劇団四季の最新ミュージカル『ゴースト&レディ』がJR東日本四季劇場[秋]にて5月6日より開幕。稽古真っ只中、取材会が行われた。登壇したのは演出のスコット・シュワルツ、グレイ役候補 金本泰潤、萩原隆匡、フロー役候補の真瀬はるか、谷原志音 そして劇団四季の代表取締役の吉田智誉樹。
原作は「うしおとととら」や「からくりサーカス」などのヒット作で知られる藤田和日郎の中編コミックス「黒博物館ゴーストアンドレディ」、19世紀の欧州で近代介護の礎を築いた「ランプを持った淑女」、フローレンス・ナイチンゲール(フロー)と、芝居好きなゴースト、グレイにまつわるファンタジックなラブストーリー。
原作の感想ということで、真瀬はるかは「目の描き方が特徴的、特にフロー…絵からみなぎるパワーがすごい」と語ったが、原作のフローの目力がとにかく印象的。谷原志音は「普段マンガを読み慣れていないのですが、この作品は面白くてあっという間に読みました。ナイチンゲールが普通の女性として描かれていて共感できます」と語る。
金本泰潤は「グレイは何をしたかったのか?と悩んだのですが、稽古しながら僕自身、人を信じて生きることの大切さを学びました。誰しも『黒歴史』がありますが、それを受け止め背負って生きていくのがグレイなのかな?と」とコメント、萩原隆匡は「『新しいことをやると文句を言う人は昔からいるんだ』(笑)」と語り、「我が道を行くフローと、男の理想のようなカッコよさを持つグレイのコンビが魅力的」とコメント。
演出のスコット・シュワルツは「ひとつ挙げるならば『我々はいかに人を癒すことができるか』『互いをどのように癒しあうのか』」と語る。フローとグレイ、「誰かを愛することを避けていた2人がいかに愛しているか、自分は人を愛することができるか、幕切れでようやく気が付く、その軌跡を描いています」とコメント。
また漫画の舞台化、原作ファンも多い作品、作画の雰囲気やタッチをどこまで舞台で再現できるか、というのがこういった作品の舞台化の難しいところであるが、またクリエイター陣にとっては挑戦しがいのある”ハードル”。稽古場の入り口には原作の絵がびっしり貼られていたが、キャスト・スタッフ陣の原作への並々ならぬリスペクトが伝わる。
スコット・シュワルツは原作の藤田和日郎に会ったという。その時に「私が描いた2次元のマンガを3次元にしてください」と言われたそう。毎日原画を見て稽古の日々。また原作をそのまま踏襲している場面もあるそうで、ここは原作を読んでいるファンにとっては『観劇のツボ』といえよう。
劇団四季代表取締役の吉田智誉樹は「スコットさんが作品に込められたテーマは、『人生は生きるに値する』という四季の理念とも通じる」と語る。『人生は生きるに値する』、これは劇団四季旗揚げ当時からの劇団のテーマであり、理念。スコット・シュワルツの演出作品と言えば『ノートルダムの鐘』。これを初めて見た時の感想を吉田智誉樹は「忘れがたい」と語った。今回もその手腕が発揮されることは想像に難くない。
この物語の冒頭は衝撃的な始まり。フローはゴーストに向かって「私を殺してほしい」と懇願する。辛い思いを抱えていたフローだが、ラストは大きく変化する。「物語を終えるときにはポジティブなものに大きく変化している」と谷原志音。また閉塞的な環境にいたフローとグレイ。裕福だが厳格な家庭で育ったフローと劇場にゴーストとして閉じこもっているグレイ。ある種、”似た者同士”「そんなふたりが出会い、フローが自分の道を進むなかで、お互いに影響されながらグレイも変わっていく」と萩原隆匡。また、金本泰潤は「どんな困難も打破しようとするフローのエネルギーとグレイが自分の苦い過去を認めて向き合う…」とコメント。互いに影響しあい、気付きを得ていく、そこにこの作品の面白さと多面性がある。「藤田和日郎先生のマンガには男性ファンが多い。劇団としても男性ファンを開拓したい」と吉田智誉樹。海外進出についての質問が出たが、「まずこの作品をヒットさせたい」と回答。
「あらゆる方に夢中になっていただける壮大なラブストーリー」とスコット・シュワルツ。稽古はますます熱を帯びている。公演は5月6日より。
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<製作発表会レポ>
物語
時は19世紀。ロンドンのドルーリー・レーン王立劇場には〈灰色の服の男=グレイ〉と呼ばれる有名なシアター・ゴーストがいた。彼が客席に現れるとその芝居は必ず成功すると言われている。
ある日、彼のもとに一人のレディが現れ、「私を殺してほしい」と懇願する。彼女の名は、フローレンス・ナイチンゲール(フロー)。フローは看護の道に進むことが使命と信じながらも、看護婦を卑しい仕事と蔑む世間の風潮と家族の反対に抗えず、自らの生きる意味を見失い、死を望んでいた。芝居をこよなく愛するグレイはそんな彼女に興味を持ち、自らが悲劇の主役になるため、「フローが絶望の底に落ちた時に取り殺す」ことを条件に願いを聞き入れる。
グレイとの契約で死を覚悟したことにより、看護の道を突き進むことを決断したフロー。行動を共にするようになった二人は、クリミア戦争での傷病兵を収容するスクタリ陸軍野戦病院へ赴く。現地では「女性に看護はさせない」という軍からの強い反発が待っていたが、フローは力と知恵を振り絞り、数々の困難、そしてグレイの期待する絶望を撥ね除け、自らの理想に向かって突き進み始める。グレイもそんなフローの情熱に魅せられ、次第にフローの手助けをするようになり、いつしか二人は不思議な絆で結ばれていく。
スクタリ陸軍野戦病院の改善も進み、フローは「クリミアの天使」と呼ばれるようになっていた。しかし、そんな彼女の活躍をよく思わない人々もいた。陸軍野戦病院を管轄する軍医長官のジョン・ホールもその一人。フローの活躍によって、必死に築き上げてきた自らの地位を失いかけたホールは、彼女を亡き者にしようと謀り、とある人物に命令を下す。
その人物はグレイと同じゴーストで……。
公演概要
日程・会場:2024年5月6日〜 JR東日本四季劇場[秋]
原作:藤田和日郎「黒博物館 ゴーストアンドレディ」(講談社「モーニング」)
脚本・歌詞:高橋知伽江
演出:スコット・シュワルツ
作曲・編曲:富貴晴美
振付:チェイス・ブロック
イリュージョン:クリス・フィッシャー
出演 ※東京公演出演候補
フロー(フローレンス・ナイチンゲール):真瀬はるか / 谷原志音
グレイ:金本泰潤 / 萩原隆匡
ジョン・ホール:瀧山久志 / 野中万寿夫
デオン・ド・ボーモン:岡村美南 / 宮田愛
アレックス・モートン:ペ・ジェヨン / 寺元健一郎
エイミー:木村奏絵 / 町島智子
ウィリアム・ラッセル:内田圭 / 長尾哲平
ボブ(ロバート・ロビンソン):菱山亮祐 / 平田了祐
公式サイト:https://www.shiki.jp/