舞台『ロッカールームに眠る僕の知らない戦争』開幕 時代の荒波にもまれて何処へ向かうのか_

安保闘争時代の学生運動をテーマにした舞台『ロッカールームに眠る僕の知らない戦争』が開幕。
この舞台は、ドフトエフスキーの文学作品を、安保の時代に置き換え、理想と現実の間で揺れる若者たちを描いた切なくも儚いアンダーグランド青春群像劇、初演は12年。ミュージカル「ヘタリア」シリーズや、舞台「炎炎ノ消防隊」など人気マンガやアニメ原作の舞台化や、昨今では【社会問題×エンタメ】をテーマにした映画「君たちはまだ長いトンネルの中」等の監督を務めるプロデューサー なるせゆうせいが手掛ける。今回は子供たちへの本格的な舞台芸術作品を体験することを目的とした、文化庁子供鑑賞体験支援事業として小学4年生~高校3年生までの方に無料招待も行っている。

徹底したアナログ演出。

開幕前、60年代のフォークソングが流れる、時代を象徴するメロディー。大学に入るために東京にやってきた主人公・タモツ(東拓海)、一流の大学に入る、ちょうど学歴社会がものを言う時代に入った頃、一流の大学に行って一流の企業に入ることがステータス、タモツもそんな未来を思い描いていた、ある人物、あることに出会わなければ。特にこれといった考えもなく、思想もなく、なんとなくある思想団体に入部、時代は学生運動の真っ只中。

女の子たちに囲まれて。

いわゆるマルクスかぶれのふりをする、それが「かっこいい」と思ったから。浅はかなタモツ、リーダーの七曲(末原拓馬)は彼を見抜いていた、赤い箱を渡し、ある指示を出す。

赤い箱を渡されて。うまくいけば…この赤い箱は実は…。

あるところへ行き、リボンを解いてスイッチを押してくるように、と。純粋なタモツは一ミリも疑わずに言う通りにする…。
これが全ての始まり、タモツの運命の歯車が狂い出す。家族は母(久下恵美)と妹(市川美織)、妹は頻繁に電話をかけてくる(もちろん、ダイヤル式の電話!)、仲良し親子。実は七曲に依頼されたこのスイッチ、実は時限爆弾のスイッチだった。実行し、その場所を離れた途端に大きな爆発音、彼は知る、とんでもないことをしてしまったことを、しかも死者も出た。

爆破のことが新聞で大きく報じられる。動揺するタモツ。
警察がやってきて…。
マスコミ関係の2人。
思想団体のリーダー・七曲。自分の手は汚さない。

いきなり殺人犯となるタモツは不安と罪の意識とで頭は大混乱。警察当局は学生思想団体が怪しいと睨む。捕まれば…囚われの身になる、逃げるタモツ、偶然にも関係ない人物が犯人として捕まったことを新聞で知り、更なる罪悪感が募る。彼は血だらけの少女・純子(相楽伊織)と出会う。

美人な純子。タモツは心奪われる。
純子の秘密を知るタモツ。
軍国先生の暴力。

彼女に心惹かれるタモツ、彼女は思想団体に所属していたのでタモツが戻ってしまうのは必然。更なる過酷な運命、そして時代にタモツは飲み込まれていく。
タモツは純粋、邪心と言うものがない。そこにつけ込まれる”弱さ”、”いい人”故に利用されてしまう。妹の婚約者・岩崎(高橋ピロリ)は借金だらけの母娘に近づく、ラスト近く、岩崎は叫ぶ「戦争に負けたんだ、この国は!」歴史に詳しい人ならこの言葉に気が付くであろう。

いざ、国会議事堂へ。
安保闘争。拡声器で呼びかける七曲。
機動隊。

2時間怒涛のような展開、そして国会議事堂でデモをしようと七曲、安保闘争は60年と70年に行われた。70年安保の間に警察が証拠として押収した投石は全国で241トン、劇毒物954個、爆発物1,911個、火炎瓶18,104本、角材20,428本、鉄パイプ640本と言われている。

このあと、悲劇が…。
妹の婚約者、あることを告げて…。

思想団体の女性・樺(倉知玲鳳)が機動隊によって殺された。このエピソード、実際に起こったものをベースにしている。病院は事故と言い張り、それに大いなる不満を持つ思想団体の面々。この出来事についてもタモツは「僕のせいだ」と落ち込む、近くにいたにも関わらず助けることができなかった不甲斐なさを責める。人と人との繋がりが連鎖し、悲劇が連なっていく。警察、記者etc.皆、時代の波に飲み込まれていく。

火炎瓶を作る七曲。

タモツが生まれるのが、あと10年遅かったら、彼は普通の学生生活を満喫できたかもしれない、時代には抗えない。この時代をしっかりリアルに覚えている世代も、もはや少なくなっている昨今、忘れてはいけない時代。タモツ役の東拓海の熱い芝居、それを取り巻くキャラクターの個性、悲劇の連鎖、公演は4日まで。

物語
時は、高度経済成長し続けた1960年代後半。
世界を変えるのは自分たちだと本気で信じ、
学生運動が活発化していたそんな時代に日暮タモツ (18) は大学に入学した。
タモツはまったくのノンポリだったが
思想を持つインテリがモテるという理由なだけで、熱き思想団体に入部。
マルクスかぶれのフリをし、世界を変えられるのは自分だと吹聴したタモツに
先輩たちは新入生歓迎の儀式だととある指示を出す。
とある場所に行き、とあるスイッチを押してこいと。
タモツは、それが時限爆弾の爆破装置のスイッチだとも知らずに
それを実行し、殺人を犯してしまう。
やがてその事実を知り、罪の意識に苛まれるタモツ。
学生運動の鎮圧に目を光らせる警察当局からも逃げ、
その逃げている中で出会う血だらけの美少女純子。
この純子への下心から革命思想団体へと再び逆戻りした事により
タモツはさらなる時代の渦へと巻き込まれていく …。

概要
舞台『ロッカールームに眠る僕の知らない戦争』
期間会場:2024年2月2日(金)~2月4日(日) 草月ホール
脚本・演出:なるせゆうせい
企画:オフィス・インベーダー
出演:
東拓海、相楽伊織、市川美織、
伊万里有、佐藤祐吾、倉知玲鳳、磯野亨、足立英昭、あまりかなり、上之薗理奈、高橋ピロリ、
柊木智貴、青地洋、
久下恵美、丸尾聡、
末原拓馬
アンサンブル:舛田大樹、鈴理
主催:「ロカ僕2024」製作委員会

公式WEB:https://www.rokaboku-stage.com/