梅田芸術劇場×チャリングクロス劇場 兼島拓也脚本×河井朗演出 『刺青/TATTOOER』日本初演開幕

脚本家・兼島拓也と演出家・河井朗が初タッグを組む新作『刺青/TATTOOER』。
2024年10月のロンドン上演に先駆けて、日本の若手クリエイターと英国クリエイター、日本在住の俳優と英国 在住の俳優がコラボレートして東京・アトリエ春風舎で開幕。
両公演とも全く同じキャストが出演し、日本では日本語で、ロンドンでは 英語で上演する。キャストは、英国を拠点に活躍する俳優、LEO ASHIZAWAとAKI NAKAGAWA。そして、日本在住のド・ランクザン望と蒼乃まをと、国際的に活躍する精鋭たちが集結。
更に、墨絵師として糸のような墨の線で描く「墨画」の肌絵を描き続ける東學が加わる。

谷崎潤一郎の小説「刺青」(1910年)が原作、処女作と言われる短編。美女の体に己の魂を彫り込みたいという宿願を持った彫師・清吉が主人公。
舞台中央に蜘蛛の絵、墨で描かれている。そこへ女性が登場し、続けて男が登場、男は彫師。1幕は五感を刺激する描写、男は若い女性の足に美を見出す。その様は官能的であり、人間的。

その美しさに潜むものは危険な香りがする。原作にインスパイアされた表現、そして舞台上に描かれた蜘蛛の絵、人の欲望、それが露わになる。ほぼ無音の静寂の中で繰り広げられる瞬間の連続。挑戦的な、そして刺激に満ちた瞬間と言葉、1幕は約30分。そして休憩20分、この休憩時間の間に墨絵師である東學が舞台上でさらに”加筆”する。最初にドランクザン望がガウン着用で登場し、横たわる。そこへ東學が舞台上に上がり、彼の背中に絵を描く。

妖しく、そして勢いのある、さらに品のある、官能的にも感じるその絵、さらに舞台上で彼の筆が踊る。正直、休憩で席を立つのが惜しくなるので、できれば、芝居が始まる前にトイレにはしっかりと行っておきたい。このパフォーマンス、20分をたっぷり使って!それから2幕が始まる。この2幕、舞台上の景色もがらりと変わる。ドランクザン望はフォーリナー、海外で刺青は自分の個性やアイデンティティを表現する手段。

また、芸術作品と捉えており、ここは日本人と感覚が異なるところ。ドランクザン望演じる男は「私は海を超えて貴方に会いにきた」と告げる。様々な”カルチャーショック”を受け、客席から時折、笑い声が聞こえる。

だが、途中からだんだん雲行きが怪しくなっていき…。密室での出来事はかなり衝撃的。2幕は約35分。
谷崎潤一郎の「刺青」に登場する場面を織り交ぜ、現代的なテイストを入れての作品、刺青を入れて豹変する女性、1幕後半で彫師が己の目を…谷崎潤一郎の別の小説「春琴抄」(1933年)を彷彿とさせる。短い上演時間の中に谷崎文学のエッセンスを凝縮し、現代的センスでみせる。東京では短い上演期間であるが、機会があればぜひ、観劇してみてほしい。20日から23日まで小竹向原のアトリエ春風舎にて。

ゲネプロ前に会見が行われた。登壇したのは、脚本の兼島拓也、演出の河井朗、そしてLEO ASHIZAWA、AKI NAKAGAWA、ドランクザン望、 蒼乃まを、墨絵師の東學。
今回の公演、まず日本初演の後、10月にイギリスのチャリングクロス劇場で開幕、日本では日本語で、イギリスでは英語上演という他に類を見ない公演となっている。兼島拓也は「谷崎潤一郎の『刺青』すごく偉大な、巨大な作品の具現化、しかも日本だけではなくロンドンでも上演する…すごく緊張な、これはどうなるんだみたいな…」とこのプロジェクトに対する感想を述べた。そして「稽古期間でこのメンバーで作るのがすごく楽しみだなっていうことを感じながら、そばでずっと見ていました」と作品の手応えを語った。
演出の河井朗は「日本とイギリスを同じキャストで両カ国を操るイギリスでも日本でも上演するっていう試みが多分ほとんど前例がないと思うんです。国内外問わず、その中でこのプロジェクトをどういうふうにしていくか…さらに谷崎潤一郎をイギリスで上演すること、そして今、日本でこれを上演することってことがすごく大変な作業」と語り、「期待する観劇体験を皆さんに提供できるか、探し続ける毎日でした。おかげさまで良い状態に仕上がっているんじゃないかなと今思っております」とホッとしている様子。

それから出演者の挨拶とコメント、LEO ASHIZAWAは「僕はもう完全に日本では日本語で上演し、それをイギリスでやるって思い込んでた」と語る。同じキャストで日本では日本語で、イギリスでは英語で、という前例がない企画。それについて「素晴らしい試みだと思うので、日本では日本語でイギリスでは英語でっていうそういうところで、逆に日本のお客さんがそういうふうに外に向けて、可能な作品作りを僕らがしてるのをどういうふうに感じていただけるのかなっていうのをすごく楽しみだなと思ってます」とコメント。メインキャラクターの清吉を演じるにあたっては「変わっていかないものなんてない…その成長を演じることで感じている解放感みたいなのを皆さんにも一緒に体験してもらえたらなと」とコメント。AKI NAKAGAWAは「オーディションの依頼を受けて、最初に脚本読んだとき、私は海外で長い間育ってきたので、谷崎潤一郎を知らなかったですし、小説も知らなかったので、オープンマインドで読んだんですがすごく引き込まれました。すごく特別な企画だと思いました。向こうのお客さんがどう反応するのかなっていう興味もありますし、日本のお客様もどう反応されるか…複雑な化学反応が起きるのがすごく楽しみ」と笑顔。ドランクザン望は「天才彫師のことをイギリスで噂を聞き、いろんな情報を手に入れて大ファンになって、そして全てをかけて日本に清吉に会いに行くっていうキャラクターを演じます。僕は日本生まれ日本育ち。谷崎潤一郎を読んだのは実はロンドン住み始めてから」とコメント。「海外の方が日本のこと勉強してそれを僕に教えてくれっていうときに一番記憶に残ってるのは黒澤明映画」と語り、「ロンドンに行ったときに、日本大ファンの方ももちろん来ていただきますが、(谷崎潤一郎を)初めて知るっていう方も来ると思いますのでそれも楽しみにしております」と語った。蒼乃まをは「谷崎潤一郎の作品を映画である舞台であれ、生身の人間がやることに対して、私は谷崎先生の作品が好きだったので最初少し抵抗がありました」と語る。理由は「物語の裏づけが美しさで進んでいる部分がすごくあって、人間がそれをやるときに、見る人全員が綺麗だなと思える女性って、多分いないんだろうと思うんですよね」とコメント。そして「皆さんとクリエーションしていくにあたって、美しさ以外でも担保として物語が成り立っていくんだなということが実感できたのですごく良い作品にはなっていると思います。楽しく最後まで出来たら」と語った。墨絵師の東學は「オファー来たときは大喜びでした。谷崎潤一郎、もうこれはやっとおかなければと思いまして」と開口一番。そしてチームについては「大丈夫!めっちゃいいチームです。これ以上ない、スタッフの方もみんな本当に素晴らしいチーム。そういうチーム力みたいなのも感じていただけたらなと思います」と締め括った。

概要
脚本=兼島拓也
演出=河井朗
出演=LEO ASHIZAWA AKI NAKAGAWA ドランクザン望 蒼乃まを
墨絵師=東學
日本公演
会場=アトリエ春風舎/公演期間=2024年9月20日(金)~9月23日(月)
英国公演
会場=チャリングクロス劇場
プレビュー=2024年10月14日(月)~10月16日(水)/本公演=10月18日(金)~10月26日(土)
画・制作・主催=梅田芸術劇場
チケットに関するお問い合わせ:ルサンチカ ressenchka@gmail.com
公式HP⇒ https://www.ressenchka.com/tattooer