作 演出 横内謙介,主演 山中崇史 劇団扉座『ハロウィンの夜に咲いた桜の樹の下で』上演中 季節外れの桜とハロウィンが起こした1日。

幅広い世代の観客に愛され、笑って泣いて感動できる舞台を作り続けている劇団扉座。横内謙介による新作が上演中だ。主演は山中崇史。
場所はとあるマンションの部屋。ハロウィンの翌日の朝、部屋にパンダの格好をした男が寝ている。彼は柴崎孝史(山中崇史)、この家の住人。この家の住人ではなさそうな男・ケヤキ(岡森諦)、ハロウィンの夜に街角の公園で知り合ったと言う、ちょっと謎めいているが、気の優しそうな感じ。「朝ですね。おはようございます。ケヤキです」と挨拶(エプロン姿が可愛い!)。

ハロウィンといえば、ここ数年、日本では繁華街でどんちゃん騒ぎ、もちろん飲酒を伴うので、多少の記憶はだいだい曖昧だったりする。孝史もご多分に漏れず、泥酔してしまい、なぜかタトゥーが…記憶がない。よってケヤキがなぜここにいるのかも一瞬「?」マークな孝史。貴島かな子(砂田桃子)がやってくる、孝史の元部下。そんなこんなでこの部屋に様々な人がやってくる、そんなハロウィンの翌日。公園は異常気象で桜が狂い咲き。
物語は舞台上の時計通りに進行する。つまり、時間が行きつ戻りつはせず、そのまま自然に流れていく。そこで様々なことが明らかになっていく。孝史は若くはないのに記憶がなくなるまで飲んでしまった、定年も近い年頃、人生の節目的な年齢。別居中の娘・こずえ(久我音寧)、髪を染め、ちょっと反抗的な態度。

海賊の格好をした人物・佐々木渓太郎(鈴木利典)など、見た目が賑やかな人たちがわちゃわちゃ(笑)。見覚えのない品物、次々と訪ねてくる見知らぬ人たち。孝史には記憶がないので訪れた人たちの言葉を信じるより他にない。

よくわからない謎のコスプレーヤー(藤田直美)、ド派手なベンチャー企業のCEO・港(長谷川純)、とにかく個性的で濃い人たちが!孝史は細かいことは全く覚えていないが、一つ覚えていることがあった。港に孝史は言った「覚えていないが、熱かったことは覚えている」と。

その時の気持ち、そこは鮮明に。冴えない中年・孝史だが、心は熱い、多分、その心が皆を引き寄せたのだろう。また、かな子との関係もラスト近くで見えてくる。舞台の天井近くに満開の桜の枝、これが照明で時折、明るくなり、舞台を照らす。そもそも桜というのは、山の神様が座る場所という意味がある。

季節外れに咲いた桜が起こした奇跡の1日。「愛こそが発明」というセリフが出てくる。登場人物全員に愛がある、その形は様々ではあるが、愛が起こした1日。ラストの主人公の表情がそれを物語る。桜、そしてハロウィン。ハロウィンの由来はヨーロッパの古代ケルト人が行っていた祭礼「サウィン(Samhain)」が起源だそう。サウィンは「夏の終わり」を意味し、秋の収穫を祝うとともに、悪霊を追い払う宗教的な行事として、古代ケルト人の暮らしに根づいていた。また、現世と来世を分ける境界が弱まる時とも言われている。桜とハロウィン、孝史の身の上に起こった出来事、びっくりするようなパッピーエンドではないが、ほのかに彼の心を照らした1日。芸達者なメンバーが紡ぐ心がホッとする2時間弱。公演は16日まで。

横内謙介より
この舞台は場面転換や暗転が一回もありません。一つの場所で、始まりから終わりまでがオンタイム。
舞台上に小道具の時計があって、その時計と同じ時間経過でストーリーが進行します。
シチュエーションコメディなどで古典的に存在する形式ですが、私としては初の試みです。
そのドタバタ喜劇っぽい装いの中に、自分を含めて人生の転機を迎えている大人たちへのメッセージを込めました。

キャスト
山中崇史 岡森諦 鈴木利典 新原武 野田翔太
砂田桃子、藤田直美、久我音寧(轟組2024)
客演
長谷川純

東京公演 概要
座・高円寺 夏の劇場08
日本劇作家協会プログラム
日程・会場:2024年6月6日(木)~16日(日) 座・高円寺1
≪キャスト≫
山中崇史 岡森諦 鈴木利典 新原武 野田翔太
砂田桃子、藤田直美、久我音寧(轟組2024)
客演
長谷川純
スタッフ
作・演出:横内謙介
舞台美術:金井勇一郎(金井大道具)
舞台監督:大山慎一(ブレイヴステップ)
照明:塚本悟(LIGHT TRAIL)
音響:青木タクヘイ(ステージオフィス)
衣裳:木鋪ミヤコ・大屋博美(ドルドルドラニ)
メイク:比嘉奈津子
協力:ミーアンドハーコーポレーション JJプロモーション エルビス・エンタテインメント
すみだパークスタジオ ベルモック テンプリント 明和運輸
宣伝美術:吉野修平(ヨシノデザインオフィス)
宣伝イラスト:溝口イタル
制作:赤星明光 田中信也
WEB宣伝:串間保彦
票券:そのださえ 菊地恵未
製作: (有)扉座
問合:TEL 03-3221-0530 FAX 03-3221-0532

公式サイト:https://tobiraza.co.jp