御寺ゆき, 川本紗矢, 優希クロエ 出演「将棋無双・第30番〜神局のヴァンパイア〜」E-Stage Topia × 黒薔薇少女地獄 開幕

元吉庸泰と若宮亮による E-Stage Topiaと太田守信が主宰する演劇ユニット 黒薔薇少女地獄が送る、『将棋図巧・煙詰 ~そして誰もいなくなった~』(2023年)に続く詰将棋シリーズ最新作は、江戸時代の大名人 三代伊藤宗看の『将棋無双・第30番』をモチーフとしたゴシックファンタジー「将棋無双・第30番〜神局のヴァンパイア〜」。

宗看の「将棋無双・第30番」の棋譜(将棋の対局記録)とリンクした物語世界に、ヴァンパイアを主人公にした物語が描かれる。宗看の怨念によって作られた世界に閉じ込められていたヴァンパイアの「玉将」は、宗看の呪いから世界を解放しようと苦悩し続ける。玉将役を御寺ゆき、飛車役を川本紗矢、宗看役を優希クロエが挑戦。
冒頭は歳をとった飛車(川本紗矢)、子供達にせがまれる、若い頃の話を。遠い目の飛車。そして物語が始まる。オープニングはこの作品のテーマとも言える楽曲、音楽劇ではないが、なかなかに印象的、ダンス、歌で全員が登場。
ゴシックファンタジーと将棋、組み合わせの妙というのだろうか、不思議なマッチ感。衣装はゴスロリ(ゴシックアンドロリータの略称)、ミステリアスな雰囲気を醸し出す。このファッションで少女の夢やそこに潜む心の闇や神秘的な美しさを表現する。そこに神局と称される「第30番」、これと掛け合わせる。床は将棋盤、現行の縦横9升40個の形になったのは室町時代になってからだそう。世界には同じようなゲームがたくさんあるが、取った駒を再使用するのは日本の将棋だけ。そこが面白く、将棋に詳しい人なら、この局面でこの会話、動き、とシンクロしていくところは興味深く観ることができるはず。

キャラクターは玉将(御寺ゆき)、玉将の動きは、チェスのキング、英語でもkingと訳される。この玉将がなんとヴァンパイア。飛車は英語はrookと訳される。語源は今昔物語集に登場する空飛ぶ車ではないかという説がある。銀将、角行とともに古くから戦術を左右する駒として知られてきた。ここでは飛車は「玉将は友達」という。角行(桜井あゆ)は、なんとヴァンパイア・ハンター!鎌倉期に大将棋において考案された駒で、角行が成ると竜馬となる。馬になるとさらに利きが広がり、自陣でも大活躍。チェスのビショップと同様の動きをする駒で、英語でもBishopと訳される。銀将(熊倉功)、英語ではそのままsilver generalと訳される。ここでは物語の要を担う。そしてポジション的には「ヒール」宗看(優希クロエ)、江戸時代の将棋指し七世名人三代伊藤宗看、江戸時代の将棋棋士、家元、指し将棋、詰将棋ともに優れ、「鬼宗看」とも呼ばれる。ここからキャラクターを「構築」、将棋を知らない人は「将棋って面白そう」と興味が持てること、請け合い。「第30番」古来より神局とよばれた奇跡のように美しい傑作。この舞台での宗看の設定は大きく頷けるところ。

上演時間はおよそ100分、将棋の駒の動きと物語のシンクロが「そうくるか」と思わせる。それぞれの関係性、思い、駒とそこから構築されたキャラクター、ラストの景色は泣ける。シリーズ2作目ということだが、次の一手に期待。

<公式舞台写真到着!撮影:田名後健吾>

将棋無双とは?
江戸時代の将棋指し七世名人三代伊藤宗看による、詰将棋100番を纏め、江戸幕府に献上された作品集である。原書名は「象戯図式」。
手数は9手(65番)から225手(75番)に亘る中でも、神局と称される「第30番」、歩頭馬鋸の傑作である第70番、それまでの長手数記録(99手)を破った第75番、そして不規則竜追いの第100番(大迷路)は有名である。また、その複雑難解さ故にいくつかの不完全作が見つかっており、第5、6、8、31、37、40、57、63、64、65、79、92番がそれである。
弟の贈名人・伊藤看寿の「将棋図巧」と並び、古今最高峰の詰将棋作品集と言われる。その多くは非常に難解で、なかなかその解答本が見つからなかったため、「詰むや詰まざるや」または「詰むや詰まざるや百番」とも呼ばれた。
米長邦雄は、「将棋図巧と将棋無双の200題すべてが解ければプロ棋士になれる」と公言していた。

あらすじ
「ねえねえ、おばあちゃん。今日もお話を聞かせて。おばあちゃんの若い頃のお話」
「飛車おばあちゃんは有名なヴァンパイアハンターだったんでしょ?」
昔々、まだ世界が一枚の、9×9=81マスの盤面だと信じられていた時代。神に背き仇を為す存在が人間たちを恐怖させていた。その名は吸血鬼――玉将という。

しかし、人々は知らなかった。玉将が如何に悲しき逆十字の運命(さだめ)を背負っているか。そこには、世の理を覆そうとしたものの遂に成し遂げることの叶わなかった宗看の呪いが関わっていた――。

概要
日程・会場:2024年4月10日〜14日 上野ストアハウス
脚本・演出:太田守信 (黒薔薇少女地獄/エムキチビート)
総合監修:若宮亮
出演:御寺ゆき、川本紗矢、桜井あゆ、中井杏奈、真田林佳、熊倉功、吉水雪乃、鈴木真衣、神崎晴香、優希クロエ / 高松優奈、今野美彩貴、政田圭敬
公式サイト:https://e-stagetopia.com/the30th/