劇団おぼんろ第24回本公演『聖ダジュメリ曲芸団』が5月30日よりLIVEエンターテインメントビル「Mixalive TOKYO」(東池袋)内「Theater Mixa」にて開幕。数多くの物語を紡いできた劇団おぼんろは、国内外で高い評価を得ており、`23年6月にはモルドバ共和国で行われる国際演劇祭への招聘上演が実施。4回のスタンディングオーベーションを受けなど大変高い評価を得ている。海外での注目が高まる劇団おぼんろが客演とともに織りなす儚くも美しい物語の新作『聖ダジュメリ曲芸団』。
開演5分前から前説が始まるが、よくあるパターンではなく、ほぼ全員、しかも客席通路まで降りてくるので!観客に話しかけたり、ちょっと体操しているキャストも(笑)。また、劇中でキーとなるものをお客様に託したりするので!観客参加型、また、そのための練習もするので早めに席についておきたい。
「昔、昔…」「ある日、聖ダジュメリという者が…」1人ずつキャストが登場し、読み上げる。「不気味で聖なる物語、とくとご覧あれ!!」で始まる。
軍服の男、ジュンシ(さひがしジュンペイ)「直接対決だ!」そしてキャストが歌う「皆殺しの物語、今、始まる」と。不穏だが、どこかカラッとしている、不思議な空気感、悲壮感もない。客席からイイワケ(末原拓馬)、「みんな、死んでる!」「お前も死んでいるのか?」と客席に向かって話しかけるので、ここは反応しよう。「僕たちの仲間が全員、殺された」というフレーズも…なかなか物騒な。
キャラクターのネーミングがユニーク、かつ意味ありげ。イイワケ、ツキソイ(横井翔二郎)、カチグミ(井俣太良)、チュードク(織部典成)、ミチナカバ(佐藤たかみち)、ウチジニ(塩崎こうせい)、ジュンシ、ハイアガリ(わかばやしめぐみ)、イキザマ(高橋倫平)。
とにかく賑やかなシーンが多く、ミュージカルではないが、歌がふんだんに出てくる。クラップなどで盛り上がれるので、ここは大いに!カチグミは猫(マタタビをもらうシーンがあるので(笑))、ちょっとオネエ言葉。
それぞれのキャラクター、いろんな想いを抱えている。イイワケは「俺は勝利するはずだ」と言う。また、衝撃(笑撃)的なシーンも!ツキソイにそっくりな人形が!!また、パーティシーンではシャンパンを開けたりして大はしゃぎな場面もあり、だが、冒頭で歌ったフレーズ「皆殺しの物語」。それぞれのキャラクターの関係性、姉と弟、幼馴染など、そういった関係はどこにでもある。
「何のために生きるんだ」というフレーズも出てくる。”何のために”、誰しもが少なくても一度は考えたことがあると思う、根源的な問いかけ、生と死は隣り合わせ、殺されるシーンがあるが、これがどこか突き抜けている。車椅子に乗ったツキソイ、カリスマ的な存在になったりもしたが、「ちっとも楽しくなかった」と呟く。そして「人間は愚かだ」とも言う。
ファンタジックかつシュールな物語にのせて人間の本質、生きることなど、根源的な問いかけをする。多様な捉え方ができる作品、この劇場は客席数は301(公式サイトより)とあるが、観客の数だけ解釈や感じ方がある。物語自体は、「え?!」というような思わぬ展開があったりして飽きさせない。メイクはどこか笑えて、どこか憂いがあり、セットも独特の色使い、楽曲も多彩、じっくり聴かせたり、あるいはみんなでわいわい歌うものもあり、またロックテイストのものもあって曲だけでも楽しめる。おぼんろらしい超がつくアナログな舞台が、また味わい深い。登場キャラクター(猫だったり、ダニだったり)は、懸命にその瞬間を生きる、山あり谷あり、それが生きること。休憩なしの2時間20分強。公演は9日まで。
公開ゲネプロの前に簡単な会見が行われた。
登壇したのは井俣太良、織部典成、佐藤たかみち、塩崎こうせい、横井翔二郎、さひがしジュンペイ、高橋倫平、わかばやしめぐみ、末原拓馬。
末原拓馬は「新作作る時は緊張と興奮と内まぜ…楽しくなれる作品です。今、作りたいもの、作るべきものを、ただ、ただ信じて。お客様の反応はわかりませんけど、新しいもの、胸を張って!喜んでもらえたら」と挨拶した。
さひがしジュンペイは「見どころはたくさん、テーマは”愛”、いろいろな愛の形を感じていただきたい」とコメント。登場キャラクターは愛を求め、愛を感じ、愛を受け止め、愛を差し出す、形は様々。
織部典成は自身の演じる役については「普段は天真爛漫な役が多いんですが、今回は特に喜怒哀楽の激しい役で、その感情の演じ分けを、稽古で楽しみながらコミカルに作り上げていきました」とコメントした。
佐藤たかみちは「歌が11曲あると知らされた時、そんなに!?というサプライズのような驚きがありました」とコメントしたが、ミュージカル並みに楽曲が多く、しかも様々なメロディで聴きどころも多い。
塩崎こうせいは殺陣について「今回はダニとノミの対決ということで、切って切られて終わりというものではなく、ダニとノミらしい斬新なものにしてみました」と語る。
横井翔二郎は「自分で作って持ち込むというよりは、稽古場で一生懸命生きてみて見つかったものを大事に育てていった感じ。それがもし違ったら拓馬くんが違うと言ってくれるので、それを信じて作ってきました」と語る。
井俣太良は「歌あり、笑いあり」と言いつつ「これまでのおぼんろはストレートな悲劇をいかに面白可笑しくするかをやっていましたが、今回は落ちるとこまで落ちてみたら面白くなったみたいな感じが面白い…刺さる人には刺さる、刺さらない人には刺さらない」と作品を評した。さらに「受け止める幅が広い作品になっています」とコメント。
わかばやしめぐみは「どの曲も耳に残る、いろんなジャンルの楽曲があります、全部楽しめる作品」と語るがソロで歌うシーンもあり、ここがなかなか圧巻。
高橋倫平は「おぼんろでは役者を語り部、観客を参加者と呼んでいます。観客は語り部が紡ぐ物語を一緒に作り上げる者として参加してほしいという思いがあるから。こういうスタイルは唯一無二」とコメント。今回も参加する場面がしっかりあるので!
また、文化庁による子供文化芸術活動支援事業(劇場・音楽堂等の子供鑑賞体験支援事業)の取り組みについての質問が出た。「子どもの頃、きっと皆さん、ごっこ遊びをしたと思います。それを極上版まで極めた大人たちが我々だと思っているので、必死に頑張って遊び続けるとここまでできるっていう姿を見てほしい。生きていくといろんな感情やいろんな情報を得て、社会、歴史、宗教、病気、命について知れば知るほど表現できない感情を持つと思う。それを突き詰めると、歌って踊ってふざけると未来がある。っていうのが我々の伝えたいこと。だから今回はとにかく遊びに来て、人生の遊び方を見つけてみてほしい。人生の先輩から!年齢経験関係なく全員、遊びに来てください!友だちになるつもりで迎えます!」とコメント。
最後に公演PR。「楽しんで」「前のめりで」「100年、200年続く作品に」などの言葉がでた。さひがしジュンペイが最後に「思ったようにみていただくのが最高です」とコメント。自由な気持ちで観ることが一番楽しい作品である。
おぼんろ主宰・末原拓馬 開幕コメント
お誘いします。なぜか大人びてしまったこどものあなた、いつまでも大人になりきれないこどものようなあなた。ご存知でしたか?妄想がちで、物語の世界と本当の世界が混ぜこぜになりがちな方にとって演劇というのはとても良いあんばいです。目の前にある物語世界に自分で潜り込んで旅をして、自分で帰ってくるのです。日常の中で考え事をするよりも、物語の中でのほうが本当の自分を見つけやすい、そんな方にぜひおすすめなのがおぼんろです。私たちがそうだから断言できます。
今回はボロオンというさびれた街で繰り広げられる、害虫サーカスの物語です。不気味で奇妙な世界の中をゲラゲラ笑って歌って踊いながらに旅してみてください。ダニやノミに、血吸わせ猫や都市衛生監督官、曲芸団の座長たち…個性豊かな登場キャラクターたちはきっとあなたの生涯の友達になるでしょう。思い出に残る体験をしに、特別に、だけど軽はずみに遊びにきてください。物語をご用意し、両手を広げながらにお待ちしております。
<稽古場レポート>
あらすじ
昔々、はたまた未来か、あるいは現在か・・・
貧しい街の片隅では、今日も聖なる害虫たちのサーカスが繰り広げられております。
生まれながらにして一族を失い、自らの寿命もさほど長くないと知ったダニの「イイワケ」は、短くも輝かしい一生を夢見て座長に仕えることにしました。一座は街の害虫駆除計画のための税金を支払うために、日夜必死でお金を稼ぐのです。
社会から取り残され害虫サーカスを始めた貧しい2人の、税金を取り立てる町役人、イイワケと共に大虐殺から逃げ延びた虚弱体質のダニ、先輩芸虫である職人気質のノミたち、そんな彼らを蔑み嫌い、いつか人間たちを駆逐してやろうと心に決めているマダニの兵隊。一座の害虫たちの報酬がわりに飼われている血吸わせ猫・・・個性豊かな命がけの登場人物たちが織りなす、童話的な叙情悲喜劇。聖ダジュメリとは? 物語は思わぬ方向に進み続け、そして終わらない終わりを迎えていく。
概要
劇団おぼんろ 第24回本公演『聖ダジュメリ曲芸団』
日程・会場:2024年5月30日(木)〜6月9日(日) Mixalive TOKYO Theater Mixa
作・演出:末原拓馬
出演
井俣太良(少年社中)
織部典成
佐藤たかみち
塩崎こうせい
横井翔二郎 (以上、五十音順)
さひがしジュンペイ
わかばやしめぐみ
高橋倫平
末原拓馬 (以上、おぼんろ)
主催:劇団おぼんろ/講談社/ホリプロインターナショナル/ローソンエンタテインメント
問合:obonro.info@gmail.com