮爽々奈 役 森田桐矢
キュアカグラ / 天弦晃雅 役 寺坂頼我
キュアブレイク / 黒瀬舞人 役 小辻 庵
パドドゥ 役 和合真一
鈴ノ木 蛍 役 平松來馬
内海 充 役 TAISEI(G.U.M)
室井 一帆 役 伊藤裕一 And More
主催:Dancing☆StarプリキュアThe Stage製作委員会

公式HP:https://www.marv.jp/special/precure_stage/

文/片桐ユウ

©Dancing☆Star プリキュア The Stage 製作委員会