音楽劇『あらしのよるに』が開幕。
オオカミとヤギ、仲良くなるはずのないふたりが、「食べる側」 と「食べられる側」の関係をこえて友情を育む物語。2019年の初演、2021年の再演と、好評を博してきた公演が、きむらゆういち (作)・あべ弘士(絵)による原作絵本の出版から30周年を迎えた 今年、新たなキャストを迎えて、再登場。友だち思いの心優しいオオカミのガブ役には、「仮面ライダーウィザード」主演で注目、 近年は『ジョン王』など舞台でも活躍する白石隼也、そのガブと秘密の友情を育む好奇心たっぷりなヤギのメイ役には、NHK Eテレ『にほんごであそぼ』 に ”のはーな” 役でレギュラー出演の注目株、南野巴那。オオカミのリーダー・ギロ役は阿南健治、おばさんヤギ役は平田敦子が出演。
立山ひろみの脚本・演出により、原作絵本の世界を音楽劇として広げた本作。音楽を鈴木光介、振付を山田うんが担う。
開演5分前に劇場での諸注意のアナウンス、シンプルなアナウンスが一般的だが、ここでは、なんと歌!わかりやすいメロディ、ファミリーフェスティヴァルらしい!早めに席についておきたい。それからミュージシャンの方々が客席から登場、衣装が作品に相応しいカラー、優しい色合い。それから始まる。
登場するキャラクターはヤギとオオカミ。「おーい、メイ!」「みんなーーーー」やぎのメイは元気いっぱい。大勢の仲間たちと共に暮らしている。彼らの”天敵”はオオカミ。オオカミは肉食動物、ヤギは食べ物。メイは好奇心の塊、すぐにどこかへ行ってしまうので、仲間のヤギたちは少々心配。そしてあるあらしのよる、山小屋に避難したメイ、そこで出会ったのは…話しかけると意気投合、姿は暗くて見えないが気のいい奴、と思うメイ。
姿が見えない相手はガブと言う。実は天敵・オオカミだったが、真っ暗闇だったので互いの正体を知らないまま、夜通し会話、「あらしのよるに」を合い言葉に、翌日再び会う約束をする。そして改めて会ってみたら…オオカミとヤギ、互いに「オオカミだったなんて!」「ヤギだったなんて!」と驚くも、友情の方が優ってしまう。「雷が苦手」で「友達を大切にする」似ている二匹は仲間に内緒で友達になるが…と言うのが大筋の流れ。
ダンサー陣が表現する自然・森羅万象がアーティステイックで思わず見入ってしまう。様々なダンスの手法を取り入れ、時には雷だったり、雨だったりをかっこよく、しなやかに表現する。音楽も多彩で作品世界を彩り、立体的に。メイ、ガブの仲間たちも個性的で物語に深みを与える。
オオカミのリーダー・ギロ、男気があり、何より群れを大切にする、だからガブを許すことができない。そしておばさんヤギは、ガブとメイが仲良くしているところをふと見てしまい、年長者らしい雰囲気でこちらも群れを仲間を大切に思い、他の仲間に二匹のことを言う。オオカミは天敵、そのオオカミと真の友情を結んでいるとはこれぽっちも信じない、それどころか”危険”と思うのは無理からぬこと。
秘密の関係がバレてしまったガブとメイは群から離れて”逃避行”。この二匹の結末は?そこは観てのお楽しみ。
様々なテーマを内包している作品、まさに禁断の友情、それでも彼らは友情を貫き通そうとする。秘密の合言葉「あらしのよるに」、それを”設定”したガブとメイ、背徳感を感じつつもそこを乗り越える。そしてガブとメイそれぞれの群れ、彼らなりの”社会”、二匹の友情はこの社会の秩序を乱すものと捉えられる、社会を維持したいのは無理からぬこと、群れの年長者の行動は必然。そしてガブはお腹が空いてもメイを決して襲わない、空腹よりも友情、メイはガブを信じて疑わない。
原作の言葉を大切にしたエモーショナルな台詞、シンプルだが、想像力を掻き立てるセット、大きな満月、子供のみならず、大人もグッとくる秀作。2幕もので20分の休憩込み、およそ2時間弱。開幕に当たってガブ役の白石隼也は「僕らの『あらしのよるに』を探求することができました。人生は儚いものだからこそ尊いのだと、ガブとメイに教えてもらいました。皆さんも二匹と一緒に大冒険をお楽しみください。」、メイ役の南野巴那は「どの場面も色んなワクワクが散りばめられています。この夏、劇場に来てくださった皆さまの大切な『ともだち』のぬくもりをお届けできますように。一緒に最高の想い出を作りましょう!」とコメント。脚本・演出の立山ひろみは「舞台だからこそ出来る表現がたくさんあります。観客のみなさまがいて初めて仕上がるのも舞台のおもしろさの一つ。音楽劇『あらしのよるに』どうぞおたのしみください!!」とのメッセージを寄せてくれた。公演は25日まで。
作品について
「あらしのよるに」作:きむらゆういち・絵:あべ弘士(講談社)
1994年の第1巻は産経児童出版文化賞、講談社出版文化賞絵本賞に輝き、これまで7巻で350万部を売り上げた、ベストセラー名作絵本。 小学校の国語教科書への採用、海外版への翻訳や小説版をはじめ、映像化や舞台化など、様々な形で世界中の人たちに愛されてきた。2024年は出版30周年のメモリアル・イヤーとなる。
物語
ある嵐の夜、ヤギのメイとオオカミのガブは避難した山小屋で偶然出会い、互いの正体に気づかないまま言葉を交わします。翌日「あらしのよるに」を合言葉に再会した二人は、正体に驚きながらも秘密の友達になります。しかしその関係は群れの仲間に見つかってしまいます。
群れよりも友情を選んだ二人は、仲間から離れ、仲良く暮らせるみどりの森を求め、遠く雪山の向こうを目指して旅立ちました……。
概要
公演名: 日生劇場ファミリーフェスティヴァル 2024 音楽劇『あらしのよるに』
日程・会場: 2024年8月24日(土)・25日(日) 11:00/15:00 開演(開場は開演の30分前) 日生劇場
※3歳未満入場不可。上演時間は約2時間(休憩含む)
出演
ガブ:白石隼也 メイ:南野巴那
ギロ:阿南健治 おばさんヤギ:平田敦子
タプ:木原浩太 バリー:吉﨑裕哉 ミィ:しらたまな
飯嶋あやめ 井口大地 小山雲母 沙月愛奈 須﨑汐理 田中朝子 鶴家一仁 中野亮輔 永松 樹 長谷川 暢 三浦優水香 三田瑶子 宮内裕衣 山﨑まゆ子 山根海音
※やむを得ない事情により出演者等が変更になる場合があります。予めご了承ください
演奏
鈴木光介(トランペット) 砂川佳代子(クラリネット) 関根真理(パーカッション) 高橋 牧(アコーディオン) 日高和子(サックス)
スタッフ:
原作:きむらゆういち
脚本・演出:立山ひろみ
音楽:鈴木光介(時々自動)
振付:山田うん
美術:池田ともゆき 照明:齋藤茂男 衣裳:太田雅公 ヘアメイク:橘 房図 音響:島 猛 演出助手:山田真実 振付助手:木原浩太 舞台監督:八木清市・水谷翔子 制作:荒川藍子
主催・企画・制作:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]
協賛:日本生命保険相互会社
特設ページ:https://famifes.nissaytheatre.or.jp/2024arashi/
日生劇場Web:https://famifes.nissaytheatre.or.jp/ticket/
撮影:曳野若菜
提供:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]