西瓜糖第11回公演『かえる』が2024年8月28日〜9月3日、ザ・ポケット(中野)にて上演。
昭和二十年夏 太平洋戦争末期の葉山、空襲を逃れて 慣れない土地で暮らす中で交差する想い 生まれる欲望、時代の波にもまれながらも懸命に生きていく人々の物語。初日に向けて稽古真っ只中。
西瓜糖(すいかとう)は、劇作家・秋之桜子(あきのさくらこ)の戯曲を上演する演劇プロデュース集団として、2012年から公演を重ね、秋之桜子は俳優・山像かおりの筆名で、2004年に脚本家としてデビュー、2010年に昭和の文士たちをモデルにした『猿』にて第16回劇作家協会新人戯曲賞優秀賞を受賞、数々の劇団などに脚本を提供して活躍の場を広げ、2022年にはパルコ・プロデュースにて書き下ろし脚本『桜文』(寺十吾演出、久保史緒里主演)を上演。
西瓜糖の作品は、日本語の美しさにこだわりながら、人間の営みが社会と如何に絡まってきたかを描いており、その世界観は人間のひたむきさと恐ろしさを時にユーモアを交えながら活写していると高い評価を。第11回公演となる今回は、2016年に西瓜糖第5回公演として上演された『うみ』をモチーフに、太平洋戦争末期の昭和20年の夏に空襲から逃れて葉山に住み始めた家族と、彼らを取り巻く人々の姿をリアルに、そして時に滑稽に描いた新作。
演出は文学座の高橋正徳。西瓜糖には2020年10月の特別公演『MOON』以来2回目となりますが、これまで秋之桜子とのタッグで、unks『蟻』(2011年)、わらび座ミュージカル『シンドバッドの冒険』(2016年)、流山児★事務所『赤玉★GANGAN~芥川なんぞ、怖くない~』(2019年)などの演出を手掛けている。
出演者には文学座の石田圭祐、西瓜糖には第9回公演『刺繍』(2022年)に続き2回目の出演となる花組芝居の八代進一、映画・舞台・CMと幅広く活動する田島亮、西瓜糖には第1回公演『いんげん』(2012年)以来2回目の出演となる駒塚由衣、西瓜糖には第8回公演『ギッチョンチョン』(2021年)に続き2回目の出演となる日下由美ら、実力派俳優。
コメント
高橋正徳(演出)
西瓜糖の演出は『MOON』という作品で1度経験していますが、コロナ禍での特別公演ということでこれまでの西瓜糖とはテイストの違う作品でした。西瓜糖で10年間以上ずっと続けてきた秋之桜子さんの世界観の作品を演出するのは今回が初めてです。秋之さんは今より少し前の時代、特に太平洋戦争前後を舞台にした物語を書かれることが多い印象です。その時代背景の中で、濃密な人間ドラマがあり、人間関係がうごめき変化していく様を描くのがとても上手く、魅力的な作家です。今回も演出している中で、ダイナミックな物語、語られるセリフの美しさに醍醐味を感じています。また俳優陣も、キュートかつどんどんジャンプしていくライブ感のある山像さん、一見ストイックだけど内に燃えたぎるエネルギーを秘めている奥山さん、そして天性の人を虜にする求心力を持つ田島さんをはじめ、とても魅力的なメンバーたちが集まりました。西瓜糖が10年続けてきた歴史を感じつつ、西瓜糖の新たな一面に光を当てられたと思っています。ぜひご来場ください。
田島亮(出演)
僕が演じる輝雄は作家です。そこにはどうしたって作家の秋之桜子さんの本人性というか想いが乗っかってくると思うので、秋之さんが魂を預けてくださったんだ、という嬉しさと怖さが入り混じっています。素敵な作品に参加できて光栄ですし、西瓜糖に呼んでいただいたからには、ただ素敵な先輩方に胸を借りるというだけではなく、一緒にやっていて楽しいな、と思ってもらえるように、挑戦的に行くところは行く、という姿勢を見せたいと思います。親が戦争を体験した世代の方が書いている作品を、今こそ若い世代に見て欲しいですし、エンターテインメントとしても楽しめる作品なので、ぜひ劇場に足をお運びください。
山像かおり/秋之桜子(作・出演)
西瓜糖第十回公演の『いちご』がメモリアル的なものとなったので、11回目は西瓜糖の原点に戻って、残したい言葉、残したい出来事を選んでみようと今までの作品の中から、2016年に西瓜糖で上演した『うみ』をモチーフにしようと決めました。改めて読み直して、この8年の間に世界は大きく変わったことに気付かされました。コロナ過も経験し、SNSやTVを通して伝えられる戦争が身近に感じられる今、あれから年を重ねた自分が見えるようになってきた世界も含めて、『うみ』と『かえる』は似て非なるものになった気がします。人と人との関係をさらに濃密に描きたくなった。それはやはり、今生きている世界が愛おしいものだとあの頃より強く感じるからかもしれません。高橋さんの丁寧な演出で、昭和20年の夏のあの日を感じていただけると思います。是非、目撃して頂きたいです。
奥山美代子(出演/西瓜糖代表)
秋之が書く本は「ドロドロしている」とよく言われますが、それはリアルな人間の本質を描いているからではないでしょうか。誰もが抱えている「嫉妬」や「私を認めてほしい」「大事に思ってほしい」などの欲求を見事なまでにストレートに描く作家だと思ってます。そして、それが人としての可愛らしさであったり、人間味に繋がっていますし、彼女の描く日本語の美しさと共に西瓜糖の特徴となっていると思っています。
高橋さんは、繊細な演出でテネシー・ウィリアムズをはじめ様々な作品を実に素敵に仕上げています。彼の作品は水面に月が反射してキラキラ輝いているような美しさがあって、この作品をどんなふうに素敵にしてくださるのか非常に楽しみです。きっと役者の本質も出る舞台になると思いますので、そんなところもお客様に見ていただけたら嬉しいです。素晴らしい客演さんたちと共に熱い『かえる』をお届けしたいです!
あらすじ
昭和二十年夏、葉山の秋谷あたり
空襲から逃れた初老の男が自分の妹と作家である次男の嫁とで、小さな離れに住み始めた。慣れない土地で暮らす三人のもとに次男が戻ってくる――愛人とその娘を連れて。
敗戦濃厚となった太平洋戦争末期。原稿を求め乗り込んでくる女編集長。追いかけてくる男。隣組長として幅を利かせる大家。大阪から流れてきた看護婦。そして、ふらりと現れる郵便屋。それぞれの想いが交差し揺れ動き、欲望を生み出し、その姿は時には滑稽で・・・。
時代の波に揉まれながらも懸命に生きていく人々の物語。
概要
日程・会場:2024年8月28日(水)〜9月3日(火) ザ・ポケット(中野)
作・出演:山像かおり/秋之桜子
演出:高橋正徳
キャスト
石田圭祐、八代進一、田島亮、齊藤広大/
駒塚由衣、日下由美、黒川なつみ、藍川メリル、朝日小晴/
奥山美代子、山像かおり