「舞台『文豪とアルケミスト 旗手達ノ協奏(デュエット)』」が開幕。なお、東京・シアターHの柿落とし公演となっている。
DMM GAMESで配信されている「文豪とアルケミスト」は、人々の記憶から文学が奪われる前に、文豪と共に敵である“侵蝕者”から文学書を守り抜くことを目指す、“文豪転生シミュレーションゲーム”。第七弾となる本公演では、志賀直哉が強大な侵蝕者を前に、かつての友である小林多喜二との間で葛藤する様子が描かれる。脚本はなるせゆうせい、演出を吉谷晃太朗が担う。
冒頭、小林多喜二(泰江和明)が現れ、続いて志賀直哉(谷佳樹)が登場。手紙の内容を語る。文学史上有名な、小林多喜二に宛てた志賀直哉の書簡がベース、基本的には多喜二に対する高い評価と激励の内容。
アクション、史実では小林多喜二は特高に狙われており、日本のプロレタリア文学の代表的な小説家、共産主義者、社会主義者、政治運動家。『蟹工船』を発表して評価を得、大農場の小作人と小樽の労働者の共同闘争を描いた『不在地主』を発表、投獄と釈放を繰り返している。小林多喜二は激励の手紙を受け取って大変喜んだが、その後に警察に逮捕され、虐殺されている。直哉は27歳で木下利玄、武者小路実篤らと同人誌『白樺』を創刊、後に「白樺派」と呼ばれる人道主義的立場からの文芸潮流を形成。そういった史実がベースになっている。最初の方で志賀直哉が「生き延びてくれ!」と叫ぶ、「来世で会いましょう」と小林多喜二が言えば、志賀直哉は「必ず!」と返す。
オープニングでは歌詞をよく聞くと白樺派の説明が入ってるのでわかりやすい。そして『本編』に入るのだが、この公演はシアターHの柿落とし公演でもあるので、「柿を落としてるんだー」のセリフも(笑)。志賀直哉は裕福な家の生まれ、中等科で落第したために武者小路実篤(杉江大志)と同級に。
時折声が聞こえる、「気をつけろ、直哉さん」。セリフをよく聞くとそれぞれの生い立ちやバックボーンも見える、石川啄木(櫻井圭登)と広津和郎(新正俊)は生前、新聞記者をやっていた。もちろん、フィクションだが。細かい史実も織り込んで物語は進行していく。
物語の軸は小林多喜二と志賀直哉だが、それ以外の登場人物のバックボーンも見逃せない。武者小路実篤は親友・志賀直哉を見守り続ける。有島武郎(杉咲真広)は白樺派の中心人物、里見弴(澤邊寧央)は 兄である有島武郎・生馬の友人志賀直哉の強い影響を受け、『白樺』創刊に参加。石川啄木(櫻井圭登)は岩手県出身の日本の歌人、詩人。文豪アルケミストでは傲慢な借金王という矛盾に満ちた俺様歌人。史実でも啄木は借金まみれで生活のためと言いつつ借りては遊興費に充てていたとか。高村光太郎(松井勇歩)、ここではクールな芸術家。広津和郎(新正俊)は父が偉大な作家、ここでは正義感が強い人物として描かれている。
アナログな手法の演出、布を使ったアクション、また、客席通路も使い、劇場を目一杯活用する。前の方の席に座るなら、多少絡んでくることもあるので(笑)。それぞれのつながり、絆、そこには大切にしたい想いがある。「お前が今、一番必要だ」と志賀直哉は小林多喜二に言う。しかし、侵蝕者との戦いは一筋縄ではいかない、次第に追い詰められていく。そして危機的状況に陥るが…というのが大体の流れ。
見どころはやはりアクションシーン、そしてそれぞれの想いが迸るシーン、特に小林多喜二と志賀直哉の場面は感涙必至。ラストはもちろん、バッドエンドにはならないのでご安心を。配信も用意されており、劇場に足を運んだ方もそうでない方も!公演は東京は16日まで。その後は21日から23日まで京都劇場にて公演。休憩なしの1時間50分程度。
なお、ゲネプロの前に簡単な会見が行われた。登壇したのは志賀直哉役の谷佳樹、武者小路実篤役の杉江大志、小林多喜二役の泰江和明。
谷佳樹は「志賀直哉と関わりの深い人だけでなく、各々のつながり、より大切に思い合えるメッセージがこめられています。想いがある素敵な感情、今回はそれがありまして見どころです」と語り、杉江大志も「想い合えた時の想い、想い合えた時の力が…(身振り手振り)。あとはアクションです」、泰江和明は「見どころは…全部、人と人との関わり、生きる指針」とコメント。また稽古中のことについては谷佳樹は「すごくクリエイティブ、稽古が始まってすぐにこの世界観に入り、演出の吉谷さんとあーだこーだと話し合いました。いい時間を過ごせました、いい作品を作るためには時間を惜しまなかったです」と語り、杉江大志は「アグレッシブな人が多い、『もっとこうしたい』とたくさんの意見が出ました」と言い、泰江和明は「いい作品にしたいと…楽しい日々を過ごさせていただきました」とコメントし、谷桂樹も「史実はあまり意識しなくても」と語る。文学史に詳しくなくても十分に楽しめる作品。また、杉江大志は「文豪たちの想いが根幹かなと」とコメント。
最後にPR。
泰江和明「最高の作品を!」
杉江大志「久しぶりの文劇です。想いを伝えて!みんなが精一杯向き合ってきた作品、ぜひ!」
谷佳樹「観ていただいたお客様には『また、一生懸命頑張ろう』と思えるように、テーマを余すことなく存分に、『最高だった』と思っていただけるように!」
あらすじ
文学作品を守るためにこの世に再び転生した文豪たち。
その中心には白樺派がいた。
しかし、長く続く侵蝕者との戦いが、歴戦の栄光に小さな翳りを落とす。
その根幹が見出せない彼らを嘲笑うかのように侵蝕は広がり、小さな綻びは大きな窮地に。
そんな時、志賀直哉の脳裏に浮かんだのは、かつて巨大な敵に文学で立ち向かった小林多喜二だった。
今後の戦いの激しさを憂い小林の転生を目論む志賀だったが、その間にも有碍書は増え続け……。
危機が迫る中も挫けず、現状を打開する策を練る志賀。それを武者小路実篤ただ一人がそっと遠くから見守っていた。
※この物語は、フィクションです。実在する人物や団体、政治、宗教、出来事等とは一切関係ありません。
概要
舞台「文豪とアルケミスト 旗手達ノ協奏(デュエット)」
日程・会場
東京
2024年6月6日(木)~2024年6月16日(日)シアターH
京都
2024年6月21日(金)~2024年6月23日(日)京都劇場
スタッフ
原作:「文豪とアルケミスト」(DMM GAMES)
監修:DMM GAMES
世界観監修:イシイジロウ
脚本:なるせゆうせい
演出:吉谷晃太朗
出演
志賀直哉:谷佳樹
武者小路実篤:杉江大志
有島武郎:杉咲真広
里見弴:澤邊寧央
石川啄木:櫻井圭登
高村光太郎:松井勇歩
広津和郎:新正俊
小林多喜二:泰江和明
公式HP:http://bunal-butai.com/
公式Twitter:@bunal_butai (ハッシュタグ #文劇7)
©2016 EXNOA LLC / 舞台「文豪とアルケミスト」7製作委員会
※この物語は、フィクションです。
実在する人物や団体、政治、宗教、出来事等とは一切関係ありません。