2023年秋の音楽座ミュージカル「シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ」(原作:筒井広志『アルファ・ケンタウリからの客』)の東京公演が10月27日より草月ホールにて開幕する。
折口佳代役と三浦悠介役はWキャスト。折口佳代は高野菜々と森彩香、三浦悠介は畠中祐と小林啓也。東京公演まで1週間を切った某日、通し稽古が行われた。この日は高野菜々&畠中祐。ちなみに高野は1989年生まれ、畠中は1994年生まれ、この作品の初演は1988年、2人とも生まれていない、着々と次世代に受け継がれている名作だ。
ヒロインが登場し、シャボン玉を飛ばす。それから警官2人、腰をかがめて話しかける、竹刀を持ったヤクザの男がヒロインを叩く。動かなくなるヒロイン、折口佳代の生い立ちやバックボーンを見せる。幸せではない、薄幸であることがここでわかる。場面変わって、楽しそうな男女、ここは遊園地。それから、この物語の、もう1人のメインキャラクター、三浦悠介、いかにも今風(とは言ってもバブル時代のイケてる女子のファッション)な女の子と一緒、どうやら初デートの様子。緊張気味の悠介、しかも財布をすられてしまい、窮地に陥る、すったのは佳代。たいして入っていなかったのと悠介が困っていたので、「拾った」ことにして返す。とりあえず財布が戻った悠介は迷路の切符を買って彼女と2人で、続けて佳代も。やりとりがコミカルなところもあり、ちょっと笑ってしまったり。そして迷路なだけに”迷う”迷路の表現がアナログで俳優陣も動き、セットも動く、これが立体的に”迷路に迷った”状態を見せる。「何がなんだかわからない」と歌う。POPな曲調、これから何かが起こるワクワク感も。
それから、喫茶店、昭和な感じの!電話がダイヤル式。喫茶店「ケンタウルス」を経営する夫婦、悠介のデートの成果が気になり「どうだったの?」と(笑)。本当のことが言えない悠介、ここの場面はちょっと笑えたりするので!また、喫茶店のマスターが佐藤伸行、初代三浦悠介。お店の常連客・久保に本間仁、こちらは2代目。少々お節介だが、気のいい優しい大人たち、昭和な香り。そんなこんなのところにバイト募集を見てやってきたのが佳代。運命の赤い糸を感じる瞬間。悠介は作曲家を目指す青年、佳代はスリで生計を立てていたが、バイトを始める、真逆な2人だが、互いに惹かれ合う。この2人の恋を軸に物語が展開していく。そして佳代には、本人も知らない重大な秘密があった。それが宇宙規模!ここが「シャボン玉〜」の真骨頂。宇宙とかいてソラと読ませる。ある事情のために地球にやってきた宇宙人3人組。地球人になりすまし……なりすましきれてないところが抱腹絶倒。どこで仕入れてきたのか、派手なファッションに身を包み、不自然な挙動、腕には自動翻訳機(現代ではすでにあるが)、この自動翻訳機が不正確(笑)トイレに行くことを「全てを水に流して悟りを開く」など、宇宙人の地球人に対する知識がある意味凄すぎる!喫茶店にきてコーヒーを注文するくだり、佳代が「ブレンド」を勧める、早速翻訳機で調べると「友達」そこから連発「貴女のブレンド」意味不明(笑)。ただ、これがこの物語のキーワードになるので!この宇宙規模の”事情”が2人の恋に絡んでいく。
孤独だった佳代、名前の由来、梅田駅の改札に捨てられてたから「折口佳代(おりぐちかよ)」自分のことを愛せない、夢や希望などもちろん、ない。だが、三浦悠介に出会って夢や希望を見つけ出す、そして悠介も純朴な佳代に勇気づけられていく。人生を共にしようと思う2人だが、更なる試練と過酷な運命に翻弄される。
心に残る名曲が多いこの作品、テーマ曲とも言える『ドリーム』や宇宙人が歌う『守ってブレンド』など、キャッチーで口ずさめる。また、初演時の演出をリスペクト、徹底したアナログ、セット、またダンスシーンもオーソドックスな振付、衣装、髪型など、80年代後半に流行ったもの、シニア世代なら「懐かしい」と思うはず。稽古場での通し稽古、すでに大阪公演を終えているので、完成度も高く、これからの公演が楽しみな仕上がり。東京は今月27日から始まり11月5日まで。それから広島にて12月公演。詳細は公式サイトにて。
公演概要
日程・会場:
大阪
2023年10月3日(火)吹田市文化会館 メイシアター 大ホール ※終了
東京
2023年10月27日(金) ~11月5日(日)草月ホール
広島
2023年12月8日(金)・9日(土)JMSアステールプラザ 大ホール
上演時間は休憩(15分)を含め、2時間50分
製作著作・主催/ヒューマンデザイン
公式Webサイト:http://www.ongakuza-musical.com