12月6日から東京・大阪にて舞台「ある都市の死」が開幕。
この舞台は、映画「戦場のピアニスト」の主人公としても知られるポーランドのピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンが壮絶な第二次世界大戦の戦禍を生き延びた軌跡を、シュピルマンのみならず、彼の息子・クリストファー、そして敵国ながら彼を助けたドイツ軍将校ホーゼンフェルト、それぞれの目線で描かれており、s**t kingzの持田将史(shoji)・小栗基裕(Oguri)と、世界で活躍するジャズピアニストの小曽根真という、アーティスト同士の共演に注目が高まっている。 上演台本・演出は「スラムドック$ミリオネア」「ザ・ビューティフル・ゲーム」で菊田一夫演劇賞を受賞した瀬戸山美咲。
持田は主人公のシュピルマン、小栗は息子であるクリストファーやドイツ軍将校ホーゼンフェルトを演じ、またダンスで表現。さらに、小曽根さんもシュピルマンとして舞台上に存在しつつ、戦争によって破壊されていく街の魂もピアノで表現。戦争は人から何を奪うのか。人の心に何を残してしまうのか。なぜ、戦争はなくならないのか。そして、なぜ、この世には音楽や芸術が必要なのか。生の舞台でしか表現の出来ない、一度きりのピアノの演奏、声、ダンスを通じて、「一度きりの人生」を描き出していく。
持田と小栗は、2019年・2021年に、演出家・瀬戸山美咲さんとタッグを組み朗読劇「My friend Jekyll」を上演。その後、どんな作品に挑戦しようかと考えていた中で、小曽根さんのピアノと出会い、「戦場のピアニスト」というテーマが浮かんだと言います。
小曽根さんが奏でるピアノについて、持田は「初めてのリハーサルで、小曽根さんがポーンと一音弾いただけで、街の情景が見えるような不思議な感覚がありました。僕たちが演じるセリフを聞いて、その瞬間に小曽根さんが捉えた音を弾いていく。それにより、セッションのように、どんどん新しい空気が生まれるんです。音楽ってすごい力を持っているんだなと改めて感じながらリハーサルに取り組んでいます」と話し、「僕自身も、この作品は大きなチャレンジで、どう向き合うべきか、日々葛藤しています。人生のターニングポイントになると言ってもいいくらい。充実した時間を過ごしています」と語ります。
小栗は、1940年代、壮絶な戦禍を生き延びた「戦場のピアニスト」主人公の実話をもとに描かれる今作について「僕が演じる役のひとつ、息子のクリストファーは、ストーリーテラーとしての要素もあり、歴史的な事実をきちんと伝えていかなければいけません。そして、ドイツ軍でありながシュピルマンを助けたホーゼンフェルトは、このナチスドイツによる虐殺に疑問と怒りを持っていた。そもそも、どうしてこんな悲劇が生まれたのかと、本を読み、ドキュメンタリーや映画を観ても、簡単に定義づけられることではない問題だなと思います。この作品が、みなさんにとってもっと知りたくなる、考えたくなるようなきっかけになれたらいいなと、精一杯作品と向き合っています」と明かしました。
小曽根さんは、2人の演技・ダンスについて「吸収力が本当に素晴らしく、常にアンテナを張って、僕が出した音から瞬時に何かを捉え、パフォーマンスにつなげてくれます。同じ場面を稽古していても、毎回全く違うので、セッションをしているような楽しさを感じながらリハーサルに臨んでいます」と新たな化学反応を楽しんでいると言います。ショパンの作品に対して特に顕著な芸術活動を行った世界の芸術家へポーランド政府から贈られるというショパン・パスポートを授与されている小曽根さんによるショパンの旋律も見どころのひとつ。 劇中では、ショパンの「ノクターン第20番嬰ハ短調」も演奏します。小曽根さんは、「演奏会ではなく、シュピルマンというピアニストの物語の中で、僕がどんな風に弾くのか。想像力を高めて臨みたいと思います」と作品への意気込みを語りました。
持田・小栗は、この作品を演じるにあたり、舞台であるポーランド・ワルシャワへ。ユダヤ人居住雨域として詰め込まれたゲットーのエリアや旧市街、アウシュビッツ強制収容所も訪問しました。
惨劇の傷跡を目の当たりにし2人は「ここで何人もの命が奪われてしまったこと、その事実だけでも胸が苦しくなりました」と振り返り、「ポーランドの街には、ゲットーの壁の跡、銃撃戦の弾痕など、いたるところに戦争の記憶が残されていました。この悲劇を忘れないように、という意思とともに、破壊されて跡形もなかった建物を昔の写真や絵画をもとに再現し、こんなに美しい街を復興させたポーランドの人々のパワーも感じました」と語りました。
現地では、瀬戸山さんとも合流し、地名や道の幅など、ワルシャワの空気を感じたり、ドイツ軍将校ホーゼンフェルトと出会った場所にも立ち、作品への理解をさらに深めました。
さらに、持田・小栗は、シュピルマンのご子息であるクリストファー・W.A.スピルマンさんと対面しました。実は、近代日本思想史の研究者として長く日本に住むクリストファーさん。息子から見たシュピルマンを描いた著書「シュピルマンの時計」(小学館刊)は、舞台の原作のひとつです。
「父は寡黙な人で、毎日ピアノと向き合う日々でした。そんな父は、お願いしても自転車を買ってくれなかったり、僕が危ないことをしたときには過剰に怒りをあらわにしていました。いま思うと、ですが、きっと、もう二度と家族を失いたくないという思いだったのかなと思います」と父親像を語ってくださいました。クリストファーさんは、シュピルマンさんの体験記を屋根裏部屋で見つけ、初めて父親がユダヤ人であり、壮絶な戦禍を生き延びたことを知ったそうです。刻銘に記録された体験記について「想像することしかできませんが、頭の中にある恐怖の記憶をすべて詰め込んで、忘れたかったのかもしれません」と振り返ります。
クリストファーさんの話を伺い、持田は「シュピルマンさんが本当に実在していたんだなということ。と、同時に、特別な人物ではなく、ひとりの“父親”であったことを改めて感じました」と、親族の方からのお話を聞くことで自身の役作りへのヒントを集めていきました。
ゲットーのユダヤ人たちが立ち上がったワルシャワ・ゲットー蜂起から80年目を迎える2023年。
12月1日からは映画「戦場のピアニスト」が4Kデジタルリマスター版として鮮やかによみがえり全国上映、さらに書籍「戦場のピアニスト」(佐藤泰一訳)も春秋社創設105周年記念として復刊され、12月6日(水)からはこの舞台「ある都市の死」が開幕します。
ウクライナやイスラエルでの紛争など、世界情勢が不安定な中、いま改めて考えるきっかけになるであろう今作。今回の舞台について持田は「この作品は、“一人の人間が生きる”ということを描いています。皆さんにとっても、“どう生きるのか”何かを感じていただけるきっかけになればと思っています」と話し、小栗は「いまの時代にも通じるテーマがたくさん詰まった作品です。小曽根さんのピアノとともに作り出すこの世界をぜひ体感しにきてください」と意気込みを示しました。
あらすじ
クリストファーは 11 歳の時に屋根裏で一冊の本を見つけた。それは戦火の街を一人でさまよい、生き延びたピアニ ストの父ウワディスワフ・シュピルマンの記憶だった。
1939年ワルシャワ。戦争が始まり、ポーランド放送局の専属ピアニストとして働いていたシュピルマンの日常は一 変してしまった。ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害が激しさを増す中、愛する家族とも生き別れになったシュピ ルマンは、破壊された街で、何度も迫りくる死の危機に直面しながらも何とか生き延びる。しかし、1944年11月、 ついにドイツ国防軍の将校ホーゼンフェルトに見つかってしまう。 「君は何者だ?」「私は……ピアニストです。」
概要
舞台「ある都市の死」
日程・会場
東京:2023年12月6日(水)~10日(日) 草月ホール
大阪:2023年12月12日(火),13日(水) サンケイホールブリーゼ
出演:持田将史 小栗基裕 小曽根 真
上演台本・演出:瀬戸山美咲
原作:
ウワディスワフ・シュピルマン(佐藤泰一訳)『戦場のピアニスト』(春秋社刊)
クリストファー・W.A.スピルマン『シュピルマンの時計』(小学館刊)
東京公演主催:ぴあ株式会社
大阪公演主催:読売テレビ/キョードーグループ
企画制作:アミューズ
公式サイト:https://arutoshi.com