音楽座ミュージカル「SUNDAY」上演中! アガサ・クリスティーの『春にして君を離れ』が原作

音楽座ミュージカル「SUNDAY(サンデイ)」が上演中だ。
本作は2018年にアガサ・クリスティーの『春にして君を離れ』を世界ではじめてミュージカル化したもの。 初演での好評を受けて、2020年に全国で再演しました。コロナ禍により、中止・延期を余儀なくされたものの、実際の上演では主人公のジョーン・スカダモアを演じた高野菜々が“令和2年度(第75回)文化庁芸術祭賞(演劇部門 新人賞)”を受賞するなど高い評価を得た。ジョーン役は高野菜々、ゲッコー役は藤重政孝(客演)、そのほか、レスリー役に森 彩香、ブランチ役に井田安寿など、音楽座お馴染みのメンバーが顔をそろえた。 物語は変わらないが、演出面では、作品のテーマや登場するキャラクターの輪郭がより明快になった印象。ゲッコー(藤重政孝)は物語に直接絡まないが、主人公・ジョーン(高野菜々)をクールな眼差しで見つめる。どこから自信がわくのか、ジョーンは「私がいないとだめなのよ」というが、夫も子供たちもジョーンに対する見方は客観的で、家族だからこそ本当のことを言う、特に子供たちはズバズバと言うもジョーンは意に介さない、というよりも彼らの言うことを本当の意味で聞いていない。弁護士の妻としてきちんとしてきた、子供たちも成人した、夫は社会的に成功している、だから自分のしてきたことは正しいと信じて疑わない。そしてバグダッドにいる次女のところに見舞いに行く。テンポよく舞台は展開、場面転換は白い布を使ってエモーショナルに表現。そして帰り道にバッタリ友人・ブランチ(井田安寿)に出会う。ブランチは自分の気持ちと意志に従い、自由に生きる女性、「ちっとも変わってないのね」とジョーンに言う。そして、ロンドンに帰る途中、なんと立ち往生。砂漠、レストハウス、もちろん、テレビもない時代、持ってきた本を読んでしまったらすることもなく、話し相手もなく、食べ物も缶詰。そんな日々、ジョーンはこれまで生きてきた人生を回想する。だが、その回想によって、今まで目を背けてきた(気が付かなかった)”真実”に気づいていく。
ジョーンは社会的にも世間的にも立派な女性、多分、現代でもそういう評価が得られるであろう人物かもしれない。だが、その真実は…2幕ではそこが明かになっていく。夫・ロドニー(安中淳也)との関係、表面上は”いい夫婦”、ジョーンは「世間からはみ出ることは悪いこと」という考えに執着、だからブランチのような生き方はできないし、受け入れ難い。夫は本当はやりたいことがあった。しかし、妻の反対に遭い、できなかった。ジョーンはその夫の秘密も知り、自分の通ってきた道を理解したかに見える。2幕の最初に学生時代の回想シーンが出てくる。先生はジョーンに「自己満足」という言葉を投げかけている。帰路に着く途中で老婦人が「戦争が始まる」と言い、ジョーンは「戦争は終わった」と言う。この小説が書かれた時代を写しているが、同時に現代をも写している。家に帰り、ジョーンは、結局、相変わらずの態度で夫に接する、夫と真の意味で向き合わずに、ある意味、リアルで正しい判断かもしれない。ジョーンはラスト、歌う、「私が終わり、私が始まる」多くの意味を内包する言葉、これは誰かの話かもしれないし、観客それぞれの話かもしれない。多彩な楽曲、時にはユーモラスなシーンもあり、観客の目を舞台に釘付けにする。ジョーン演じる高野菜々、初演と比較するとグッと役作りに深みが増して、人物像をリアルに演じる。今回客演の藤重政孝、シニカルな空気感がゲッコーというキャラクターによく合っており、照明の当たらないところにたたずんでいてもその存在感が物語に奥行きを与える。諦めとある種の”悟り”を開いた感のある夫・ロドニー、安中淳也、どこか身近にいそうな人物像を作り上げる。音楽座らしい底力で作品世界が劇場いっぱいに。

ストーリー
弁護士の妻として子どもたちを立派に育て上げたジョーン・スカダモアは、バグダッドに次女バーバラを見舞った帰り、ひどい雨に降られて砂漠に足止めをくってしまう。砂漠の強い日差し、薄暗いレストハウス、本も読み尽くして話す人もなく、やることもなければ食べるものも缶詰ばかり。退屈な日々の中でジョーンは、自らの「素晴らしい」人生を思い出す。美しく塗りこめられた思い出は、時間とともに少しずつ真実の姿をさらけだし、やがてー。

概要
原作:アガサ・クリスティー『春にして君を離れ』
Agatha Christie writing as Mary Westmacott
ABSENT IN THE SPRING
adapted for the stage by
Taro Aikawa & Wormhole Project
日程・会場:
東京;2024年6月13日(木)~ 6月17日(月) 草月ホール
愛知:7月10日 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール、
広島:7月28日 JMSアステールプラザ 大ホール
配役
ジョーン  高野菜々
レスリーほか  森 彩香
ブランチほか  井田安寿
ギルビー・乗客の女ほか  清田和美
エイヴラルほか  北村しょう子
バーバラほか  岡崎かのん
ゲッコー  藤重政孝(客演)
ロドニーほか  安中淳也
チャールズほか  新木啓介
トニーほか  泉 陸
ウィリアムほか  大須賀勇登
給仕(インド人)ほか  小林啓也
使用人(アラブ人)ほか  五十嵐 進
シシャ 酒井紫音
シシャ 辻 凌子
シシャ 毎原 遥
シシャ 山西菜音 ※キャストは変更場合あり
脚本:相川タロー・ワームホールプロジェクト
演出・振付:ワームホールプロジェクト
音楽:高田 浩・金子浩介
美術:伊藤雅子
衣裳:原まさみ
ヘアメイク:川村和枝
照明:渡邉雄太
音響:小幡 亨
音楽監督:高田 浩
歌唱指導:桑原英明

公式サイト:https://ongakuza-musical.com/works/sunday