シリア・ウクライナの戯曲を上演「紛争地域から生まれた演劇シリーズ」15年記念 地域連携プロジェクト

「紛争地域から生まれた演劇シリーズ」の15年を記念して、全国5都市で東京とそれぞれの地域の演劇人が協同して、シリアとウクライナの戯曲のリーディング公演を実施。
「紛争地域から生まれた演劇シリーズ」は国連教育科学文化機関ユネスコ傘下の NGO・国際演劇協会(ITI)の日本センターが、演劇を通じて平和の構築を目指すプロジェクトの一環として 2009 年から取り組んでいるもので、これまでにアフガニスタ ン、アルジェリア、パレスチナなどの戯曲を上演。
今回は、シリア出身の作家アドナーン・アルアウダによる『母と娘の物語 ハイル・ターイハ』と、ウクライナ出身の作家ナターリア・ヴォロズビートによる『Bad Roads―悪路―』を上演。
『母と娘の物語 ハイル・ターイハ』は、シリアの厳しい自然や因習、近代化していく社会の中で強い意志で 人生を切り拓こうとする母と娘の姿を、音楽や詩をふんだんに用いて描く語り物。『Bad Roads―悪路―』は、ウクライナ東部のドンバス地域を舞台に、2014 年から続くロシアによる侵攻を背景に“女性が経験する戦争”を 6 つの短編作品で展開。
総合プロデューサーは林英樹、演出や出演者・スタッフなどは公演ごとに異なり、公演地の劇団や俳優と共同製作、現地滞在製作を実施。

2022年公演より

林英樹より
シリアに対する私たちのイメージは内戦で破壊されつくした廃墟の都市や、一時、メディアで大きく取り上げ られた数百万人に及ぶ難⺠が国内外、ヨーロッパに押し寄せる姿だと思いますが、今回の作品は内戦に至る前 の平和な時代のシリアの庶⺠の物語です。一方、ウクライナの作品は作家自らが戦争の最前線に足を運び、ジ ャーナリスト、医師、兵士、戦争の影響を受けた人々にインタビューを実施する中で、作家自らにとって戦争 とは何かを深く問いかけることから生み出された作品です。 「知ることで生まれる変化というものがある。」紛争や戦争を演劇で直接止めることは出来ないかもしれません が、演劇には「何か」変化を生み出す可能性があると私は考えています。皆さんと一緒に、それを探したいと思っています。

紛争地域から生まれた演劇シリーズ
世界各地の ITI センターでは、演劇を通じて平和の構築を目指す取り組みとして「Theatre in Conflict Zones」 と題するプロジェクトが行われています。日本センターでは文化庁の委託事業として毎年発行している『国際 演劇年鑑』の調査・研究事業の一環で、2009 年から「紛争地域から生まれた演劇」シリーズをはじめました。 これまで 14 年にわたり、最前線のテーマを扱ったパレスチナ、シリア、イラン、ヨルダン、イスラエル、パキ スタン、フィリピン、タイ、アルジェリア、カメルーン、ナイジェリア、アメリカ、カナダ、ドイツなどの海 外戯曲 30 作品をリーディングやトーク、戯曲集の発行で紹介してきました。 当シリーズでは世界各地で生起する様々な紛争に目を向け、同時代の政治的・文化的状況に対して新たな視座 を構築することを目指しています。また、これにより演劇の持つ問題提起力を社会に示すとともに、演劇に関 する調査研究と創作現場との連携協働を実現しています。 当企画で紹介した作品の中には、大小様々な劇団・劇場で舞台化されたものも少なくなく、イスマエル・サイ ディ作『ジハード』、ガンナーム・ガンナーム作『朝のライラック』(2 作品とも、さいたまネクスト・シアター により上演)は 2 年連続で小田島雄志・翻訳戯曲賞を受賞しています。

国際演劇協会(ITI)
国連教育科学文化機関ユネスコ傘下の NGO 国際演劇協会(International Theatre Institute=ITI)は、「戦争は 人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」という前文では じまるユネスコ憲章の趣旨に基づき、舞台芸術に関する情報交換と実践面での国際交流の促進を目的に、第二 次世界大戦終結から 3 年後の 1948 年に創設されました。
ITI 創設から 3 年後の 1951 年、ITI 日本センターが設立。以来 70 年以上にわたって、各国相互の理解を深める ため、さまざまな事業を行っています。

概要
「紛争地域から生まれた演劇シリーズ」15 年記念 地域連携プロジェクト
『母と娘の物語 ハイル・ターイハ』
作:アドナーン・アルアウダ
翻訳:中山豊子
金沢公演 2023年9月21日(木)〜9月24日(日) スタジオ犀
演出:岡井直道(劇団アンゲルス)
出演:下條世津子、小野寺里穂、伊藤のどか、小石川武仁、木林純太郎(以上、劇団アンゲルス)

福山公演 2023 年 11 月 11 日(土)〜12 日(日) itiSETOUCHI CAGE
演出補:小林晃子
出演:小林春世(演劇集団キャラメルボックス)、小林晃子、ほか

前橋公演 2024年1月27日(土)〜1月28日(日) 前橋文学館ホール
演出:林英樹、中村ひろみ(演劇プロデュースとろんぷ・るいゆ) 出演:梅村綾子(文学座)、中村ひろみ

『Bad Roads―悪路―』
作:ナターリア・ヴォロズビート
翻訳:一川華
翻訳監修:村田真一

八尾公演 2023年12月7日(木)〜12月9日(土) 八尾市文化会館プリズムホール
演出:生田みゆき(文学座)
出演: 石村みか(てがみ座)、⻫藤淳(劇団俳優座)、寺田路恵(文学座)/花純あやの(セビロデクンフーズ)、 大江雅子、松原由希子(匿名劇壇)、ほか

新潟公演 2024年1月20日(土)〜1月21日(日) りゅーとぴあ 新潟市⺠芸術文化会館
演出:生田みゆき(文学座)
出演:今井聡、岩男海史、柴田美波(文学座)、滝沢花野(理性的な変人たち)、永宝千晶、⻄岡未央/先川史織、 大井南、小山恭平、早川杏(以上、Accendere)、大家貴志(KURITA カンパニー)、平石実希/高橋景子(劇団第 二黎明期)、樋口伸介(Area-Zero)、荒井和真(KURITA カンパニー)

公式サイト:https://iti-japan-ticz.studio.site/