舞台『淡海乃海-天下静謐の雫となりて-』開幕  戦乱の世を生き抜く武将の生き様

石渡真修、上仁樹ら出演する上演される舞台 『淡海乃海-天下静謐(せいひつ)の雫となりて-』が開幕。
『淡海乃海(あふみのうみ)』シリーズは、ライトノベル作家・イスラーフィールの小説家デビュー作で、これまでに漫画化や舞台化、オーディオブック化などが展開されている人気シリーズ。今回は4回目の舞台化で、小説「淡海乃海 水面が揺れる時 〜三英傑に嫌われた不運な男、朽木基綱の逆襲〜」西瓜すいかの脚本、吉田武寛の演出。

朽木弥五郎基綱(石渡真修)
スーツ姿の『俺』(松本慎也)
ハードなシーンだけでなく!クセモノ揃い!

時は戦国時代。朽木弥五郎基綱(石渡真修)は2歳で家督を相続する。ここは史実通りだが、大きく違うところ、それは朽木弥五郎基綱は歴史好きのサラリーマン『俺』(松本慎也)が転生した姿、よって日本史は頭の中に入っている。戦国時代がその後、どうなるのかは先刻承知。今風で言えば彼の頭の中は「未来はネタバレ」状態。よって舞台上に登場する事象は「歴史通り」のところもあれば、そうでないところもある。そこが「if」の面白さ。サブタイトルの天下静謐の『静謐』は「世の中がおだやかに治まること。また、そのさま」という意味。戦国時代なので、全く穏やかではないが、世の中が平和に治まるように朽木弥五郎基綱は奮闘し、戦う。「この家を守る、頭を使ってな!」「機は待つのではない、来るのだ」と言う。家の安泰は戦国時代の武将にとっては最も大事なこと。家が安定していなければ、その先の天下をとるなど、到底できない。三好家の次期当主となるのは三好義興(岩崎良祐)のはずだったが、若くして病死、三好長慶(友常勇気)は無念を隠しきれない。

三好義興(岩崎良祐)若くして病死、三好長慶(友常勇気)は慟哭。
甥の三好義継(上仁樹)に三好家を託そうとする。
この先長くない三好長慶は松永久秀(山沖勇輝)に頭を下げる。
松永久秀は男気のある人物。長慶の死後は義継に仕える。
朽木小夜(赤池紗也加)。ここはこの作品のオリジナル。

そして長慶は甥の三好義継を後継者に指名。突然の運命に翻弄されつつも乱世を生きようとする。史実では三好氏本家の事実上最後の当主。公家の「九条家」の血筋を引いていたがため。その九条家は足利義晴、足利義輝と2代に渡って室町幕府将軍の正室を出した近衛家と対立、これに対抗するため、九条稙通が一存に娘(あるいは養女)を嫁していた。こうした九条家と三好一族の近い関係が、後継者に押し上げたと考えられている。多少、日本史をかじっておくと物語の面白さは倍増するが、時折俺』が登場して色々と解説をしてくれるので!

三好義継にとっては降って湧いたような運命。

見どころは、なんといってもアクション。

子供が生まれる、守らなければ!『俺』もその想いが重なる。
足利義輝(公方様)(松村優)。悲劇的な最期は史実通り。

草月ホールは客席と舞台の距離が近いので迫力満点、さらに客席通路を武将たちが駆け抜けるので、戦国時代の「風」を感じることができる。そして戦国時代と言えば織田信長などの有名武将が必ずといっていいほど登場するが、ここでは登場しない。そこもまた、面白さの一つ。武将たちの思惑、人間関係、強い当主が亡くなれば「好機」、また武将ではないが、一向宗の力は侮れないほど強大、民衆の力、武将たちは彼らの動きに警戒する。

本願寺顕如。

六角左京大夫輝頼(優)。
御爺(朽木稙綱)(中尾みち雄)、可愛い孫。

サブタイトルの”天下静謐の雫となりて”、本当の天下統一は関ヶ原の戦いで決まるが、それまでの武将の生き様、そして死は、長い歴史の観点から見れば”雫”のよう。乱世を生きる若者、結局”雫”となるのはわかっているものの、その一瞬の煌めき、必死に生きる姿、そこに感動がある。ラスト、この先も戦いが続いていくであろうことは分かりきっているが、どんな困難が待ち受けようともただひたすらに前を向く登場人物たち。上演時間は休憩なしの2時間15分強。公演は6月2日まで。

あらすじ
戦国時代、近江の弱小国人領主「朽木家」に【朽木基綱】として転生した、歴史好きのサラリーマン『俺』。
そして戦国の覇者である三好家の血筋に生まれた「十河孫六郎重存」――のちの【三好義継】。
2人は同年の生まれであった。
転生者である【朽木基綱】は、その歴史知識を活かして、戦国で生き残ろうとする。
彼は知っていた。
1563年に、朽木に領地を接する【六角家】が崩れること。同じ年に三好家の跡取り【三好義興】が死ぬこと。
1564年に、三好家の当主【三好長慶】が死に、三好が分裂すること。
そして1565年に、将軍【足利義輝】が【三好義継】に殺されることも、彼は知っている。
もちろん、この世界で史実通りに事が運ぶかはわからない。
――だが、戦国の勢力図についての知識は役に立ち【朽木家】は、史実の八千石よりも随分大きい「大名」と言える家になっていった。
対する【三好義継】は、史実通り強く、京の覇権を握る三好家に生まれた。
彼は三好家当主の弟の息子であり、分家筋の若者であった。
当主【三好長慶】の息子で次期当主となる【三好義興】を支える立場になるよう育てられていた。
――しかし、史実通りに、三好義興が死に、当主三好長慶が死んだことで母の血筋が良かった彼が、三好家の当主に抜擢された。
前世知識を使って乱世の荒波を乗りこなし、成り上がる若き武将【朽木基綱】。
突然巨大な三好家を率いることになり、乱世の荒波に放り込まれた若者【三好義継】。
戦国の世、同じ年に生まれた2人の若者は、それぞれの想いを持って生き抜いてゆく。

――生き抜いてやる。継ぐべき想いの為に。命の、為に。

概要
公演名:舞台『淡海乃海-天下静謐(せいひつ)の雫となりて-』
日程・会場:2024年5月29日(水)~6月2日(日) 草月ホール
原作:イスラーフィール『淡海乃海 水面が揺れる時~三英傑に嫌われた不運な男、朽木基綱の逆襲~』(TOブックス刊)
原作イラスト: 碧 風羽
漫画:もとむらえり
脚本:西瓜すいか
演出:吉田武寛
キャスト:
朽木弥五郎基綱役:石渡真修
三好義継役:上仁樹

足利義輝(公方様)役:松村優
六角左京大夫輝頼役:優

朽木小夜役:赤池紗也加
詩役:高倉萌香

三好長慶役:友常勇気
松永久秀役:山沖勇輝

重蔵役:長濱慎

灯役:田中晃平
櫂役:河合健太郎

三好長逸役:七枝実
慶寿院役:斉藤ひかり
三好義興役:岩崎良祐

御爺(朽木稙綱)役:中尾みち雄

平井定武役:東達也
三好実休役:石原健太郎
六角義治役:湊竜也
奈津役: 稲田有梨

細川藤孝役:桑野晃輔

俺役:松本慎也

アンサンブル:長田健一/石倉和樹/早川勇平/岩瀬和樹

公式サイト:https://www.tobooks.jp/afumi-stage4/

公式X:https://twitter.com/afumistage4/